里人の想い~減反~  風景写真より 

立ち込める朝霧が深くなり、草叢に降りる露の玉がこぼれるほど大きくなる頃に、それぞれの里は稔りの季節を迎える。山間のたんぼも平野部に広がるたんぼも稲穂が垂れて、秋の風情を醸し出しているけれど、築かれたたんぼのすべてに黄金色の稲原が揺れている光景を眺める事はもうできないのだろうか。1971年から始まった減反政策によって年毎に水田の耕作面積は減り、今では圃場整備のされた広いたんぼでさえ耕作がされなくなっている。手間のかかるたんぼや、育ちの悪いたんぼはすでに荒れ野に変わり、それでも減反の割り当て面積が増やされて、たんぼの半分程度や、中央部にだけ稲が植えられている額縁転作と呼ばれる水田を多く見かけるようになった。

田仕事を放棄してしまえば、元のたんぼに戻す事は容易ではない。額縁転作は、水田を維持していくための方策として考えられたのだろうか。あるいはそうしなければ割り当てられた面積を確保できないからだろうか。いずれにしてもその方法は、たんぼを守り、次ぎの年の作付けへと希望をつなぐことが出来る。圃場整備。トラクターやコンバインの導入。効率化を進める中で経済的な負担と減反の割り当て面積、そして営農者の年齢が増して行く。

季節の巡りの中で連綿と続けられてきた稲作の光景は、時代の流れと共に少しずつ変化をしながら折々の世情を映し出している。ひび割れた田面の土と豊かに稔る稲原。ごく最近から見られるようになったこれらの光景が、農村を代表する風景として定着して行くのかもしれない。「もう稔りの秋ですね。」と眺めて通る訪問者を背に、米を取り巻く農政に戸惑いながらも稲作を続けている農家の方々。その心の想いはさまざまに・・。


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