★エフタースコーレ見学 サムシュ島自由学校
           イエッタ & ステーン・ビュール校長に聞く
                  亀家 朗介氏(米子在住)報告書より引用                 2003,5,22  スペースの関係で写真省略
1. はじめに
今回のデンマーク研修目的の一つは、近代デンマーク精神の父、N...グルントヴィ(1783-1872)の思想とフォルケホイスコーレの教育精神に触れることであった。
 フォルケホイスコーレとは、デンマークに150年ほど前から始まった自由な学校で、「国民の大学」を意味する。現在100校を数え、世界に拡がっており、17歳以上であれば誰でも学ぶことができ、特色は、試験を拒否し、資格も与えず、全寮制で教師と学生が共同で生活をして学び、カリキュラムは自由で、国家の干渉を受けない私立の学校です。
 デンマークの今日の教育制度は、7歳から16歳まで(1年〜9年)の義務教育で、フォルケスコーレ(小中学校)と呼ばれているが、グルントヴィの「教育の自由」を尊重して、日本のような就学業務はない。また、10年生もあり卒業を自分の意志で1年伸ばすこともできる。
 エフタースコーレ(自由中学)は、フォルケホイスコーレのジュニア版で、試験はなく、教育方針、フレキシブルなカリキュラム、教師と生徒の対話が特徴である。しかし、近年は中学終了試験と高校に行かなくても大学などへ進学できる補助コースの試験もある。
2.嘗てサムシュ島には、学校が8〜10校あったが、現在は1校に統合され、空き校舎を何に利用するか課題であった。
むかしのラテン語の教育は、鞭で教えるやり方であったが、グルンドヴィの教育思想から、話し合いながら共生の中に学ぶ考え方に変わってきた。
エフタースコーレは、14(7年生)、       サムシュ島のエフタースコーレ
15(8年生)16(9年生)更に17(10年生)を対象にした学校で、嘗ては落ちこぼれの生徒を救済する制度のものであったが、今日では寧ろ優秀な自立を目指す生徒が、親から離れて自己能力の開発を求めて集まる、全寮制の寄宿学校である。全国に240校有り、本校は127名の生徒がいる。全寮制のため一般の義務教育より費用がかかり、国1/3、自治体1/3、保護者負担1/3となる。親に経済能力がない場合は、補助制度がある。本校は、27年前にできたエフタースコーレで、社会人になる前の義務教育の一つの選択肢と考えて良い。
スウェーデン、ノールウェイにもないデンマ−ク独自の制度で、バルト三国が真似しようとしている。建物だけで6,500u、土地を入れると60,000u。以前学校だった所を更に3倍位増やし元の学校が判らないようにしている。
3.普通の学校の校長をしていたが、レベルの高い教育と躾、自己判断の向上を目標として関わっている。イエッタ & ステーン・ビュール校長とあるが、イエッタは奥さんで寮母、ステーン・ビュールが校長で、デンマークでは通常このように表現するのだそうだ。
10年前校長として来たときには学生数が少なく閉校しようとし  奥さんで寮母のイエッタさん 校長のステーン・ビュール氏 
ていた。離島であるし余程魅力がないと生徒は来ない。生徒が集まらなければ補助もない。幸いこの10年間に1,200人の生徒が卒業して行った。学校によっては6年間の待機という所もある。開校した当初は、生徒数が40人ほどで、行くところがなくて来た生徒が、今では魅力あるプログラムで生徒が一杯である。
一所懸命英語の話せない私たちに、心を通わせる努力をしてくれた。
ここのモットーは「陸、海、空を大いに活用しよう!」である。
生徒は何がしたいか。魅力ある学校を目指して大きな敷地に、サッカーグランド、ゴルフ場、農場、乗馬、アーチェリー、スケートボード場。海では10m級ヨット、スキューバーダイビング、ウインドサーフィン、サーフボード。空ではパラグライダー、軽飛行機の操縦。屋内では給排                  
ボーガンは、全国のトップクラスであり、エリート選手には補助金が出る。軽飛行機パイロットのシミュレーション室が用意されており、パイロットの資格を取るためには10kr掛かるが、冬の間に理論を教えることが出来る。離着陸2時間の単位が取れる。スキューバーダイビングの資格は、26人で初めて今残っているのは11人である。
現在、生徒は127名でデンマークの国内各地から集まり、遠くはグリーンランド、アイスランドから来ている。サムシュ島出身の生徒はいない。
義務教育の終わりの時期に、若者たちが自主的に自分の進路を探し、能力を開花するための場として集まってくると校長は説明した
義務教育であるから学ばなければならないが、一般の学校より語学では、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、デンマーク語の5カ国語を学ぶことが出来る。訪問したときは、丁度卒業試験の時期。試験は全国一斉の資格試験で同じ日時に受験する。月曜日は数学、火曜日は国語、水曜日は何々と同じ問題を解答する。筆記試験は39科目(選択科目)があり、答案を他の学校の決められた教官に送り採点を受け、その後、担任が採点して付き合わせる。来週から3週間は、卒業資格の口頭試問である。試験官は指導教官と他の学校から任命された教師が来るし、この学校からも任命されて出かける。現在3年生は試験待機の状態である。
校長は、生徒を退校させることができる。今年3人を退校させた。薬物使用(ハシッシュ)が理由。
親の負担額は、18,00021,000kr/年で旅費以外は全て賄われる。残りは国と自治体が負担する。義務教育は年間40週であるが、本校はプラス2週間の教育をしている。プラス分の補助制度がある。プラス分は夏期にマリンスポーツを取り入れている。選択科目は、30種用意している。スポーツと英語の先生を公募したら22人応募があり、昨日面接して来た。(フェリーで一緒になった)普通の生徒は1年間のみだが、数人は2年間いる生徒もいる。学校としては10年生が欲しいが、現政権は10年生をなくす方向に働いている。(早い労働参加を望んでいる)8年生は20人で少ないが、ルールは同じ。
本校は、島内最大の労働市場で32人の職員を抱え、半分が先生、建物の維持、庭師、厨房等。管理職は校長、教頭、変わり種のお母さん(生徒の福祉面、病気の予防、ホームシックのコーディネータ)もいる。
4.10年生とグループをつくり一緒に食事をする。
生徒からの質問 デンマ−クに来た目的は? 環境問題、エフタ−スコーレ、高齢者福祉の研修。
日本の人口? 小中学生は何カ国語を習う? 外国映画のテレビで、言葉は吹替えか字幕か。参加者の職業は?
こちらの質問  出身地は? 国内全域、グリーンランド、アイルランド、この島内者はいない。
   生徒の将来目標は? パイロット、エンジニア、ポリス、振付師、心理療法士、政治家、建築、設計士、調教師、海洋生物家、調理師、手話指導者、獣医師、自動車整備士、コンピュータエンジンア、農業、未定、観光ガイド、カメラマン、コックの19人。17歳でこれほどはっきり答えが返ってきたのには驚いた。日本では考えられない。
   生徒の喫煙について
全校で35人位が吸っている。親が許可すれば吸っても良い。15歳以上は煙草の購入は許可されている。吸うか吸わないかは本人の自由。最近の調査で、14歳〜17歳の生徒でハシッシュの経験者は、喫煙者65%、非喫煙者9%であった。校内で喫煙場所は決まった一箇所だけ。
    本年度は8月から始まるが、新入生はノースモーキングを考えている。入学前に吸っていて、親がサインすれば認めるが、入学後の喫煙開始は認めない。今の生徒は、入学時20人のスモーカーが卒業時60人になっていた。喫煙のない学校を目指していく。
   ハッシは簡単に手に入るか。 コペンハーゲンに行けば手に入る。
   性教育について 日本では10代の妊娠が増加している。
性教育をしてみたが時間の無駄であった。教える前にみんな知っている。知っていることを言っても仕方がない。本校では一緒にベットに入らないことを約束している。隠れて寝ているかも知れないがコントロールはしない。
     先日、女生徒が学校ママさんに「ボーイフレンドができたが妊娠が心配だ」と相談に来た。そこで、ピルを正しく上手に使うため家庭医の所へ同伴し、使用法を教えて貰った。もう身体は大人だから、自分で責任を持つのが当たり前。
学内で起こっていることの90%は判っているが、10%は判らない。時効になってから「実は・・」ということがある。
    デンマークでは178歳ではお互いの家に訪問し、同じ部屋に寝ていて当たり前。コーディネーターの伊東先生は、娘は17歳の時から彼氏と自分の部屋で一緒に寝ている。また、彼の家に泊まりに行く。隠れてこそこそするより、責任を持ち互いに思いやり付き合う方がいい。
  昼食後、生徒に学内を案内して貰う。学内案内をすると今日の掃除当番が免除になるのだそうだ。
  キッチンは順番に交代制で関わる。食事の準備は男女同等にやるのが当たり前。
  ヨットに乗船すると順番にキャップテンをする。キャップテンは決定権を持ち責任を学ぶ。一度5万kr位の損害の事故を起こし、その生徒は泣いた。もう一度キャップテンをさせ自信を取り戻させた。
5.感 想 
1)どの生徒も明るく目が輝いている。日本で中学校の参観日に出会った同じ年齢の子供とは思えない。19人の生徒の将来設計を尋ねたが、一人を除いてあとは全員明快な目標が語られた。夢の話ではなく、地に足のついた答えであった。
2)事々に興味津々。英語の通じない私に、どう言ったら判るか色々表現を変え、努力してくれる。
仕事は、隠岐島はどんな島、何しに・・・。(名刺に、訪問先へ提出した参加者名簿の肩書きのWELFARE COMMISSIONER  Director of Public Health and Welfare Oki Island Division Shimane・・・が話題の切っ掛けになった。何が幸いするか判らない。
3) ピエール校長の教育理念が明確で、家庭的な雰囲気の中で、自由と責任、自分の意見を持ちそれを相手に判るように精一杯の努力を惜しまない。一人ひとりの人間を個性的に育てているのが見えた。違うことが良いことだ。
4) 日本の子供に比べてハングリーに育っていると思える。しかし、一人ひとりが髪から服装まで個性的、日本の娘のように、みんな短いスカートなどない。

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