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出雲民藝紙ができるまで

出雲民藝紙の原料は、雁皮三椏の三種類です。
雁皮は島根半島に自生しているものを使います。三椏と楮は、高知県産のものを主に使います。
現在原料は、皮になったものを原料問屋さんから購入しています。
出雲民藝紙の紙つくりは、この三つの原料を単独に使います。雁皮の紙は雁皮の紙らしく、三椏の紙は三椏の紙らしく、楮の紙は楮の紙らしく、作ることを大切にしています。また、紙が長持ちするように、原料の繊維は極力いためないように、原料を処理しています。

1、原料のゴミをとります。

しじる しじる

白皮を一昼夜水につけ、白皮のキズなどを包丁でとります。白皮3本ぐらいで1枚の和紙になります。出雲民藝紙では一年間で、この皮を約4トン使います。


2、原料を煮ます。

    

者熟 者熟

白皮を釜に入れ、ソーダ灰をくわえてやわらかくなるまで煮ます。



3、あくぬきとちりよりをします。

ちりより ちりより

やわらかくなった皮は、水の中であくぬきをして、きれいな紙にするため、皮についているゴミを、一本づつていねいにとります。



4、原料を細かくくだきます。

ビーダー
ビーダー叩解機

足踏み式うす

皮をくだいて繊維にします。昔は棒でたたくなど手打ちでしたが、いまは、「足踏み式うす」でうつ方法と、「ビーダー叩解機(こうかい)」(機械)でくだく方法と、それぞれ作る紙によって使いわけておこないます。
出来たものを「紙料(しりょう)」といいます。


紙の色付け

紙染め

紙を染める場合は、くだいた原料をふたたび煮釜にいれ、 温度をかけながら、染料と原料がよく混ざり合うようかき まぜます。

5、紙漉きをします。

紙漉き 紙漉き

「漉きぶね」の中に、紙料と水と「ネリ」(「とろろあおい」という植物の根からでる粘った液)を加え、よくかきまぜて適当な濃度にします。その上で、紙漉き道具の「漉き桁」と「漉き簀」を使って紙を漉きます。和紙の漉き方には、「溜め漉き」と「流し漉き」という二つの方法があります。出雲民藝紙は「流し漉き」の方法で紙を漉きます。「流し漉き」の漉き方は、はじめに「掛け水」(かけみず)、つぎに「調子水」(ちょうしみず)、おわりに「捨て水」(すてみず)という三つの操作をおこないます。こうした工程は一般の和紙の漉き方とあまり違いはありませんが、出雲民藝紙の漉き方で、他の和紙の漉き方と違うところは、紙料と「ネリ」の調和の具合と、独特な漉き方の操作です。つまり、他の和紙は、「ネリ」をよくきかせ、漉くときに「桁」の「調子」をとってごみがのこらないように「捨て水」ではねとばしますが、出雲民藝紙の場合は、「ネリ」を少し薄めにして、漉くときもゆっくり「溜め気味」に「桁」を操作して水を捨てるというところです。
こうして漉きあげた紙は、ぬれたまま板の上に一枚づつ重ねていきます。「ネリ」の作用で紙と紙の間に何もはさまなくてもくっつきません。
特に漉くのは難しい作業で、一日250枚くらい漉きますが、全部同じ厚さにできるのは、長い間漉いてきた職人さんの経験とカンによります。また、水も大切で、どじょうが住めるきれいな水でないと、良い紙になりません。



6、水をしぼります。

圧縮

漉いた紙は水分をたくさんふくんでいるので、上から重しで押さえて「水切り」をします。



7、乾燥をします。

板干し 板干し
蒸気乾燥 蒸気乾燥

水切りをした紙を、一枚づつはがして乾燥します。乾燥には、板にはりつけて干す「天日乾燥」と蒸気で熱した鉄板にはりつけて干す「蒸気乾燥」があります。作る紙によって使いわけます。




出雲民藝紙の原料


雁 皮(がんぴ)

がんぴ

ジンチョウゲ科に属する多年生の落葉低木。雁皮の繊維は細くて長く強い。これを用いて漉いた雁皮紙は、独特の光沢と渋みがあり、変色せず、虫にも犯されず、水にも強く、和紙の王といわれている。古くより永久保存用の記録用紙などに使われている。
雁皮は、楮、三椏と異なり、栽培が困難なので、山野に自生するものを採取している。


楮(こうぞ)

こうぞ

楮は、桑科に属する多年生の落葉低木。その繊維は、紙の原料の中でも最も強くて長い。また繊維のからみ合う性質が強いので紙は強く、もんでも丈夫であり、版画用紙、障子紙、本の装丁等に広く使われている。
楮紙はもっとも虫に侵されやすいが、現在はこれを防ぐ特殊加工も施されている。


三 椏(みつまた)

みつまた

三椏は、雁皮と同様にジンチョウゲ科に属する落葉低木。この三椏を使用しはじめたのは近世になってからである。繊維は、楮に比べて繊細で光沢があり、その紙は紙幣、ペン書用紙、書籍印刷用紙などに適している。