2001年6月定例議会一般質問 
 構造改革を全面に掲げた小泉政権が発足して2ヶ月、いろいろある中依然として85%を超える驚異的な国民の支持率。
 変わるのではないかという期待だけで一桁から85%という支持率に変わる。国民にここまでの閉塞感と政治不信、政党不信を募らせてきたその政治の一端に身を置いてきた政党人の一人として、わが身を厳しく振り返らなければならないと思っています。
 さて、新しい世紀の到来とともに、日本は大きなパラダイム転換のときを迎えています。人口の増加、閉鎖性の強い市場などに支えられた「右肩上がり」を前提とする従来の固定的な仕組みや考え方を見直し、変動する環境に対応する新しい思考と制度を構築し、実践しなければならない時代に入り、そこでは「知識」と「見識」のみならず「胆識」が求められています。
 行財政改革の「逆機能」という現象があるそうです。逆機能とは、守ろうとした制度を自ら崩壊させてしまうことであると。さまざまな環境変化に対し、政治と行政、国民も含めた社会的集団が既存制度や既得権を温存させようと延命措置に努力することが、逆に守ろうとした制度自体に更なる矛盾を抱え込ませ、時間の経過とともに既存制度そのものを行き詰まらせてしまう。
 すなわち、改革による足元の痛みを回避することで、最終的にはより大きな制度崩壊と制度改革をもたらすというのであります。
 ほとんど形骸化していた経済財政諮問会議が小泉首相によって命を吹き込まれ、首相と竹中担当大臣の強いリーダーシップもあり、6月21日、構造改革の指針となる「今後の経済財政運営および経済社会の構造改革に関する基本方針」を正式に決定いたしました。
 今後、具体的な施策が打ち出されることになっていますが、小泉首相には「胆識」を発揮し、「逆機能」を克服し、日本がその実力に相応しい発展を遂げる道筋をつけて欲しいと思います。
 聖域なき小泉構造改革に対する知事のご所見をお尋ねするとともに、聖域なき構造改革を受けて、島根県の今後の構造改革に対する基本的な考え方をお尋ねいたします。
 経済財政の基本方針では経済再生の第一歩として、金融機関の不良債権の抜本処理する決意を明記しております。竹中担当大臣は主要銀行の不良債権処理を今後2年間に行うことによって10〜20万人の失業を予想しています。また、民間のシンクタンクでは不良債権処理による失業を100万人以上と予想しているところもあります。雇用のセーフティーネットの拡充も明記されていますが、最も肝要なことのひとつと思います。
 本県でも、不良債権処理にかかわる失業とともに、公共事業の見直しにかかわる雇用への影響も心配されるところです。本県産業構造の変換は大きな課題ですが、新規分野での雇用機会の創出についてどのようなビジョンと展望を持って取り組むお考えかお尋ねいたします。
 社会資本の整備では、効果と効率の追求が掲げられ、来年度予算から公共投資関係の予算の縮減と、配分の硬直性をもたらしているといわれる道路等の特定財源の見直しが盛り込まれ、地方交付税の見直し問題とともに最大の焦点であります。
 戦後の「地方財政」は、国土の均衡ある発展を前提に地方交付税、地方債そして補助金制度などを軸に中央集権的に展開されてきました。それが、地域間資源配分の歪みや受益と負担を乖離させることとなり、国と地方の意識や制度が乖離するとともに、地方財政は複雑化し、住民にとって身近でありながら極めて遠く難解な存在となってしまいました。
 その結果、いわゆる非効率的と言われるような公共事業もまかり通ることとなりました。
 経済財政の基本方針や地方分権委員会の最終報告に税財源の地方への移譲が明記され、今後の具体的検討を待つことになっているとはいえ、地方の自主性・自立性を高める方向が示されたことは歓迎すべきことであります。しかし、地方分権委員会の最終報告では、税源移譲による地方税の増収がある程度地域的に偏在するのは不可避であるとし、また、課税自主権の尊重がうたわれ、自主課税の努力が必要とされているものの、税源が脆弱な本県にとっては、公共事業の規模縮小の流れとあいまって厳しい環境となることが予想されるところです。
 そうした意味からも効果と効率の追求は、今後の行財政運営にとって大きな課題であり、本県でも新しい行財政システムの構築に取り組まれようとしております。
 この新システムの構築については、1980年代の欧米を中心に、行財政の現場で形成され、行財政改革に重要な思考を提示するマネジメント理論、ニュー・パブリック・マネジメント理論を基にした効果と効率を追求する新行政システムの構築を図る必要があると思いますが、新しい行財政システムの構築の方向性についてお尋ねいたします。 
 経済財政基本方針の新世紀型社会資本整備では分野別配分を見直し、重点的に推進すべき分野としてIT施策を共通分野とした上で@循環型経済社会の構築など環境問題への対応Aバリアフリーなど高齢化への対応B地方の個性ある活性化、まちづくりC科学技術の振興D人材育成、教育施策が特に示されました。詳細は示されておりませんが、こうした重点に推進すべきとされた分野に対する基本的な考え方を伺います。また、環境分野中、首相の所信表明で特に触れられた公用車の低公害車化への取り組みについて、現状と今後の対応についてお尋ねいたします。
 小泉内閣が発足し、結果として改革の姿勢を明確に示しえた問題のひとつにハンセン病患者の訴訟問題があります。今までであれば考えられないような決断となりました。
 本県でも知事が初めて里帰りの皆様とお会いされ、ねぎらいの言葉もあったところであります。元患者の皆様も高齢でもあり、国はもとより、県としても可能な限りの支援をしていかなければならないと思います。元患者の皆様へのバックアップについて、どのようにお考えかお尋ねいたします。
 この小泉内閣にも若干危惧の念を抱くことがあります。
 そのひとつは靖国神社公式参拝問題についてであります。
 靖国参拝問題は第1に憲法違反の疑いと第2に靖国神社の歴史認識、周辺諸国を中心とした国際的感情の問題から、私は公式参拝は避けるべきと考えております。
 ただ、誤解を招かないために、あえて言いたいのですが、宗教法人・創価学会を最大の支援団体とするからこだわるのではありません。戦死された方々には最大の敬意を払う心情はいささかも変わるものではありませんし、私の身内にも戦争の犠牲者がおります。個人として戦没された御霊に対して追善することは尊いことであります。
 疑義の第1、憲法違反の疑いについてであります。
 「信教の自由」を保障した憲法第20条の1項後段に、「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」とあります。この部分は、昭和21、22年の憲法制定議会での金森徳次郎国務大臣の答弁以来、「国およびその機関は国権行使の場面において、宗教に介入、関与してはならない」という解釈で一貫しています。
 また、憲法第20条3項には「国及びその機関は、いかなる宗教的活動もしてはならない」とし、さらに、第89条では「公金その他の公の財産は、宗教上の組織もしくは団体の使用、便益もしくは維持のため、これを支出し、又はその利用に供してはならない」としています。
 こうした憲法の規定は、ポツダム宣言を受けて、戦前の宗教政策を反省し、二度と国家が宗教を管理するようなことを行ってはならないということであります。
 もちろん、首相が個人で参拝することは、憲法第20条1項前段で「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する」とされまったく問題はありません。しかし、8月15日という靖国神社の慰霊祭、つまり特定の日に、首相が参拝することは、「個人としてであり、首相としてではない」と言ってもどうなのか。過去の判例の拠りどころとなった「目的・効果説」から、どこまで許されるのかという問題があります。
 第2については、靖国神社は明治2年、明治天皇の勅命によって創建された「東京招魂社」に起源があります。当時、「東京招魂社」をつくられた明治天皇の考えは、「幕末の護国殉難者を国としてお祀りしよう」ということだったと言われています。このため、いわゆる信者がいるわけでもなく、神官はじめ従事者はすべて国家公務員でした。
 その後、日本は「富国強兵」を掲げ軍国主義の道を歩み出し、明治12年には、名称を「靖国神社」と改称、陸軍省と海軍省の両省共管の管理に委ねることになりました。それとともに、外国との戦争・事変などで国のために亡くなった戦没者を護国の英霊として合祀することにしました。これによって、靖国神社は、いわゆる「国家神道」の象徴的な施設となり、軍国主義的な拡張政策の精神的なよりどころとして働きました。
 日本が敗戦した昭和20年のポツダム宣言で国家神道を切り離すべきであるという勧告があり、昭和21年、靖国神社は、国家管理を離れて東京都知事の所管する一宗教法人となりました。また、新憲法は国家と宗教の分離を厳しく規定しました。
 また、靖国神社は、戦後も引き続き、先の大戦における多数の戦没者を合祀していますが、昭和53年に東京裁判で戦争責任を問われ死刑となったA級戦犯14人が合祀されました。周辺諸国は、そういう人たちを敬い、戦前に回帰するのではないかという脅威を感じ、危惧の念が寄せられ大問題になりました。
 というのも、例えば、中国は、日中共同声明の際、この戦争を起こした加害者は一握りのA級戦犯であり、日本国民も中国と同様に被害者とし、当時の周恩来総理の大英断で賠償請求を放棄致しました。
 外交関係を考えると、こうした国際的な感情も当然考えなければなりません。
 ですから、首相が、いかに戦没者に対し感謝の念を捧げたいと言われても、個人としてならともかく、首相として公式参拝することは慎重にすべきだと思うのであります。
靖国神社が持つ歴史的意味を考えれば、そこへの公式参拝をめぐって議論が繰り返されるより、日本の発展は、戦没者の方々の犠牲の上に成り立っているという認識があるのであれば、米国のアーリントン墓地やハワイのパンチボールのような無宗教で開放された明るい国立の墓地をつくるべきではないでしょうか。知事の公式参拝問題に関わるご見解をお尋ねいたします。
次に、集団的自衛権行使問題についてであります。
 小泉首相は自民党総裁選挙の中で、憲法9条を将来改正すべきだと明言し、集団的自衛権の行使についても、40年前の政府解釈にこだわって、国益を損ねてはならないなどとして政府解釈の変更を求める考えを表明していました。
 しかし、所信表明演説とそれに続く衆参両院本会議での代表質問を通して、9条改正については「世論の成熟を見定めるなど慎重な配慮を要する」と述べ、また、集団的自衛権の政府解釈についても「『憲法上許されない』との解釈の変更は十分に慎重でなければならない」と抑制した発言を致しました。
 また政府は、集団的自衛権に関する従来の政府見解を繰り返した上で「さまざまな角度から研究してもいいのではないかと考えている」としています。
 こうした政府の考えに対して、わが党の冬柴幹事長は民放番組で、集団的自衛権の行使は憲法上明らかに禁止され、解釈変更で行使に踏み出すことは許されないとした上で、議論をしていくことには異論がないとの立場を示しました。
 実際、89年の冷戦終結以降、日本の安全保障環境は変わり、日本周辺地域にも目を向けざるを得ない状況になっております。99年成立の周辺事態法はその象徴であり、日本周辺地域の平和と安全の維持のためにどう関与すべきかという課題については、さらなる議論も必要でありましょう。
 しかし、この問題を集団的自衛権論に限定すべきではなく、憲法の範囲内で何が可能かを探ることが基本政策論議の本筋とおもいます。知事の集団的自衛権行使問題についてのご所見をお尋ねいたします。
 第2の質問は芸術文化振興についてであります。
 構造改革を標榜する小泉政権の誕生は一種の平時の革命との声があります。
 それは、これまで経済大国を目指し、達成し、しかし、バブルがはじけて今行くべき方向を見失っている、そういう中で本当に私たちがもう一度この日本のあるべき姿、世界から尊敬をされる国のあるべき姿を見つけ出す、そういう革命・大転換でなければならないと思います。
 そうした意味で、私ども公明党は21世紀の日本のあるべき姿は文化大国、芸術文化大国でなければならないと提案しております。
この大変厳しい景気の中、何が芸術文化だという声もあります。しかし、今の日本以上に厳しい経済状況であった第1次大戦後、1930年代のアメリカ、ここに芸術文化政策の一つの学ぶべき点があります。
 1930年代、ルーズベルト大統領が大恐慌を乗り切るためにニューディール政策を実行します。そのひとつの柱は大規模公共事業の展開でしたが、もう一つの大きな柱が、実は芸術文化政策でした。フェデラル・ワンとして、連邦美術プロジェクト、連邦音楽プロジェクト、連邦劇場プロジェクト、連邦作家プロジェクト、歴史記録調査、5つのプロジェクトを設け、驚くべき多くの人とお金を注ぎ込んで、あの大不景気、大恐慌の中で、徹底した芸術文化政策を遂行しております。
 それが、不景気で沈んでいたアメリカ国民の心に明るさを取り戻し、よし、アメリカ国民として頑張っていこうという勇気を奮い起こさせたのです。そして、そのことが、第2次大戦後、芸術の中心がパリからニューヨークへ移り、ブロードウエー・ミュージカルの興隆をもたらし、西海岸ではハリウッドが巨大映画産業に成長していく基礎になったと言われております。
 不景気の今だからこそ、厳しい状況であればこそ、この芸術文化というものを大切にしなければならないと思うのであります。知事の芸術文化に対する基本的なお考えをお尋ねいたします。
第2次大戦後、1946年、イギリスに英国芸術評議会が設立され、芸術文化に対して国が積極的に関与し、振興することになりました。その初代議長に経済学者のケインズが就任し、BBC放送を通じてこの評議会は、芸術文化の創造者や専門家の芸術の自由を保障し、その成果を国民が等しく享受し得るようにする。また、芸術文化に対する公的な援助は自由を擁護する政府の責任であると全国民に訴えています。ここに公の援助と自由に属する芸術文化の活動とを結びつける理念があると思うのであります。
 アメリカやイギリスの例を引くまでもなく、歴史的に見ても強力な財政支援のもと芸術文化の興隆がありました。一方、わが国の芸術文化関連予算は“芸術大国”を自任するフランスの10分の1程度であり、民間からの寄付金による援助の額は、アメリカの60分の1に満たない現状であります。芸術文化興隆のため行政の関与はどうあるべきとお考えかお尋ねいたします。
 さて、本県では豊な自然の中で質の高い文化が培われて参りました。また、県民の文化に対する関心と期待には大きなものがあり、その裾野は確実に広がっていると思います。
本県では文化振興指針をもとに芸術文化振興への取り組みを着実に実施して頂いていますが、さらに広く深みのある芸術文化振興、県民の精神性を高め、魅力ある地域創造の根っことしていくには多くの課題があるのではないかと思います。
 芸術文化振興に関わる公的支援、民間支援の現状と拡充策をお尋ねするとともに、金持ちの子弟でなければ芸術家になりがたいという現実の中、質の高い人材の育成、輩出、地域への定着について現在の取り組みと今後の考え方をお尋ねいたします。
 また、芸術文化大国を目指すには国の支援策の拡充や税制面での優遇措置の拡充、人材輩出のための奨学金制度の拡充策なども必要ではないかと考えます。県として積極的に働きかけていくお考えはないかお尋ねいたします。
 本県には豊かな風土と歴史に育まれてきた貴重な伝統芸能が息づいております。子供の頃は祭りや学校などでたびたび接し、胸が踊るような感慨を覚えたものですが、あの頃に比べてめっきり接する機会が減ったように感じています。神楽などの伝統芸能の伝承・保存の現状と振興策についてお尋ねいたします。また、教育の中で積極的に郷土の伝統芸能に接する機会や質の高い芸術文化に接する機会をさらに拡充する。例えば、今文化ホールがたくさんできましたが、あまり使われていないと言われております。ここで地域の伝統芸能とか芸術家の公演をし、そこに子供たちが行く。舞台裏を見る、学校でも公演する、地域の芸術文化のリーダーに学校のクラブ活動に行って直接指導してもらうなど、裾野を広げる取り組みをさらに進めるべきと思います。現状と今後の取り組みについてお尋ねいたします。
 芸術文化振興に関連して、来年度の学習指導要領から邦楽がカリキュラムに入ってきますが、学校現場ではそれを教えられる人はだれもいない。ピアノは弾けるけれども、尺八は吹けない。しかし、地域には邦楽を支えていらっしゃる方がいらっしゃるわけで、そういう方も学校に来て指導できるような体制等をとらないと対応できないとの声がありますが、今後の対応についてお尋ねいたします。
 第3の質問はマンション対策についてであります。
 昨年の臨時国会で、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」が成立いたしました。
 分譲マンションは、近年この松江市でも建設ラッシュですが、現在国民の約1割が分譲マンション住まいといわれ、マンション住民が増えるにつれ、消費生活センターなどへのマンションに関する苦情・相談件数は増え続け、その数はここ10年間で3倍弱に膨れ上がるなど、社会問題化しています。今後マンションの老朽化とともに更に多くの問題が発生してくると思われます。こうした背景から同法が成立し、対策が強化されることとなっています。
 過日、いくつかの管理組合の方から話をお聞きしましたが、修繕積み立てのない管理組合や、管理会社とのトラブルを経験し、随分苦労された管理組合などもあり、全国共通の課題を抱えていると感じました。
  本県のマンションは相対に新しいと思いますが、現状についてお尋ねするとともに、管理組合の方からは相談する人がなくて困ったとの話を聞き、相談窓口の設置も検討する必要があると考えますが、今後の対応をお尋ねいたします。
 また、今後都市化が進む中でさらに増えると考えられるマンションですが、都市政策、住宅政策の中で明確に位置付け、行政が維持・管理に一定の支援を行うことも検討すべき課題と考えますが、ご所見をお尋ねいたします。
次に島根原子力発電所の安全協定の見直しについて伺います。
 一昨年のウラン加工施設JCO臨界事故を受け、国では、原子炉等規制法改正による安全規制の強化と、原子力災害対策特別措置法制定による原子力災害対策の強化が図られました。
 一方、県におかれては、1号機設置以来、中国電力と安全協定を締結され、地元自治体独自の立場から、環境放射線モニタリングの実施やトラブル時の対応など安全対策をとられております。このような県の原子力安全対策への地元住民の期待は大きなものがあり、特に、周辺地域住民の安全を確保するための安全協定は重要な位置づけのと思います。
 県は昨年9月に島根原子力発電所3号機の増設を了解された際に、増設計画に対する知事判断のなかで、安全協定の見直しを行うとの考えを示されておりますが、どのような観点から見直しを行われようとしているのか、現在、どこまで検討が進んでいて、今後はどのようなスケジュールで進められようとしているのか伺います。
 また、見直しに際しては、県民の意見を広く聞くことも必要かと思いますが、いかがお考えか伺います。
県知事答弁
 まず、小泉内閣の構造改革についてであります。
 泉内閣は、経済の停滞を克服し、社会を覆う閉塞感を払拭するため「聖域なき構造改革」を表明され、経済、財政、社会、政治等の各分野における改革を果敢に推し進めようとされており、その姿勢を評価し、期待しております。
 先般、新たに経済財政運営等に関する基本方針が策定され、その中には、公共事業費の削減「地方交付税や道路特定財源の見直しなどが盛り込まれたところであります。
 私は、こうした見直しに当たっては、厳しい財政事情の中で、高齢化対策、中山間地域対策、産業振興対策、さらには、立ち後れた社会資本の整備促進などの諸課題に今後とも積極的に取り組み、個性と活力ある地域づくりを推進しようとする地方への十分な配慮が必要であると考えております。
 このため、国に対し、地方の実態を十分把握しながら諸改革を進められるよう、強く要望してまいりたいと考えております。
 次に、今後の本県の改革についてでありますが、 社会経済情勢の変化や多様化する県民ニーズに対応していくため「これまでにも、市町村への権限移譲や地方機関への権限委任、補助金や負担金の見直しによる県と市町村の間の財政秩序の確立、また、本庁や地方機関の組織・機構の見直し、外部委託の推進などの事務事業の見直し、県の関与の強い外郭団体の見直しなど積極的に取り組んでまいりました。
 また、今年度からは、簡素で効率的な新しい行財政システムの構築を目指した取り組みを始めたところであります。
 今後も、県民本位、地域主体の立場で、時代のニーズに対応した行財政システムを構築するため不断の見直しを行ってまいりたいと考えております。
 次に、経済財政基本方針の中の「重点的に推進すべき分野」についてであります。
 これらの分野につきましては、そのいずれもが 今日的課題と認識し、本県にぉおましても、これまで積極的に推進してきたところであります。
 例えば、基本方針の重点分野「環境問題への対応」について申しますと、県民1人あたり1万円の環境基金を設立したところであり、島根ふれあい環境財団21を通して、県民の環境保全活動を支援するなど、様々な施策を実施しております。
また、「人材育成、教育施策」の分野におきましては、 21島ねっ子のびのび事業により、自然との触れ合いなど地域の特色を生かした体験活動、ボランティア活動、文化・スポーツ活動など、学校、家庭、地域が連携して進める創意工夫を凝らした取り組みを支援し、伸びやかで心豊かな子供たちの育成に力をいれております。
 現段階では、国の施策の具体的な内容が分かりませんが、国の「基本方針」には、これらの重点分野を推進していく視点として、民間活力の導入や、ハードとソフトの適切な組み合わせなどが重要であるとされております。
 従いまして、本県におきましても、こうした国の考え方も踏まえながら、引き続き、これらの分野について、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、ハンセン病元患者の皆様に対する支援についてであります。
 去る五月二十九日に、三島議員とともに全国のハンセン病療養所に入所されている本県出身の方々と面会し、これまでの多大な苦痛と苦難についてお話を伺い、改めて胸の締め付けられる思いがいたしました。
 本県においては、「里帰り事業」や「施設の訪問」などを実施してきたところでありますが、当日は、さらなる支援の充実をお約束したところであります。
今後とも、藤楓協会島根県支部等と連携を図り、入所者の皆様の御要望を伺いつつ、個別の里帰り、ボランティアや家族よる療養所訪問、県民との交流の促進などの支援を充実するとともに、正しい知識の普及・啓発をさらに強化し、差別や偏見のない社会の実現を目指してまいります。

 次に、靖国神社への公式参拝問題に関する私の見解についてであります。
 尊い命を犠牲にした戦没者の方々に対し、感謝や慰霊の気持ちを捧げ、改めて平和の大切さに思いを致すことは、日本人として当然であると考えております。
 靖国神社への首相の公式参拝につきましては、靖国神社が宗教施設であり、また、現実に近隣諸国から反発の声があることから、様々な議論がなされているところであります。
 首相がどのような形で参拝されるかは、これら諸般の事情などを総合的に勘案し、自主的に判断されることであると考えております。
 また、無宗教の国立戦没者墓地の建設案も提起されておりますが、靖国神社を戦没者追悼の中心的な施設と考える国民も多いと思われることから、今後さらに議論が必要ではないかと感じております。
 次に、集団的自衛権行使の問題についてであります。
この問題につきましては、「憲法第九条の下において許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであり、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されない」とする政府見解と同様の考えであります。
 集団的伯自権の行使及びそれに関連する諸問題は、我が国の安全及び周辺地域の平和と安定に関わる国の専権事項であり、国会において憲法問題も含め、種々論議がかわされてきているところでありますので、その議論の推移を見守ってまいりたいと考えております。
 次に、芸術・文化に対する基本的な考えについてお答えします。
 私は、芸術・文化は人々の創造性を育み、真にゆとりとうるおいを実感できる生活を実現する上で大きな役果たすものであり、創造的で活力に満ちあふれた社会をつくりだす源泉であると認識しております。
 こうした考えから、これまで、目本一の規模を誇る「公益信託文化ファンド」の設立や、島根の文化遺産を全国に発信し好評を得た「古代出雲文化展」の開催などのほか、芸術・文化の拠点として「県立美術館」を開館し、すぐれた鑑賞の場や発表の場を提供するなど積極的に芸術・文化の振興を図って参りました。
 芸術・文化の振興は永続的に取り組むべきものと考えており、石見地域の芸術文化の拠点となる芸術文化センターや、古代文化を中心とした島根の歴史・文化を展示・紹介する歴史民俗博物館の整備も進めているところであります。
 また、県民の芸術・文化活動への参加を促進するため、全国高等学校総合文化祭の開催や、平成20年代前半の国民文化祭の誘致開催を目指していくなど「今後ともうるおいや豊かさが実感できるような島根らしい個性のある芸術・文化振興を図ってまいりたいと考えております。
 次に、島根原子力発電所の安全協定の見直しについてお答えします「 島根原子力発電所周辺地域住民の安全確保等に関する協定」は、県の原子力安全対策の根幹をなすものであり、昭和48年に県、鹿島町及び中国電力の3者で締結し以来、県はその的確な運用を図ってきております。
 しかしながら、この協定には、締結当時想定していなかった燃料プールの変更など重要な設備の変更が、事前協議の対象とされていないなど、実情にあわない面も生じてきております。
 また、もんじゅの事故やJCO臨界事故等により、住民の不信感、不安感が増大するなど原子力に対する関心が高まってきており、原子力発電についても一層の安全確保、透明性の確保が求められていると考えております。
 これらのことを踏まえ、この安全協定の改定に当たっては、事前協議対象の拡大や立入調査の強化など一層の安全確保を図るとともに、発電所の運転状況リアルタイムで情報提供するなど積極的な情報公開を進め、県民の皆様に安心していただけるよう、より実効あるものにしていきたいと考えております。
 現在、協定の当事者間で協議を行なってきており、今後、島根県原子力発電所周辺環境安全対策協議会の顧問方方々に専門的立場からの意見もいただき、年内には改定したいと考えております。
 また、この見直しの検討過程においては、各種広報手段を活用し、広く県民から意見をいただくことによつて、県民の信頼を一層深めてまいりたいと考えております。

総務部長答弁
 次にユーパブリックマネジメントを基とした新しい行財政システムの構築の方向性についてお答えします。
この理論は、徹底した競争原理の導入や業績・成果による評価と言った民間企業における経営理念や手法を行政運営に導入し、その効率化・活性化を図ろうとするものであると伺っております。
 先般、発表された経済財政諮問会議の基本方針においても、国の行財政改革を推進していく上で、こうした新しい行政手法の考え方を十分に活かし、政策プロセスの改革を図っていくことが重要であるとされています。
 本県においても、今後一層、厳しくなる行財政環境の中で、限られた人員・財源を活用しながら行政運営を行っていくため、今年度から新行政システム推進の取り組みを開始したところであり、行政評価システムの導入、外部委託の推進、県民サービスの向上などについて検討していく上で、このような考え方は大いに参考になるものと考えております。

環境生活部長答弁
 低公害車導入について質問質間にお答えします。
 県で現在導入している低公害車は、電気自動車三台、ハイブリッド自動車五台であります。
 低公害車につきましては、今のところ、価格が割高であること、種類によっては燃料供給施設が無いなど、運行にったつての条件整備が整っていないこと、車種が限られていることなどから、導入にあたっては困難な面もありますが、環境負荷の小さい低公害車普及の重要性は、充分に認識しておりますので、今後、公用車の更新時期、用途等を勘案しながら、導入に努めてまいります。
 次に芸術・文化振興についてお答えします。
 まず、芸術・文化興隆のための行政の関与についてであります。
 芸術・文化活動は、個人・団体が主体的に自己を表現し、交流し、心を豊かにする活動であり、その欲求と盛り上がりを活発化し、その質を高めていくことが大切であります。
 行政は、その自主性を尊重し、バックアップすることが重要であり、芸術。文化に触れる機会や活動を発表する機会を提供するためのソフト事業の実施や、文化施設等を整備するとともに、各種制度による財政支援を通じ、様々な文化活動を支援していくべきものと考えております。
 次に、県の芸術・文化振興に関わる公的支援、民間支援の現状と拡充策についてお答えします。
 県の去術・文化振興に関わる公的支援としましては、発表・鑑賞機会の拡充のため、美術、文芸、芸能団体等と連携した島根県芸術文化祭や、県文化振興財団による伝統芸能・創作ミュージカルの発表などを実施してまいりました。
 また、平成3年に22億円の信託財産により設立した「公益信託しまね文化ファンド」により現在まで698件、7億500万年余の民間団体への助成を行っており、本年3月にはさらに5億円を出損し、より充実した助成が行われるよう拡充したところです。
 今後はさらに、芸術・文化活動の発展に様々な効果が期待できる、「国民文化祭」の誘致開催を目指し、県民の芸術・文化活動への参加の促進や文化団体の育成・強化、組織化、またそれに対する支援策の拡充を図ってまいります。
 民間からの支援につきましては、県内においても企業メセナとして実施されているところであり、今後ともこの促進に向け情報交換など連携を密にしていきたいと考えております。
 次に、質の高い人材の育成、輩出、地域への定着について現在の取組状況と今後の考え方についてお答えします。
 芸術・文化活動を地域に根づかせ、多彩に展開するためには、その活動の中心となる人の存在が重要であり、その人材の育成が必要と考えております。
 本県では、将来の活躍が期待できるものに贈る島根県文化奨励賞による顕彰や、文化ファンドによる新しい分野への取組・若手演奏家の活動への支援、またアーティストバンク事業による指導者の招聘などを行っているところです。
 今後ともこれらの制度を活用し、文化活動に関わるリーダー、若手芸術家、伝統芸能・技術を受け継ぐ後継者など各分野の人材を育成するとともに、芸術・文化活動の裾野の拡大に務め、これらの人材が育つ土壌づくりを進めていきたいと考えております。
 次に、国の支援策の拡充に係る働きかけについてでありますが、 国においては、「文化のまちづくり事業」が拡充され、本年度「芸術文化活動支援員制度」が新設されるなど、文化行政の予算の拡充が図られています。
 県としましては、これらの支援策を積極的に活用するとともに、さらに拡充を求めてまいりたいと考えております。

商工労働部長答弁
 新規分野での雇用機会の創出に関するビジョンと展望についてお答えします。
 経済のグローバル化、規制緩和などにより産業構造が大きく転換しつつあるなかで、自立した地域社会を築いていくためには、県内産業の構造改革を進め、創造的な地域産業を育成するなど地域の特性を生かした産業の振興とそれを通した雇用機会の創出が重要であると考えております。
 このため、地域産業の高度化や経営革新、研究開発型企業立地の促進などを進めるともに、IT化の進展や高齢化、環境問題などに対応する新たな製品やサービスの供給チャンスを生かした、県内企業の新規分野への進出や新規創業を促進してきたところです。
 また、島根労働局や関係団体と連携して、新分野などの新規雇用に対する各種助成金の活用を促進し、雇用の創出を図るとともに、新規・成長分野における職業能力開発の推進により、労働力需給のミスマッチ解消にも努めてまいりました。
 このたび、経済財政運営等に関する基本方針が策定され、不良債権処理や公共事業の縮減が打ち出されたことにより、御指摘のように雇用環境は厳しくなるものと認識しております。
 一方、経済財政諮問会議の専門調査会の報告によりますと、サービス分野を中心とする雇用創出によって経済の活性化を図ることとされております。
 本県において、構造改革に伴って発生するであろう失業者数やサービス分野での新たな雇用者数の予想は難しいと考えますが、県といたしましては、新たなサービス分野への参入を積極的に支援するとともに、これまで取り組んでまいりました。地域産業の振興や新規分野への進出、新規創業の促進等を一層強力に進めてまいりたいと考えております。
 また、今後、具体化されであろう離転職者に対する支援の強化などの雇用対策が本県の実情に沿って効果的に実施されるよう関係機関と連携を図りながら、緊張感を持って取り組み、雇用機会の創出につなげてまいりたいと考えております。

土木部長答弁
 マンション対策についてお答えします。
 まず、本県におけるマンションの状況でありますが、本年6月現在、約50棟、戸数にして、2000戸余りが建設されております。
 このような状況の中で、マンションの管理に関わるトラブルの発生が予想され、県といたしましても、マンションの管理の適正化が図られるよう、相談窓口の設置を検討してまいりたいと考えております。
 また、マンションは本県におきましても、持家の居住形態の一つとして、住宅政策の上からも一定の役割を果しており、今般制定された「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」の趣旨を踏まえ、居住者の生活の安定向上のため、マンション管理業者の登録状況等、必要な情報提供などの支援を積極的に行ってまいります。

教育長答弁
 まず、伝統芸能の伝承・保存についてお答えいたします。
 現在、県内各地には数々の特色ある伝統芸能が伝えられておりますが、そのうち佐陀神能・大元神楽・隠岐国分寺蓮華会舞など5件が国指定の重要無形民俗文化財となっております。この他、大社の吉兆神事・有福神楽など32件が県指定の無形民俗文化財となっております。
 このような国・県の指定を受けている無形民俗文化財の団体に対して、国及び県、地元市町村からは後継者の育成や衣装・用具等の製作に対して助成を行っているところであります。
 また、伝統芸能の活動を公開し、団体 相互の交流を図るため、島根地域伝統芸能まつりを開催したり、中・四国ブロック民俗芸能大会等への出演参加に支援を行っているところであります。
 さらに、民間の公益法人による助成事業として伝統芸能の太鼓などの用具の購入や映像記録の作成等も実施されております。
 伝統芸能を引き継ぎ、裾野を広げるため地域文化の担い手を育成することは重要な課題と認識しており、今後とも伝統芸能団体の意見等も聞きながら、本県の特色ある伝統芸能の伝承・保存に積極的に取り組んでまいりたいと考えます。
 次に、教育における郷土の伝統芸能や質の高い芸術文化に接する機会についてであります。
 現在、小・中学校においては、「社会人先生派遣事業」により、安来節、石見神楽、隠岐民謡など地域の指導者による学習活動が実施されております。また、高校においては、「生徒きらめく高校づくり事業」により、生徒が小・中学生や地域の方との交流を通して魅力ある学校づくりを行う一環として銭太鼓や和太鼓などの伝統芸能教室や石見神楽の鑑賞会等を行っています。
 芸術文化につきましては、小・中学生を対象に全国的にもすぐれた演劇や音楽の巡回公演を提供するとともに、高校生の文化活動支援のため、用具や楽器などの整備をしているところであります。
 今後、教育委員会としては、平成19年度開催予定の全国高等学校総合文化祭に向けて、学校における文化活動の一層の支援に努めるとともに、島根の将来を担う子どもたちに質の高い芸術文化に触れてもらうことにより、心豊かな感性を持つ優れた人材の育成に努めて参りたいと考えております。
 次に、邦楽に関する指導体制についてお答えします。
邦楽の指導は、中学校の音楽科を中心として、我が国の伝統的な音楽文化のよさに気付き、尊重しようとする態度を育成するために、取り入れられたものであります。
 この邦楽の指導者は少ない状況があり、平成12年度から、小・中学校の音楽科担当教員を対象とし、和楽器等を活用した授業の工夫やこれからの音楽教育の在り方について理解を深める研修講座を開設してまいりました。
 更に、文部科学省が主催する、新教育課程説明会の一環として実施された伝統音楽研修会に県内の小・中学校の教員も派遣いたしました。
 また、特別な知識や技能をもつ地域の人材を、学校の教育活動の指導者として派遣する、「社会人先生派遣事業」を実施し、教育活動の充実を図ることとしております。
 この事業では、県内の学校で、小学校は9校、中学校は3校が、音楽やクラブ活動の時間に、琴や尺八、三味線などの指導を受けております。
 このような施策をとおして、児童生徒が、我が国の伝統的な音楽文化にふれることにより、情操を高め、伝統文化に対する理解を深める音楽教育の一層の充実を図ってまいります。

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