デンマーク、スウェーデンにおけるの補助器具の活用
                  デンマーク研究会 関 龍太郎
 
  はじめに
 少子高齢社会に向けてのわが国の対応として、2000年の4月からの「介護保険」の導入がある。介護保険は諸外国ではドイツ、オランダ等において、既に実施されている。また、デンマーク、スウェーデンの「高齢者の保健福祉」は、わが国の今後の対応の参考になるとして多くの研究者によって紹介されている。しかし、補助器具の活用やバリアフリーの住宅、街づくりの施策を具体的に紹介とたものは少ない。
今回は、補助器具の活用を取り上げてみたい。補助器具の活用の基本的な考え方を紹介することは、介護保険がスタートする日本の高齢者福祉を展開する際の参考になると考える。
 
  補助器具センターについて
 デンマーク、スウェーデンの特徴のひとつに各県に、スタッフを多く抱えた「補助器具センター」があることである。私はストックホルム(スウェーデン)、西シェランド県立補助器具センター(デンマーク)の補助器具センターを視察したことがある。西シェランド県立補助器具センターはアナホルム所長(作業療法士)を中心に運営されていた。人口28万の西シェランド県の補助器具センターには11名のスタッフ(作業療法士5名、理学療法士1名、溶接や板金をこなす技術者2名、事務職1名、清掃1名)が働いている。ここでは機器を販売するだけでなく、補助器具の相談、利用にあったように改造もしている。また、機器のみでなく、作業療法士が中心となって住宅の建設、改造のアドバイスもしている。この補助器具センターの敷地は1,300m2、展示室600m2である。展示されている補助器具は4,000種類あり、車椅子100種類、電動車椅子30種類、リフト10種類があった。松江にある介護研修センターの補助器具が1,000種類にならないといわれているので、いかに多くの補助器具が展示されているかがわかる。日本では、専門のスタッフによる相談、改造をしているとこは少ない。デンマーク、スウェーデンにおける補助器具の種類の多さは目をみはるものがある。デンマークの補助器具は、表1にみられるように、@盲人にとってのテープレコーダーのように普通の製品であるが、障害者にとって補助器具として活用出来るもの、A普通の製品だが改良するか、障害者に合わせて改造することによって、補助器具として使えるもの、B障害者のためにつくられた製品、C義足のように身体に合わせつくられたもの である。日本の場合は大部分BCである。デンマーク政府支出金内訳からみても、表2のとおりであり、日本より補助器具の幅がひろい。眼鏡、コンタクトレンズ、盲導犬、テープレコーダー、電話料金等の現金給付も公費負担されている。また、障害者用の自動車も住宅改造も自宅用のエレベーターも補助器具として公費負担をしている。さらに、補助器具を見る目としても、補助器具の必要条件として、表3にみられるように、普通の製品のようにみえること、いろんな条件に対応できること、いろんな組み合わせできること、等の条件が確認されている。また、選択する際に考慮すべき要件にしても、身体、心理、社会の条件が明確に確認されている。
 これらは、高齢者が残存している自己能力を最大限活用して、より自立した生活を営めるために補助器具を有効に活用することを公的に行政の経費で認めた結果である。公費負担として、補助器具を種類の面で幅広く認めていることだけでも素晴らしいが、さらに、補助器具センターで試用、本人にあった改造、有効な活用の訓練から器具の評価までも、さらにはリサイクルシステムまでも実施しているシステムは素晴らしい。
 また、県立の補助器具センターに加えてデンマークの各市町村には、活用する補助器具を保管するための「補助器具倉庫」がある。ここでも試用、貸出、リサイクルをしている。島根県の場合はどうであろう。介護研修センターが東部と西部にできているが、デンマーク、スウェーデンと比較して補助器具の展示も少ないし、十分説明できるスタッフも少ない。器具の改造のシステムも出来ない。今後、解決すべき課題も多い。
 
 デンマークのグラズザックセ市における補助器具の活用
 次に補助器具がどのように活用されているか、デンマークのグラズザックセ市においてみてみよう。グラズザックセ市は人6万人の都市で、全市を四つに区分し、高齢者福祉を展開している。在宅福祉は訪問看護婦31人、ホームヘルパー279人、理学・作業療法士14人、デイケア6カ所(一日あたり200人)で展開され、施設福祉はプライエム(日本の特別養護老人ホームに相当)が9カ所、526ベット、ケア付き住宅120世帯、高齢者住宅920世帯で展開されている。この数字が、日本の各都市と比較して、如何に多くの「福祉のスタッフ」が働いているかはいうまでもない。

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