2002年6月定例議会一般質問、答弁
 今議会では、島根県の最大の課題の一つである産業構造の転換と新産業の振興、そのための一つの柱である企業誘致を中心に据えて一般質問に取り組みました。
 ムーディーズ・インベスターズ・サービスが日本の円建て国債の格付けを2段階下げ、日本中が是非をめぐっての論議でヒートアップしています。私は今後5年間くらいが一つの山であると考えていますが、政府の舵取りによっては国債の価値の下落、金利上昇によって財政運営が破綻してしまう局面もあるかもしれないとの危惧を抱いています。そんな問題意識もあって、乗り越える一つの柱は産業振興との思いでこの問題を取り上げました。
 本文中、アンダーラインの個所は特に力を入れたい部分であり、結果が出るような取り組みを私個人としてもしていきたいと考えています。
 また、このホームページにもUPしていますが、ブルージュの印象が強烈でしたので、その印象を基に島根観光の拠点、松江の町のグレードアップについて提言いたしました。
 最後の公正取引について、予想通りの返答しか返ってきませんでしたが、余りにお寒い答弁に鳥肌が立つ思いでした。
 例によって、この文字色は知事答弁です。
【質問項目】
1.企業誘致について
2.観光振興と交通政策、都市計画について
3.公正取引について
 第1の質問は、企業誘致についてであります。
先ごろ、S&Pの格下げに続いてムーディーズ・インベスターズ・サービスが日本の円建て国債の格付けを2段階下げると発表しました。これで、ベルギーやイタリアはもちろん、チリやボツワナよりも低い最上位から6番目の「A2」となったのであります。
 格付けの水準が妥当かどうかはさまざまな議論がありますが、日本の国債発行残高は本年度末で400兆円を突破。地方の借金も合わせた公的債務残高は693兆円となり、国内総生産(GDP)の1.4倍となります。格付けが「A1」だった90年代前半のイタリアでさえ債務残高はGDPの約1.2倍、財政と貿易の「双子の赤字」に苦しんだ80年代の米国はGDP比6割程度で、その突出振りは類を見ないものであります。また、日本道路公団、国民金融公庫等の特殊法人が抱えている債務などを加えると、総額では既に1000兆円を超えていると言われます。更に、銀行の不良債権や財政投融資の焦げ付きなども考慮すれば、潜在的な政府債務はさらに膨らむとする見方が一般的です。
 私の知る経済アナリストは、日本政府は公的債務の問題をどのような方法で解決できるのかについて、@インフレーシヨン(年率20%〜100%)を引き起こし、公的債務の目減りを行なう。個人債務の負担も減少するが、年金、預貯金も目減りし国民は生活が窮乏し、財産も失うことになる。A消費税を中心とした増税(消費税は30%〜40%)。この策は、国民の反対が激しく非常に困難な方法であり、政権交替を覚悟しなければ実施できない。B預貯金封鎖を実施して、その何割かを没収する。この方法は、昭和21年にインフレ一ションを抑えるために実施され、預貯金封鎖と新円切換により国民は財産を失なうこととなった。最も激烈な政策であり可能性は低いが、有り得るかも知れない。事前に知らされない為、多くの国民が財産を失うこととなるとし、@の可能性が一番高いと思われるとのリポートを送ってきました。
 また、今後の日本経済について、数年以内にハイパーインフレが発生する可能性が高い。そして、経済が壊滅的な打撃を受けてから初めて根本的な構造改革が始まるのではないかと思われる。なぜなら、日本はよほど酷くならないと、反対勢力を抑えて改革を進めることができないからである。これも、日本が歴史的に安全な国であったことによる危機意識の少なさが原因であるとしています。
 こうした見方を、日本人特有の自虐的悲観論と退けるのは簡単ですが、海外からみれば、日本の財政は危機的、しかも改善への説得力ある方針はないと映るのは残念ながらやむを得ないことであり、格下げは当然の帰結と思うのであります。わが国としてはこれを警告として受け止め、プライマリ―・バランス達成への道筋を早急に示すことができなければ、前述の指摘への反論足りえないと考えます。
 プライマリ―・バランス達成への道筋は、景気回復によって経済の安定的成長を確保し、歳出削減、増税を組み合わせて強力に実行する以外にないことは自明であり、当然それは政府だけで行なうものではなく、地方自治体も取り組むべき大きな課題であります。
 現在、本県においても行財政改革への取り組みが始まっていますが、まだ道半ばです。
 日本の円建て国債格下げに象徴される公的債務問題解決に対する知事の所見と、より強力な行財政改革への決意をお尋ねいたします。
 三島議員のご質問にお答えします。
 まず、公的債務問題と行財政改革についてであります。
 本年一月に閣議決定された「構造改革と経済財政の中期展望」では、この一両年の集中調整期間において、デフレの克服を最重要の課題とし、財政構造改革、規制改革、不良債権処理等を促進することが明確にされております。
 そして、財政運営については、厳しい経済財政状況を踏まえ、「期間中の政府の大きさは、現在の水準を上回らない程度とすることを目指す」という基本方針の下、公共投資等主要歳出を中心にして質的改善と歳出抑制に徹底して取り組み、2010年代初頭には、国債の発行額を償還額以下とする、いわゆるプライマリーバランスの黒字化の展望が示されており、わが国の公的債務問題は、こうした道筋を確実なものにしていくことにより解決されるものと期待しております。
 一方、地方財政も、我が国経済の厳しい状況を反映して地方税収等が低迷し、また、数次の景気対策による公共事業の追加等により借入金残高が急増しており、それぞれの地方団体が徹底した行財政改革に取り組み、財政の健全化に努めていく必要があります。
 本県の財政状況につきましても、今後五年間の財政見通しなどによると、一段と厳しさを増していく状況にあり、特に、収支不足の最大の要因である公債費の増こうを抑制するためには、県債の発行額を大幅に縮小していくことが肝要であり、これまでと同じ水準で公共投資を続けていくことは極めて厳しい状況にあると認識しております。
 今後は、これまで以上に厳正な財政運営を行っていく必要があると考えており、公共投資については、より一層重点的・効率的な予算配分に徹する一方、これまでに蓄積された社会資本を活かした、政策効果の高いソフト施策を積極的に展開してまいりたいと考えています。
 公共事業が最大の産業と言われる本県にあって、以前から産業構造の転換が叫ばれ続けて参りました。
 産業構造の転換、新産業の創出、育成は、厳しい本県財政の安定的運営を目指す上でも大きな課題であることは県民共通の認識であります。そのため、以前より誘致企業団地設置にも取り組まれ、その切り札とも言えるソフトビジネスパークも県民の大きな期待をになって昨年完成いたしました。
 ソフトビジネスパークへの企業誘致は、明るい話題も報告されていますが、企業誘致を取り巻く環境が一段と厳しさを増す中、交通の利便性などの条件の悪い本県にとって、誘致活動は非常な苦戦を強いられているのではないかと想像しています。
 こうした研究開発型工業団地は、中国5県を見ても広島県の2箇所を始め、各県に設置されているように、全国各地に設置され、各県が企業立地優遇制度などの支援策の充実や誘致活動に凌ぎを削っています。
 ソフトビジネスパークへの企業誘致について、アピールポイントは何なのかを改めてお尋ねするとともに、どのような差別化を図って取り組まれているのか、また、計数化はできないでしょうが、その優位性について、全国各地にある研究開発型工業団地の中で、客観的に見てどのあたりに位置すると考えられているのかお尋ねいたします。
 初めに「ソフトビジネスパークのアピールポイントと、全国の同様な団地の中での位置についてお答えします。
 ソフトビジネスパークは、研究開発型企業、ソフト系企業、試験研究機関などの集積を図り、県内産業の高度化と新産業の創出を目的として整備したものであります。
 このため、次のような点をアピールポイントとして、誘致活動を展開しているところです。
 第一に、県庁所在地の松江市の中心市街地に近接していることです。市内の主要施設はおおむね3キロメートルの範囲内にあります。
 第二には、優れた研究開発環境を備えていることです。新技術の開発や技術支援を行う産業技術センターを整備するとともに、企業の研究開発や市場開拓を支援し、人材育成を、行うなど総合的なゴーディネートを担うしまね産業振興財団があります。また未利用特許の導入や研究機関・大学が有する特許の地域産業への移転推進を業務とする知的所有権センター及び県内外の企業との共同研究で多くの実績がある島根大学地域共同研究センター等、産・学・官が連携した技術開発の体制が整っております。
 第三には、高速情報通信網の充実であります。パーク内LANを整備したことと、それを利用してギガビットネットワークに無償でアクセスできることであり、国内外の企業と交流が可能であることであります。
 第四には、創業支援のためのインキュベートルームやレンタルオフィスを用意しており、新たに企業を起こそうとする人たちに便利な施設となっております。
 第五には、土地リース制度や、割賦分譲を初めとした各種補助制度など全国有数の充実した優遇制度を用意していることです。
 全国でも同様な団地が多数ある中で、最も新しい団地であり、そのため産学官の連携の仕組みや情報関連の設備などが一周遅れであるが、経済産業省からは時代にマッチしたトップランナーとの高い評価を得ております。今後とも研究開発環境や優遇制度をさらに充実させることなどによって、より優位性のある団地,づくりを目指して行く考えです。
 誘致活動については、今年から更にスタッフを拡充するとともに、地元出身の企業家にアドバイザーとなって貰うなど、積極的に取り組まれております。
 今までの誘致実績を見ても明らかなように、地元との強力なパイプが不可欠であり、県民の施設への理解、賛同、協力が最大の武器になるものと思います。地元の人々の口コミは強力な広報媒体であり、出張や旅行の折に、様々なカタチでソフトビジネスパークを宣伝して貰うことが必要と考えます。現在もさまざまな取り組みが行なわれておりますが、まだまだ周知度、理解度が低いのではないかと思えます。
 取り組みの現状をお尋ねするとともに、今後の取り組みについて考え方をお尋ねいたします。また、広報ということでは、パブリシティの強化が必要と考えますが、現状と今後の取り組みについてお尋ねいたします。
 次に、誘致活動の現状と今後の取り組みについてであります。
 企業誘致活動は、東京・大阪・広島・九州の各出先事務所の情報をもとに、企業訪問による売り込みを基本としています。これに加え、東京、大阪などで毎年開催している企業立地説明会で、知事を先頭に島根県の宣伝活動を行っております。また、企業活動に精通した企業人にアドバイザーを委嘱しており、企業の立地動向の情報を寄せていただいて、企業訪問を進めているところです。特に、ソフト系企業については、専門のコンサルタントに委託して、関係企業への売り込みや、現地案内を咋年度から続けているところです。
 今後もこれらの取り組みを充実させるとともに、今年度からは民間企業のOBを企業誘致専門員に委嘱し、活きた情報の入手に努めるなど誘致活動を一強化していくことにしています。
 さらに、市町村を構成員とする企業誘致対策協議会の協力も得つつ、PRの徹底をしていきたいと考えています。
 次に「パブリシティの現状と今後の取り組みについてお答えします。
 ソフトビジネスパークにつきましては、昨年10月のオープン以来、各種イベントなどを通じて企業や県民への周知に努めているところであります。またインターネットやパンフレットを通じて全国に紹介しており、さらに、県内外の多くの企業関係者にも現地を視察していただいております。しかし、一方で「知る人ぞ知る」のみとの指摘をいただいていることもあり、企業関係者はもとより県民に広く理解していただくためにも、引き続き、メディアを活用するなど、機会あるごとに周知していく考えてあります。
 先日、ソフトビジネスパークで初めて外資系企業のレンタルオフィスへの進出が決まり、アメリカ人の社長は加賀に住居を構えたとのことです。
 世界の、特に欧米のベンチャー企業にとって、日本はアジアの中でも最もビジネスチャンスに恵まれた魅力ある市場であると思いまが、過去の実績を見ると、東京を中心とした首都圏への進出が殆どを占めています。
 情報化が急速に進み、世界との距離がなくなってきましたが、私の知りあいでどこに行くにもパソコンを片時も放さず、一日中パソコンの前に座り、世界中とメール交換をしながらビジネスを進めている企業家がいます。
 また、先日、ベルギーへ行く機会がありました。ブルージュ市の近くの人口3000人の田舎の村に、大型映像機器などを専門に扱う世界でも3本の指に入る企業が世界中を相手に事業展開をしていました。
 ビジネスコストの面で優位性があり、豊な自然と住環境などに更に磨きをかけることができれば、外資系企業のソフトビジネスパークへの誘致は、ある意味では日本企業の誘致よりハードルを低くもできるのではないかとも思えるのです。
 外資系企業誘致については、島根県外資系企業誘致戦略研究会から報告書が提出されています。非常に良くまとまっており、すぐにでも誘致ができそうですが、具体的戦略構想に欠けているのではないかとの印象を受けました。
 この報告書を受けて、県の具体的戦略構築はどのようになっているのか、また、外資系企業誘致の具体的取り組み状況をお尋ねいたします。
 次に、外資系企業の誘致に関する県の具体的戦略の構築と具体的取組状況についてお答えします。
 経済のグローバル化や情報化が進む中で、中国での市場経済の導入や国内企業の生産拠点の海外シフトが活発化するなど、企業活動の範囲が拡大しており、本県の地域経済を展望する上でも、アジアや海外との関係は欠かせないものとなっております。
 「島根県外資系企業誘致戦略研究会」の報告書は、平成十二年十月に、日本貿易振興会(ジェトロ)の協力を得て、県内企業関係者などの有識者からなる研究会を設置し、外資系企業の戦略的な誘致のあり方についてとりまとめたものであります。
 外資系企業の誘致に関しては、本県の誘致活動の重点分野の一つと位置付けているところでありますが、報告書にありますように、本県にとって定住につながる新たな雇用の創出が重要であること、また、二十一世紀に新たな経済の発展性を秘めた北東アジア経済圏の一員として、経済交流を促進することにより県土の発展を推進していく必要があると考えます。
 こうした取組を進めるに当たり、産学官の連携や新産業の創出、情報化の推進、人材の育成、質の高い生活環境の充実などが重要でありますが、議員のご提案を伺いましたので、ケースバイケースで個々の対応を具体的に検討していく必要があると感じております。
 なお、報告書の提言を踏まえた具体的な取組として、平成十三年八月に、県立大学と上海交通大学との学術交流に併せて、この研究会のメンバーにより、上海のIT関連企業の集積する団地の視察を行うとともに、ジェトロ上海の協力を得て、上海の企業を対象に島根県の企業立地セミナーを開催いたしました。
 一方、ジェトロ及び中国経済産業局等との連携により、平成十三年十一月に「対日投資促進招へい事業」(「ITビジネス国際会議イン島根」)を開催し、欧米・アジアから情報通信関連企業十二杜を招へいして、本県の立地環境の説明、企業のプレゼンテーション、県内企業等とのビジネスミーティングを実施いたしました。
 さらに、加工流通関連の分野では、ジェトロを中心に、平成十二、十三年度に取り組まれた「ミニLL事業(ミニ・ローカル・トウ・口―カル産業交流事業)」に参画し、中国寧夏回族自治区との交流を通して、寧夏ワインの生産技術指導と輸入促進を図るとともに、浜田市と韓国釜山市及び周辺地域との交流を通して、日韓共同事業として、イチジク及び魚類等の飼料強化剤(ブルーミン)の輸入の可能性等について検討を進めているところであります。
 こうした取組の中で、具体化しつつある案件もあり、今後は、このような案件が外資系企業の立地に結びつけられるよう努めてまいりたいと考えております。
 企業を取り巻く環境は一段とグローバル化に向かって進展しており、外資系企業の誘致の機会は高まってくると思われますので、国内企業の誘致促進と県内企業の投資の促進を進めるとともに、この報告書の提言を踏まえ、新たな雇用創出のために、外資系企業の誘致にも積極的に取り組むとともに、県立大学等の協力も得ながら、本県と地理的に近い韓国や中国など、北東アジア経済圏との人的、経済的交流を重ねる中で、本県への外資系企業の誘致を実現したいと考えております。
 外資系と言っても、所詮は人脈によって、つながりを構築し誘致するしかないと思います。外部の人材を求めてチームを作り、戦略的に外資系企業誘致に取り組むべきと考えますが、そういう積極的戦略を進める考えがないかお尋ねいたします。
 次に、外部の人材を活用した戦略的な外資系企業誘致活動についてであります。
 企業を誘致する場合、企業の立地動向を素早く入手し、企業の担当者に島根県のPRを具体的に行い、島根県を理解していただくことが重要であります。そのためには、企業や企業の担当者を紹介していただける人脈が誘致成功への大きな足がかりになります。
 本県の誘致活動におきましては、これまでにも県出身者のリストを作成して精力的に訪問したり、あるいは本県にゆかりのある企業人に企業振興アドバイザーになっていただいたり、あるいは、今年度から新たに「企業誘致専門員」を設置するなど、人脈を活用した企業の誘致に努めているところであります。
 また、外資系企業の誘致につきましては、議員ご紹介の提言事例にありますように、外資系企業が進出する際の判断基準が種々あることを示唆いただきましたので、御指摘のような事例に対して具体的な検討をしなければならないと感じております。
 また、本県への外資系企業の誘致は、外部人材の知恵や協力がないと難しい側面があると考えられますので、こうした取組を積極的に進めて行くべきであると考えます。
 米国の永住権を持ち、商事会社の現地法人で仕事をしてきた私の友人は、外資系企業が進出する際の判断基準について、コストの低減、高速情報インフラの完備、優遇制度の有無、容易な人材の確保、利便性、居住及び教育環境をあげていました。
 最初の、コスト低減については、現在、東京の方では、不況の為人件費がどんどん下がり、事務所のリース料も安くなっており、松江の人件費および事務所費用が東京と比べ余り違わなくなっている。何らかの支援を県が考えないと松江の優位性が見出せない。
 高速情報インフラの完備については、ソフトビジネスパークは通信が無償または援助があるため競争力があるが、全ての進出企業に長期にわたって適用されるかどうか?また適用されない場合、コストが都会に比べ割高になっていないか?
 優遇制度の有無については、海外の超優良会社が最初から島根県に進出するとは考えられない。また東京にある優良ベンチャー会社が松江へ来るとも考えられない。とすると、海外の中堅会社が考えられるが、中堅会社が何億ものお金を松江に持ち込み事業を展開するとは考えられない。そこで必要となるのは外資系企業に対する優遇制度の構築である。優遇制度とは税金を多少安くするとか、土地購入代を補助するとかではなく、一番のネックとなる資金調達に対して県側がサポートすることがホシである。
 利便性については、東京―島根間の飛行機代が異常に高く、人の頻繁な出入りは不可能に近いとの見方をしています。事実、米国への往復運賃が6万円であるのに対し、普通運賃の往復が54000円、6回回数チケットでも42600円であります。これは、外資系のみならず、日本企業にとっても大きなリスクであります。
 住宅と教育では、グレードの高い住環境が必要であり、日本語のできない外国人への語学教育や、学校教育における子弟へのサポート体制の整備も課題と指摘していました。
 最初に述べた理由から、新産業の創出、育成、企業誘致にもっと思い切って予算と人をシフトさせなければならない時と考えます。知事の基本的な考え方をおたずねするとともに、企業誘致に対する支援制度の拡充と外資系企業に対する支援の考え方、出雲空港への他航空会社乗り入れ誘致など、航空運賃引き下げ策に対する考え方、教育への支援体制構築に対する考え方をお尋ねいたします。
 次に、新産業の創出、育成、企業誘致についてお答えいたします。
 私はかねてより、意欲と創造性に満ちた産業活動の展開こそ、明日の島根を築く基盤であると考えております。
 こうしたことから、本県産業の高度化と創造的発展、高度情報化への対応を図るという目的のもとに、研究開発型企業やソフト産業などが集積する一大産業拠点を目指してソフトビジネスパークを建設したところであります。
 このパークは、産業技術センター、島根大学地域共同研究センター、知的所有権センターを一ヶ所に集積させ、しまね産業振興財団を中心に新産業創出のための各段階に応じた支援制度を用意したほか、光ファイバーによるランネットワークや通信費助成等のIT産業の立地環境なども整備してきたところであります。
 今後このソフトビジネスパークを県内産業全体の牽引役として、その魅力により磨きをかけ、本県における新産業の創出や研究開発型企業等の育成・誘致に全力を傾注して参りたいと考えております。
 次に、航空運賃などについてでありますが、議員ご紹介の事例にありますように、航空運賃に関しましては国内企業と同様に、外資系企業にとっても企業活動を進める上で課題であると考えられますので、外資系企業の本県への誘致を推進するために、航空運賃や教育環境などさまざまな点に関して、具体的な対策を講じるよう努めてまいりたいと考えております。
 最後に、厳しい環境の中であり、誘致企業団地が売れ残って行けば県のリスクも膨らんでくることになり、他用途転用などの考え方も出てきそうに思えるのですが、考え方を伺っておきます。
 次に、他用途転用の考え方についてお答えします。
 それぞれの工業団地で誘致対象業種を定めておりますが、これ以外の業種であっても立地可能性の高いものがあれぱ、柔軟に対応して参りたいと考えております。
 工業団地への企業立地については、十三年度に導入した土地リース制度や、今年度新たに制定した企業立地促進助成金の臨時的緩和、工業団地の土地補助金の要件緩和などの優遇制度や、新たな立地促進策の検討を通じて、一層積極的な企業誘致に取り組むこととしております。まずは工業団地としての分譲を進めていきたいと考えております。
 第2の質問は、観光振興と交通政策、都市計画についてであります。
 今月初め、ベルギーのブルージュという観光で蘇生した町に行ってきました。
 ベルギーへの直行便がないということで、行きがけにロンドンで少し時間を取りましたが、折りしも女王陛下即位50周年記念行事の最中で、夜にはポール・マッカートニー、エリック・クラプトン、クイーンズ、トム・ジョーンズ、エルトン・ジョンなど、イギリス中のビッグアーチストが総出演しての大コンサートがバッキンガムであるとのことで、行ってみると宮殿の中に1箇所と、前庭に2箇所の巨大なステージが設置してあり、回りの庭園のそこここに巨大モニターが設置してありました。前日から泊り込んでいるテント住まいの人もあり、たくさんの人が本番の夜7時をひたすら待っていました。
 何というお国柄の違いか、ステージもモニターも、日本で言えば皇居の中。お堅いと思っていた英国人の頭の柔軟さに感じ入りましたが、更なる驚きは、クイーンズでした。
 バッキンガム宮殿の屋上がステージに早変わりし、エレキギターの強烈な響きとギタリストの個性あふれるパフォーマンスが中継されていました。
 松江市では、カラコロ広場でのサッカー放映が1回の騒ぎで中止されました。日本対チュニジア戦の最中、たまたま松江駅の近くにいましたが、松江駅の周辺には観戦するところはどこにもありませんでした。韓国の勢いにはただただ脱帽する思いですが、何か冷め切ってしまっている日本の国と国民を象徴的に感じました。
 さて、ブルージュですが、13、14世紀にはハンザ同盟の交易の拠点として栄えた都市で、中世のヨーロッパがそのまま残り、天井のない博物館とも称されています。
 ほとんどの建物はレンガ造りで、名物は階段状破風、まさにお菓子の家が連らなっているといった感じです。当然電柱はありません、しかも、日本の地中化のように歩道ににょきりと出た箱もありません。市内の運河では観光クルーズも行なわれ、絵画などの美術品や文化遺産の蓄積もそこここにあります。
 ここでは、古い家並みをどこまでも守ろうとする執念とこだわりは勿論ですが、交通対策と観光対策に感心致しました。
 古い町並みという制約があることもありますが、旧市内にはほとんど駐車場はありませんし、あっても料金が高い。その代わり周辺には低料金の駐車場が設置され、無料のシャトルバスが運行されていました。しかも、しっかり作戦を練った交通規制で旧市街地を横断することはできず、車の通行できるメインの通りは侵入した道路の近くに出てしまう仕掛けで、ほとんどの道路は自転車、バイク、人専用で、その道路にも一方通行があり、考え方は完全に人中心の街づくりがされていました。
 観光行政で驚いたのは、人口12万人余りの町なのに観光局の職員数が50人、観光局長は毎年必ず日本のエージェントなどに営業に来るとのことでした。
 先日の山陰中央新報の明窓にも堀川めぐりの素晴らしさが讃えられていました。椿谷と塩見縄手を中心とした水と緑のバランスは絶妙で、そこはブルージュの遊覧以上ともいえますが、そこに、建物が加わり、橋が加わり、道路と車が加わるととたんに色褪せて見えます。なるほど、松江市もゆったりと時間は流れており、同じ水の都で文化の息づく町ですが、それ以上にゆったりと時を刻んでいるのがベルギーであり、ブルージュでした。
 山陰を訪れた観光客へのアンケート調査で、一番人気は宍道湖、松江が2位との結果だったそうです。なるほど、島根の自然は素晴らしく、今世紀は恐らくその価値がもっと光り輝くと思いますが、その拠点となるのが宍道湖、松江であり、そのグレードアップが島根県全体の広域観光の行く末を占うことになるのではないかと考えます。
 ある外国人が、松江の町を見てアグリーな町と言ったと聞き、大きなショックを受けたのですが、ブルージュの町を見てむべなるかなと思いました。水のある景観は無量の財産であり誇りですが、外国人観光客をどんどん呼べるような、自身を持って誇れる、語れる街づくりを進めなければと改めてしみじみと思ったのです。
 島根県の観光拠点としての松江市、そのグレードアップのための一つが、大田市の大森のような木造の建物が連譚する街並再生であり、もう一つが人を中心とした交通システムの構築ではないかと考えます。ドーナツ化した中心街への駐車場の整備や道路の拡幅も時には必要かもしれませんが、観光で生きると松江が決め、公共交通へのシフトを図っていけば、今の街路を活かした整備で対応できるのではないかと考えます。そうすれば、そうした投資を公共交通やパークアンドライドのための駐車場整備に回せるはずです。
 松江市の公共交通は30万都市並みの充実度だとのことですが、環境の世紀に、観光で更に光り輝こうとするならば、中心市街地では車を必要としない都市づくりをめざすべきであると思うのです。何れもハードルは低くはありませんが、こだわり続けなければならないと思います。
 もうひとつ、ブリュッセルで一番気に入ったのはイロ・サクレ地区でした。およそ200メートルにわたってレストランやバー、カフェが道の両側に連なっています。勿論すべてオープンテラス式、人がすれ違うのがやっとで、呼び込みや絶えず行き交う人々の喧騒の中ですが、オープンテラスというのは本当に時間がゆっくりと流れます。日本にも屋台がありましたし、時代劇に出てくる峠の茶屋は必ずオープンテラスです。
 国土交通省では、今年度からオープンカフェなどに道路の一部を開放する試みを開始しましたが、なかなか厳しい制約があるようです。規制をかけるばかりではなく、街づくりの中にもっと積極的に取り入れる工夫が必要と思います。
 松江市の観光を滞在型にするひとつの武器になりうるのではないでしょうか。カラコロ広場もありますが、例えば、片原町の堀沿いを進入禁止にしてテラス街を形成するとかもっと拡大に取り組むべきと思います。
 街づくりの中心は市町村であり、そこに住む住民であることは十分承知していますが、島根県観光の拠点という現実もありますし、折りしも、大橋川拡幅にともなう中心市街地再生という絶好の機会であります。県としても積極的に県都松江のグレードアップに関与して欲しいものと思います。
 松江市住民の一人である澄田知事に、世界に誇れる、世界でも一流の松江市へステップアップするための夢と思いをお尋ねいたします。
 松江市のまちづくりに関する夢と思いについてであります。
 松江市は、水の都と称され、宍道湖を代表とする美しい景観と古い伝統文化が共存し、落ち着いた街並みを有する国際文化観光都市として、発展してまいりました。
 しかしながら、モータリーゼーションの進展に伴い中心市街地での交通渋滞や商店街の空洞化が進むなど様々な課題が生じております。
私は、県都松江市が、これらの課題を克服し、名実ともに「国際文化観光都市」として、さらに飛躍していくことは、県勢発展のためにも、重要なことであり、将来、国内外の観光客が街角にあふれ賑わう姿を思い描いております。
 そのためには、豊富な歴史的文化量産の保存・活用はもとより、観光施設のさらなる充実、またそれらを結ぶ交通ネットワークの充実が肝要であると考えております。
 たとえば、県では、芸術文化の拠点施設として県立美術館を整備いたしましたが、併せて、松江市においても、ティファニー庭園美術館やフォーゲルパークなど積極的に観光文化施設の整備を進められ、それらの観光施設を結ぶ周遊バスを整備されております。
 また、県では、すっきりとした景観とするため、電線地中化を促進するほか、宍道湖大橋の建設においても、景観に配慮した設計を行っております。
こうしたことなどから、ここ数年松江市への観光客入り込み数は順調に増加し、昨年は五百万人を超えたところであります。
 また、私も、この四月下旬にヨーロッパを訪問いたしましたが、ドイツの元鉱山町であるゴスラー市では、鉱山跡とともに街並みが中世の建物のまま、保存復元され、それが多くの観光客を引きつけ地域振興に結びついている様子を見てまいりましたいこれも、古い伝統文化を持つ松江市の今後を考える上で参考になると感じたところであります。
 いずれにいたしましても、松江市のまちづくりにつきましては、第一義的には、地元松江市において、総合的に検討されることが必要であると考えておりますが、県といたしましても、そのような取り組みに、積極的に支援してまいりたいと考えております。
 最後の質問は、公正取引についてであります。
 先ごろ、ある生コン会社を設立した方から、骨材の調達がままならずとても困っているとの相談がありました。
 さまざまな障害を乗り越えて、やっと操業を開始したものの、運送業者による骨材の納入が、1日、2日は入っても、突然に骨材製造業者から以後売れないと断られる。運送業者、骨材製造業者を変えてもその繰り返しとのこと。売ることを拒否される製品は生コン用の骨材だけで、路盤材などはいくらでも納入してくれるとのことです。その他の資材調達や運搬車両についても同様の状況で、業界からの圧力がかかっていると思われるとのことです。
 公正取引委員会へは相談しているが、少し時間がかかるようであり、当面の事業が行なっていける方法はないかというものでした。
 島根県の生コン単価は全国的に見ると最高値に近く、鳥取県とほぼ変わらないものの、岡山、広島の1.5倍程度となっています。その方の話では、島根県でも少なくとも2割は簡単に単価が落とせるとのことです。
 また、生コンの各業者間では出荷調整が行なわれ、定量になると他の業者に回されるため、生コンをプラントまで取りに行くような零細業者は、近くにプラントがあってもわざわざ遠くのプラントまで行かなければならないことも度々と言われています。
 生コンは性質上遠方からの運搬は出来ません。まさに、地域でカルテルを形成するにはおあつらえ向きの製品と言えます。
 こうした姿が本当であれば、公共工事の効率化を進める県にとってゆゆしきことと考えます。また、産業振興を進める上でもこうした風土を変えていく努力が必要と思います。
 県にも相談いたしましたが、法的権限を持たない県としては、動く術は何もないとのことでした。また、こうした事例は民間ではよくあるとのことでした。
 自由で公正な商取引を犯すこうした業界のあり方と、公共工事の効率化にも逆行するのではないかと思われるあり方について、県の見解をお尋ねいたします。
 公正で自由な商取引のあり方についてお答えいたします。
 産業振興を進める上では、企業の創意あふれる事業活動を盛んにするとともに、経済全体の効率的運営の視点から、公正かつ自由な競争環境の実現が必要であり、このため国において独占禁止法等の法整備がなされているところであります。
 ご指摘の事例につきましては、県は判断する立場にございませんが、法で定められた秩序の中で各企業が自由に力を発揮する事が、経済全体の発展につながるものと考えております。
 生コン業界のあり方に関して公共工事の関連についてお答えします。
 民間企業間の商取引について、公共工事発注者としては関与する立場にはありませんが、生コンなどの資材単価につきましては年二回、県独自で実施する市場調査に基づき、国土交通省が実租する調査結果も参考にして、単価を設定しております。
 今後とも、適正な資材単価の設定やコストの縮減を図り、公共工事の効率化に努めていきたいと考えております。
 再質問(要望) 最近会ったあるベンチャー企業の社長が、産官学の体制も含めた県などの支援体制について、最後まで一緒に死ぬ気になって面倒は見てくれない、所詮はお役人で、一番支援が必要なときにはいなくなってしまうと言っていました。また、人事で人が変わると話し合いで積み上げてできるはずだったことが、できなくなってしまうとも。
 県や振興財団だけで新産業の創出、育成ができる訳ではありませんが、少なくともそういうお役人根性を一歩脱皮した真剣さがなければ、島根県の産業構造転換は絵空事に終わってしまうのではないかと懸念を致します。
 先程の公正取引の問題にしても、話はよくわかるのですが、現実に苦しんでいる県民がある。それに対して杓子定規な対応しか出来ないところに、むなしい思いを感じるのは私一人ではないと思います。県が話を真剣に聞いてくれる、それだけでも当事者にとってはありがたいことと思うのですが。
 昨日、原議員の指摘にもありましたが、今本当に意識変革が必要なときと考えます。お役人根性を一歩脱皮した取り組みを要望いたします。