2001年9月定例議会一問一答 2001/10/2
 最初に、介護保険における低所得者層対策についてお尋ねいたします。
 昨年4月、介護保険制度が導入され、いよいよ本年10月より、保険料の本格徴収が始まります。
 先日、老夫婦の世帯の方から深刻な相談がありました。昨年10月より介護保険料の徴収が始まってから保険料を払いつづけてきたけれど、来月からの本格徴収で、倍の保険料となります。でもとても払えそうにありません、何とかなりませんかというものでした。よく話を聞くと生活保護の対象となる世帯ですが、何とか自力で生活したいというのです。
 先日の朝日新聞の特集記事にも具体的な話が報道されておりました。
 年金需給額の低い皆さんは、普通徴収の対象となり、自ら払い込まなければなりません。その収納状況を見てみますと、保険者によって相当開きがありますが、全体では96.46%、松江地区広域行政組合が94%、人数では627名で最低、郡部はおおむね収納率が高く、都市部が低い状況であります。
 この収納状況と未納者の実態について、どのように分析していらっしゃるか、また、全額徴収が始まってどのように推移するとお考えかお尋ねいたします。
 (答)平成12年度の普通徴収(本人に直接払い込んでいただくもの)は96.5%であり、厚生労働省の全国調査結呆による92.8%よりは3.7%高い結果となっています。
この収納率はその後の督促等により若干上がっているものと考えますが、中には、40歳以上の全国民で支えるという介護保険制度の趣旨を御理解いただけていない方もいらっしゃると聞いております。
全額徴収開始以降の収納率の推移については、予測できかねますが、今後とも各保険者とともに、保険料を納付いただく目的等、介護保険制度の周知に努めることにより保険料納付についての御理解を得てまいりたいと考えております。

 滞納者に対してはペナルティが課せられることになっています。その周知は十分行われているのか、認識した上での未納とお考えになっているのかお尋ねいたします。
 (答)保険料を滞納した場合には、給付制限等のペナルティが課される場合があります。
このため各保険者においては、まず納付期限までに納付されていない方に対しては督促状を、更に給付制限の対象になりそうな方には、事前に郵送により告知したり訪問して制度説明を行い、極力滞納の防止に努められております。
また、県といたしましては、保険料の全額徴収開始を前に、新聞やラジオを活用して保険料を納付していただく目的や制度について改めて広報を行ったところでありますが、この中で、保険料を滞納された場合の給付制限等についての周知にも努めてまいったところです。
こうしたことから考えますと、給付制限の対象となり得る第1号被保険者の方々(これは65歳以上の方々ですが)に、制度の仕組みについては御理解いただいているものと考えております。

 保険料の全額徴収を前に、全国的に保険料の軽減措置に取り組む市町村が増えているとの報道がありますが、県内市町村の動向についてお尋ねいたします。
 (答)全国的に保険料の軽減措置を行う市町村があることは、新聞報道等により認識しておりますが、本県においては、既に保険料の減免を、制度の外で一般財源を使って対応している六日市町以外には、現在のところそのような動きはないものと承知しております。

 昨年の9月議会でも同じ問題を取り上げましたが、制度の中で保険料を5段階から6段階に増やすことによって、低所得層への配慮が可能であります。各保険者で取り組むよう、県としても働きかけるべきと思います。普通徴収の収納実態の現状を鑑みて、その必要性についてのどのようにお考えか、平成15年4月からの介護保険制度等の見なおしにかかわって、国に低所得者対策を要望していくお考えはないかお尋ねいたします。
 (答)保険料の低所得者に対する軽減措置につきましては、国は「保険料の全額免除」、「収入のみに着目した一律の減免」、「保険料減免分に対する一般財源の繰り入れ」などを禁じた、いわゆる「保険料減免の三原則」を遵守するよう求めております。
各保険者において、この三原則を踏まえた上で、高齢者の所得階層分布等の個別事情を勘案して、「6段階方式」等、独自の方法を導入することは、制度上認められており、実施するかどうかについては、各保険者においてご判断いただくべきもの、と考えております。
今後、本制度の趣旨を今一度周知し、まずは、現行制度のもとで、この減免の方法を運用していただき、その上でなお支障があれば、利用者や保険者等の御意見も参考にしながら、さらなる対策について、国に改善を要望して参ります。

 もう一つ、制度の中で、低所得者対策として可能なものに、社会福祉法人の利用料減免措置がありますが、現在の状況と今後の対応、社会福祉事業団の対応についてお尋ねいたします。
 (答)平成12年度に、この制度を実施したのは、2保険者、3法人でありましたが、平成13年度は、これらに加え、新たに4保険者が実施または実施予定としております。
この制度は、社会福祉法人等が低所得者の利用料負担を軽減する目的で実施するもので、特別養護老人ホーム、ホームヘルプサービス、デイサービス、ショートステイの4種類のサービスを対象に、法人等に一定の負担を求めた上で、国、県、市町村が財政支援を行い、本来1割の利用者負担を半額以下に軽減しようとするもので、低所得者対策として有効な方策であると考えております。
県といたしましては、今後とも未実施の保険者及び事業者に対しまして、この制度への理解を求めて参りたいと考えております。
また、島根県社会福祉事業団においても各保険者が実施すれば、その実施時期に合わせて、制度の運用を開始する意向と聞いております。


次に、乳幼児医療費の公費負担についてお尋ねいたします。
 乳幼児医療費の公費負担については、少子化対策の重要な柱のひとつとして、澄田知事の決断で平成7年から対象年齢を1歳未満から3歳未満児へと引き上げていただきました。
 また、様々な形で子育て支援策を実施して頂いております。ただ、残念なことに、この間も少子化傾向に歯止めをかけるには至っておりません。しかし、乳幼児期は特に病気にかかりやすい時期でもあり、安心して子育てできる環境作りという点では、大きく貢献しているのではないかと思っております。乳幼児医療費の公費負担の事業効果について、どのような見解をお持ちかお尋ねいたします。
 (答)本県の乳幼児医療費助成制度は、「福祉元年」と言われた昭和48年に、当時の乳児死亡率などが高かった状況の中で、乳児の疾病の早期発見、早期治療を目的として一才未満児を対象とした制度を創設したものであります。
その後、平成7年に三歳未満児まで対象を拡大し、現在に至っております。
この制度による助成額は、県と市町村分の合計で乳幼児一人当たり年間およそ37,000円となっておりますが、精神運動発達の面において最も重要な時期である三歳未満児の医療費負担が軽減されることにより、医療機関への早期の受診が促進され、病気の重症化を防止できるものであり、子どもの健やかな成長にとつて大きな役割を呆たしているものと考えております。

本事業に対する各県の取り組みも年々拡大、充実していると聞いていますが、全国の実施状況は如何でありますか、お尋ねいたします。また、県内の市町村の中には更に対象年齢を拡大して取り組んでいるところもあるようですが、その実施状況をお尋ねいたします。
(答)まず、本年4月1日現在における全国の実施状況について、「入院」の場合と「通院」の場合に分けてお答えします。
「入院」についての対象年齢でございますが、本県と同じ三才未満児を対象としている都道府県は22団体、四才未満児と五才未満児についてはそれぞれ4団体、六才未満児は7団体、就学前の児童までを対象としているのは10団体となっております。
また、「通院」については、三才未満児以下を対象としている都道府県は36団体、四才未満児は4団体、五才未満児は3団体、六才未満児と就学前の児童までを対象としているのはそれぞれ2団体となっております。
なお、本県は対象者について「所得制限」を設けておりませんが、全都道府県の内20団体は、何らかの所得制限を設けております。
次に、県内市町村の状況についてでございますが、対象年齢について、県と同様の三才未満児を対象としている市町村は、56団体であります。
残りの3団体については、「西ノ島町」が入院・通院とも就学前の児童までを対象としており、「掛合町」は同じく六才未満児までを対象としております。
また、一広瀬町」は、入院のみを六才未満児まで対象としております。

 ただ今の答弁で、就学前まで拡大している県もかなりあり、県内自治体にもあるとのことですが、本県で就学前まで通院、入院ともに拡大した場合の所要額と、入院費のみ拡大した場合の所要額をお尋ねいたします。
 (答)対象年齢を就学前の児童まで拡大した場合の県費負担の増加額は、通院と入院を合わせますと、およそ37,000万円と試算しております。
また、入院費のみの場合の増加額は、およそ1億円と試算しております。

 さて、小泉首相の「聖域なき構造改革」では社会保障制度にも大きく切り込まれようとしており、その一環として医療制度も紆余曲折はあったものの、とりあえず「三方一両損」という形で改革の方向性が示されております。その中で唯一ほっとする話題は、3歳未満の乳幼児医療費に対する負担を現行の3割から2割に引き下げる方針を固めたという点であります。
国民の負担増が目立つ医療制度改革への批判を和らげる意図を指摘する向きもありますが、少子化対策の一歩前進と評価したいと思います。そこで、この引き下げ案が実現した場合、本県への影響はどの程度と試算できますか、お尋ねいたします。
 (答)三才未満児の患者自己負担額について、現行の3割負担部分が2割負担になった場合、乳幼児医療助成事業に係る県負担額もそれに応じて減少することとなりますが、その影響額は、平成12年度の実績から試算しますと、およそ1億円程度になるものと見込まれます。
なお、この試算は、診療報酬体系などの変更が無いことを前提としたものであります。

 先ほどの答弁にもありましたように、対象年齢の拡大は少子化対策の柱のひとつとして定着し、全国的な流れであると言えます。また、子育て中の保護者には、負担軽減に対して強い要望もあります。医療制度改革は、国、地方自治体、被保険者、医療関係それぞれに痛みが伴うこととなり、非常に厳しい内容でありますが、敢えて3歳未満の乳幼児医療費に対する負担を現行の3割から2割に引き下げる方針を固められたその意図を生かす上で、対象年齢の拡大に取り組むべきと思います。
医療制度改革に伴う乳幼児医療費の対象年齢拡大に対する県の考え方をお尋ねいたします。
 (答)乳幼児医療費の助成対象につきましては、先ほどお答えしましたとおり、各県において対象年齢の拡大が図られつつあるところであります。
そのような考え方もあろうかと思いますが、一方で、短期の入退院を繰り返す「ぜん息」や「心臓病」など、現在の「小児慢性特定疾患公費負担制度」の対象とならずに、医療費負担が大きくなつている方への支援のあり方や、応益応能の負担のあり方など検討すべき課題がございます。
今後、御指摘の趣旨も踏まえ、市町村とも協議をしながら、乳幼児医療費助成や小児慢性特定疾患への支援のあり方などについて、様々な角度から検討してまいりたいと考えております。

 引き下げに伴う影響が約1億円、入院費のみの就学前までの拡大に見合う金額であります。全国的な流れもありますので、少なくともその程度の拡大に取り組んでいただきますよう重ねて要望しておきます。


 最後に認可外保育所についてお尋ねいたします。
最初に、認可保育所での乳児保育と延長保育に対するエンゼルプランでの目標値と実施状況を公立、私立の別でお尋ねいたします。
 (答)平成16年度末の数値目標に対する実施状況は、本年8月現在、乳児保育が目標値240箇所に対し、公立67箇所、私立123箇所の合計190箇所、延長保育が目標値125箇所に対し、公立23箇所、私立83箇所の合計百六箇所となっております。

 目標値に対しての実施状況はほぼ順調のようでありますが、公立保育所の取り組みが遅れているようであります。ニーズに対する充足という面でどのように評価していらっしゃいますか、お尋ねいたします。
 (答)延長保育等の保育ニーズにつきましては、各市町村において地域の現状を把握し、県との補助事業の事前協議等の手続きを経て実施されることとなっておりますが、保育時間が保護者の勤務時間に柔軟に対応しきれていないところもあり、実際には、ニーズに対して必ずしも十分な状況ではないと考えております。
県としましては、特に取組みが遅れている中山間地域の公立保育所において実施が進むよう働きかけをしております。

 今議会での質問戦でもありましたが、認可外保育所の数が62、約2000人の児童が保育されているとのことで、待機児童にカウントされていないとのことでした。敢えて認可外保育所を選択する保護者が相当数あるわけですが、認可外保育所の役割についてどのように認識していらっしゃるのかお尋ねいたします。
 (答)認可外保育所では約2,000人の児童が保育されており、また、認可保育所を超える長時間保育など子育て家庭の多様な保育ニーズに対応しており、子育て支援サービスの提供に関して大きな役割を果たしているものと認識しております。

 認可外保育所で、院内保育所と事業所内保育所を除いた数は43箇所で認可要件を満たしているものが1/3とのことでした。その中で、認可を希望するものははどの程度ですかお尋ねいたします。
 (答)基準を満たしているものは14箇所であり、そのうち認可への移行を希望している保育所は1箇所であります。
なお、残り13箇所については、独自の保育を進めたいという方針を持っている等の理由から、認可への移行希望はなされておりません。

 保育所の設置認可は、市町村が策定した保育所設置計画に登載されたものについて認可することになっており、設置計画は待機児童数の有無が重要な要素と聞きました。入所児童の一層の処遇向上のためには認可保育所としていくことが求められるわけですが、認可外保育所で保育される児童は、大半が認可保育所への入所を申請していないとのことで、待機児童にカウントされていないとのことです。こういう中で認可への道は棘の道と思えるのですが、どのようにお考えかお尋ねいたします。
 (答)市町村保育所設置計画は、待機児童数が重要な要素ではありますが、就学前児童数や保育所入所需要等を総合的に勘案して策定され、県はそれをもとに認可することとなっています。
基準を満たしている認可外保育所につきましては、公的負担による運営費の導入が安定的な保育を実現し、入所児童の一層の処遇向上が見込まれることから、県としましては、当該市町村や保育所設置主体の意向も尊重しながら、認可保育所への移行について助言してまいります。

 このたび、東京都では認証保育制度をスタートさせたとのこと。本県と東京都とは条件も全く違うわけですので、そのまま当てはめることはできませんが、入所児童に対する一層の処遇向上のために、運営費補助に関する考え方、精神には学ぶべきものがあるのではないかと思います。
子育て支援という中で大きな役割を果たしている認可外保育所に対する支援の現状と、今後の考え方についてお尋ねいたします。
 (答)認可外保育所の支援については、事業所内保育所を除いて、国の指導監督基準に適合し、概ね10人以上の児童が入所している認可外保育所に対して、児童の健康診断や衛生管理の向上等に要する経費を、県単独で助成しているところであります。
今後の考え方についてでありますが、市町村が認可外保育所に対して、図書、玩具、遊具の経費を助成する場合などには、子育ての多様なニーズに対応するため本年度創設した、「しまね子育て支援推進補助金」により支援してまいりたいと考えています。

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