<登場人物紹介>
風海 清夜(かざみ せいや):本作の主人公。現在大学2年生。
岾芽 彩(やまめ あや):本作のヒロイン
大和:風海の友人
猛:風海の友人

 

 

夏休みの奇跡 

 

 

 夏休み、俺といつもの二人とで部屋に居た。

  風海「なぁ、暇だな。」
  大和「あぁ、暇だな。」
  猛「そーいや、そろそろ花火大会だな。」

 花火大会は、毎年俺の家の近くの神社でやっている。

  風海「ん、行くのか?」
  猛「あぁ、一応行く。」
  大和「そうか、彼女でも作るんか?」
  猛「無論。今年こそは!」
  風海「はいはい。」

 俺は猛を軽くあしらった。が、

  大和「んじゃ、いっちょ勝負してみっか?」
  風海「ん?何を?」
  大和「夏祭りでナンパ勝負。」
  猛「俺はいいぜ?」

 無論、見かけの良い大和と猛は有利。俺はそんなルックスも…。

  風海「おい、俺いじめ?」
  猛「ん、大丈夫だろ。お前は要領は良いからな。」
  大和「言えてる。じゃあ、当日、俺がルール考えとくからよろしくな。」

 そう言い、二人は帰宅した。

  風海「ったく・・・。」

 ベッドで横になり、天井を凝視する。

 

〜そんなこんなで当日〜

 全員、浴衣姿で集まった。

  大和「じゃ、ルールを説明する。」
  猛「うむ。」
  大和「今から花火が上がるまで丁度1時間ある。で、花火が打ち上がった時に、彼女を作れなかったらここに集合。」
  風海「へーい。」

 猛は勢いよく、大和もゆっくりとその場を離れていった。

  風海「ったく、人多いな。まぁ、一服するか。」

 木にもたれかかって一服していると、誰かが俺の所へやってきた。 

  風海「ん?」

 相手は俺の目線に合わせるようにしゃがんだ。

  女の子「こんばんは。」
  風海「ばんわ。なんか用か?」
  女の子「相変わらず、ぶっきらぼうだね。」
  風海「…ん、逆光で顔が見えんが、声からすると…岾芽?」
  岾芽「あったり。風海君、久しぶりだね。」

 彼女は俺に向かって微笑んだ。最後に会った時は学生だったが、今の浴衣姿も可愛い。

  風海「久しぶり。2年ぶりだっけ?」
  岾芽「だね。浴衣姿似合ってるよ。一人で何してるの?」
  風海「サンキュな。今、知り合い二人と勝負してんだけど、俺はタルいからやってない。」
  岾芽「何の勝負?」
  風海「ナンパ対決だとよ。俺は強制参加させられたけど、どーでもいいから一服して屋台回るかな、って感じだった。」
  岾芽「ふーん、そうなんだ。じゃあ、私と一緒に回ろうよ。」
  風海「は?知り合いと来たんじゃないん?」
  岾芽「来たけど、友達は彼氏連れだったから離れたんだ。」

 あはは、と笑う岾芽。俺はタバコの火を消した。

  風海「じゃ、一緒に行きますか。」
  岾芽「うん。」

 立ち上がり、俺たちは並んで屋台を回る。途中、射的を見つけたのでやってみる。

  風海「あちゃ、外しちまった。」
  岾芽「じゃあ、私もやってみよっと。」

 そして、俺が狙っていた物をあっさりと撃ち落した。

  岾芽「やったぁ!」

 景品をもらった岾芽。

  岾芽「じゃ、風海君にあげる。」
  風海「え?」
  岾芽「だって、狙ってたじゃん。私、別にいらないから。」
  風海「サンキュな。」

 俺はそれをありがたく受け取る。

  風海「そろそろ花火始まるな。俺が知っている穴場あるけど、行ってみる?」
  岾芽「いいよ。」

 俺達はいつしか腕を組んで歩いていた。そして、俺が知っている穴場に岾芽を連れて行った。

  岾芽「うわぁ・・・綺麗だね〜。」

 町を見下ろせる高台に来た。知る人ぞ知る穴場だ。俺はベンチに座り一服した。岾芽は町を見渡している。その後、岾芽は俺の横に座った。

  岾芽「あの・・・ちょっといい?」
  風海「ん?」

 ちょっと下を向き、岾芽は俺に話しかけてきた。

  岾芽「うんとね・・・言い辛いんだけど・・・。」
  風海「うむ。」
  岾芽「ずっと・・・貴方が好きでした・・・。」
  風海「・・・・。」

 突然の告白に驚く俺。中々、状況が把握できなかった。

  岾芽「・・・返事・・・どうかな?」
  風海「俺は・・・」

 答えは決まっていた。

  風海「俺も、岾芽が好きだ。岾芽が好きだから、一緒に屋台回ったし、この場所を教えた。高校が終わるときに、告白しようと思っていたが、結局出来なかった。」

 俺達は静かに抱き合った。その後、花火が始まり、手を握り合ってそれを見ていた。 

  岾芽「綺麗だね・・・。」
  風海「あぁ。」

 花火が終わりに近づいた時、急に岾芽が言った。

  岾芽「そろそろ・・・お別れか。」
  風海「・・・え?どういうことだ?」

 俺はその意味がわからなかった。

  岾芽「実は私・・・昨年、事故に遭って死んだんだ。」
  風海「・・・え?」
  岾芽「でも、風海君が好きで好きでたまらなくて・・・。」

 岾芽は立ち上がり話を続けた。

  岾芽「なぜかは知らないけど、今日1日だけ、人に戻れたみたい。花火が終わるときに存在を消滅する、って言う条件付きで・・・・ね。」
  風海「・・・。」
  岾芽「風海君と話したり、一緒に屋台回ったり、私の事を好きでいてくれたり・・・。嬉しかったよ。」
  風海「じゃあ、俺の気持ちはどうなるんだ!」

 叫ばずにいられなくなった。

  風海「岾芽、俺はお前と暮らしたい。もっと話したい。でも、花火が終わる時に消えるなんて・・・。」
  岾芽「風海君・・・。」
  風海「せっかく、お互いの気持ちを通じられたのに、居なくなるなんてあんまりだろ!」

 俺の眼から涙がこぼれてきた。その涙を優しく拭く岾芽。

  岾芽「私も気持ちは同じだよ・・・。私も、風海君と離れたくないよ・・・。」

 俺達は抱きしめ合った。その時、最後の一発を打ち上げると言うアナウンスが聞こえた。そして、俺達は唇を重ねあった。お互い、涙を流しながら・・・。

  風海(離れたくない・・・俺は岾芽と・・・。)

 花火は打ち終えた。が、岾芽は消えなかった。

  風海「・・・どういう事だ?」
  岾芽「・・・さぁ・・・・私もわからない。」

 その時、頭に響くような声が聞こえてきた。

  声「岾芽、今日1日人に戻らせたのは貴方のその未練を叶える為。そしてなぜ存在が消えてないのか不思議がっている事でしょう。」
  岾芽「どういうこと?」
  声「貴方達が互いを思う心が、そうさせたのです。お互いの思いが弱かったのなら、このまま消えていたでしょう。しかし、その思いがとても強かったので消えることはなかったのです。」
  風海「ふむ、ある種の試練だった、って奴か?」
  声「えぇ。その試練を突破する事が出来たので、岾芽は生き返る事が出来たのです。」
  岾芽「え、という事は・・・。」
  風海「俺達、一緒に暮らせるって事!?」
  声「その通り。お二方に幸あらんことを。」

 声が消え、俺達は向き合った。

  風海「これからもよろしくな、岾芽。」
  岾芽「うん。こちらこそ、風海君。」

 嬉し涙を流しつつ、唇を重ね合った。

 

  

〜END〜

  

<後日談>
祭りの時、猛と大和には彼女はできませんでした。 

 

 

 

 

<そして後書き>
構想期間1日、制作時間2時間の夏祭り物です。
当初は岾芽を本当に存在削除の予定でしたが、可哀相なので生き返らせる事に(何)。
夏祭りが題材ですが、結局あんま関係無いのは気のせい・・・・じゃないかも(ぉ)。
一応、猛と大和はどうなったか書いておきました(爆笑)。

兎にも角にも、読んで頂き有難う御座いました。