2004年12月議会一問一答 2005/3/20
1.通級指導教室について
2.小規模高校と問題のある生徒達への対応について
質疑内容は下記の通りです。それぞれ文字色で私の質問、知事答弁関係部長・教育長答弁がわかるようになっています。
 最初に通級指導教室についてであります。
 先日、松江市立内中原小学校に通学している児童の親御さんから相談を受けました。
自分の子どもが指導を受けている通級指導教室が、新築される母衣小学校に変わるらしい。何とか充実する方向で内中原小学校も存続ができないだろうかというものでした。
 通級指導教室は、言語障害、情緒障害、弱視、難聴などの障害のある児童生徒のうち比較的軽度の障害のある児童生徒に対して、各教科等の指導は通常の学級で行いながら、障害に応じた特別の指導を通級指導教室で行うものであります。
 最初に、県内で通級指導教室の対象となる児童生徒の数と教室の現状をお尋ね致します。また、担当する教員は、加配として措置されると聞いていますが、加配の基準によって配置されるべき人員と配置の現状についてお尋ね致します。
 通級指導教室での指導を必要とする児童生徒数は、今年度五月一目の調査によりますと、小学生二百八十人、中学生三十二二人の計四百上二人であります。
 また、今年度、県内の小中学校には、小学校二十一校、中学校二校の計二十三校に通級指導教室を設置しております。
 通級指導教室を担当する教員の配置については、国の配置基準が明確ではありませんが、予算積算上の考え方は、一人の教員が指導を担当する児童生徒数は概ね十人、指導時間数は、週当たり二十四時間となっております。
 通級指導教室の指導を必要とする児童生徒数は、先ほど申し上げましたように小中学校合わせて四百十三人ですので、一人の教員が指導する児童生徒数を十人としますと約四十一人の教員の配置が必要となりますが、指導時間数で積算しますと、指導時間数の合計は、週当たり七百四十時間でありますので、一人の教員が指導する時間数を二十四時間としますと約三十一人の教員の配置になります。
 現在本県では、国の定数として三十一人、県単措置で三人、計三十四人の教員を配置しております。
 各学校によって指導時間数の差違はありますが、本県の地理的状況を勘案し、指導を必要とする児童生徒数が少ない地域にも通級指導教室を開設し、教員を配置しているところです。
 私は、相談を受けてから市内の2つの小学校に開設されている通級指導教室にお邪魔しました。そこでのお話では、さまざまな課題があるようでありますので、そうした課題について、順次お尋ねしたいと思います。
 先程のお話では、県全体として見れば加配基準による人数と実際の加配数はほぼ見合っているが、対象の少ない学校もあり、数では基準を超える学校もあるとのことです。
 また、障害のある児童への指導はなるべく早いほうが良いということから、幼稚園児や保育園児、請われれば中学生やそれ以外の皆さんにも指導を行っています。
 昨年度の要覧ですが、内中原小学校では、小学生27名、幼稚園児等8名、中学生等2名の計37名、時数では小学生41時間、内巡回が7時間、園児等で18時間となっています。これに対して配置されている教員は2名です。加配の基準は小学生のみが対象ですので、時数的には見合った数ですが、実際の指導対象人数は倍以上、時数的にも相当厳しい内容であります。
 学校教育法により定められた教育課程は、障害に応じた特別の指導は週1時間から週3時間が標準とされ、それ以外に教科の内容を補充するための特別の指導を行う場合は、週8時間以内と定められています。
 また、巡回指導を行う際の移動時間は考慮されておらず、松江市内でも15分とか20分とかの移動時間が実際の指導時間に食い込んでくることになります。来年は合併に伴い八束郡もエリアに入ることとなり、現場は大変だという認識をお持ちです。中山間地の学校では更に厳しいものがあるものと思います。
 ですから、個々の児童が必要とする特別指導に対して、充足度を低く抑えざるを得ない現状があるのではないかと思うのであります。
 幸い、内中原小学校では、市が単独で教員免許を持つ嘱託1人とスクールサポーター1人を配置しており、さまざまな場面で機動的な対応ができて助かっているとのことでしたが、実際の指導は正規に配置された教員が担っています。
 また、松江市では幼稚園3園に特別支援幼児教室が設置され、こうした幼児への指導に当たっていますので、通級指導教室の負担は相当軽減されているのではないでしょうか。
 そこで、個々の児童が必要とする特別指導に対する充足度の現状をどのように評価していらっしゃるかお尋ね致します。また、要請があれば指導はするが、特に案内などされていない八束郡のような空白地域の現状と、合併を踏まえた教室配置の考え方、2校しかない中学校の教室へのニーズと考え方、松江市のような幼児教室設置を市町村に要請し進めていくことについて、三位一体改革の中で教育の自由度を高めようとする大きな流れがあり、中教審において特別支援教育全般にわたって検討されている中ですが、わが県の特別支援教育全般に亘る基本的な考え方と併せてお尋ね致します。
 現在、通級指導を希望する小中学校の児童生徒に対する教室の数は、県全体では一応充足するよう努めているところではありますが、本県の通級指導教室の多くが、沿線部の学校に設置されていることから、未設置の地域へは、小中学校や聾学校の通級指導教室の教員が学校に訪問して指導する「巡回指導」により対応しております。
 しかし、通級指導を希望する児童生徒が増加したり、市町村合併によって、巡回して指導しなければならない地域が広範囲になったりといった地域の実情の変化が予想され、十分な指導時間が確保できにくくなる教室が生じてくる可能性があります。現在、国に対して定数増を要求しているところです。
 現在、国におきましては、特別支援教育推進のための制度の見直しについて検討されているところであります。
 本県におきましては、今年八月に「しまね特別支援教育プラン検討委員会」を設置し、小中学校におけるLD、ADHD等の障害を含め、障害のある児童生徒に対する望ましい特別支援教育の在り方等について、鋭意検討しております。
 この検討委員会は、来年三月を目途に基本的な方向性をまとめて頂くことにしておりますが、これを踏まえ、地域の特性を生かした島根県らしい特別支援教育が、今まで以上に充実するよう努力してまいります。
 通級指-導教.室での指導を希望する児童・生徒に対しては、できるだけ地域差が生じないよう、巡回指導を継続すると共に、例えば特殊学級担任が空き時間や放課後等を利用して通級指導の対象となる児童生徒を指導するなど、地域の実情に応じた柔軟な運用について検討していきたいと考えております。
 中学校への教室の設置につきましては、特別支援教育の観点からだけでなく、生徒指導や教科指導等の観点を加え、総合的な,対応が必要であり、今後検討してまいります。
 幼児教室につきましては、現在、松江市において、指導の必要な幼児に対して幼稚園を指定して必要な時間だけ指導を行う地域指定研究事業を行っており、その成果を各市町村教育委員会に報告し、理解・普及に努めたいと考えております。
 次に、内中原小学校で市によって配置された嘱託の先生が単独で指導ができないことについて、教育的ニーズに応じる専門的知識・技能が要求されるため、継続的な経験を積むことや専門的研修が不可欠で、初めての人に任せることはできないとのことでした。
 また、個々それぞれにさまざまなニーズと、それに応じた指導が必要であるが、一人で指導に当たるには限界があるとのことで、エリアで集まって研修する機会はあるものの、実際に児童生徒に接しなければわからないこともあり、一人しか配置されていない教室での問題点が指摘されていました。
 教室へ教員を複数配置することについて考え方をお尋ねいたします。また、専門知識・技能習得のため、研修の充実が不可欠と思います。幅広い人材の育成も含め、研修の充実についてお尋ね致します。
 今年度、通級指導教室を担当する教員を二人以上配置している学校は十校で、一人のみの配置は、十三校であります。
 議員ご指摘のように、担当者が一人配置の場合、巡回指導や研修で校外に出かけると、教室が指導者不在になり、出張がしにくい、児童生徒一人一人のニーズに応じた指導方法を話し合う相手がいないなどの実態もあります。
 県教育委員会といたしましても、担当者を二人以上配置することができれば、通級指導教室での指導をより充実できると考えておりますが、教室を設置している学校の中には、指導が必要な児童生徒数が少なく、指導時間数も少ないところもあり、一律に複数の教員を配置することは、限られた教員定数の中では難しい状況があります。
 また、担当者が一人ずつであっても、より多くの学校に通級指導教室を設置してほしいとの要望もあり、どのような教員配置が適当か、今後の特別支援教育の在り方を含めて、検討を進めているところです。
 特別支援教育に関する専門性の向上を図るうえで、研修は不可欠であると認識しております。
 本県では、現在、特別支援教育研修派遣事業として、国立特殊教育総合研究所や大学、県の教育センター等へ一年や六ケ月或いは、三ケ月といった単位で教員を派遣しております。
 本年度は、一年の研修生六名、六ケ月の研修生六名、三ケ月の研修生五名を派遣しております。
 また、大学院へも教員を派遣するなど専門的な研修の充実に努めているところです。
 一方、児童生徒の障害の状態は多様化する傾向にあり、特別支援教育を担当する教員には、児童生徒の障害の状態に即した幅広い研修が求められております。
 県教育委員会では、幅広いニーズに応じた研修ができるよう、教育センターにおいて、自閉症に関する講座や教育相談に関する講座、心理検査法に関する講座等を開設しております。また、大学の協力を得て、現職の教員が、盲・聾・養護学校の障害種ごとの免許を取得するための講習を実施し、幅広い専門性を持った人材育成に努めております。
 また、通級指導教室の担当者で組織する研究団体が実施する研修会に、指導主事を派遣し、専門的立場から、指導・助言も行っております。
 只今の話ですが、厳しい財政状況の中であり、今でも厳しい研修参加の旅費や巡回指導での旅費確保も更に大変になるだろうと思います。配慮をお願いしたい。
 次に、校務分掌についてでありますが、通級という特殊性から昼休みや、特に放課後が大切な時間帯となるため、管理職や教職員の校務分掌についての理解が欠かせないのでありますが、特に一人しかいないところは苦労されているようです。
 このあたりの管理職などの研修についても特段のご配慮を要望しておきたいと思います。
 最初に触れた、内中原小学校の通級指導教室ですが、母衣小学校の新築に併せてきちっと整備された教室も設置され、来年3月末には移転することになるようであります。
 内中原小学校に在籍しながら、通級でお世話になっている児童や保護者は、あったものがなくなってしまう訳ですので大きな不安がひろがっています。このような児童や保護者の不安をなくすため、県教委としてどのような配慮をしていくお考えかお尋ね致します。
 松江市教育委員会によりますと、母衣小学校校舎改築にあわせ、特別支援教育をより充実するため、設備の整った優れた機能を有する通級指導教室を母衣小学校内に移転開設される予定があると伺っております。
 この場合、通級指導教室がなくなる内中原小学校に対する配慮につきましては、小学校への巡回等による指導を実施するなど、今後とも適切な指導が継続して行われるよう松江市教育委員会に働きかけていきたいと考えております。
 今月3日、自閉症や学習障害(LD)など「発達障害」の早期発見や支援体制について定めた発達障害者支援法が、参院本会議において可決成立致しました。法は、福祉サービスの網からこぼれ落ちていた発達障害の子供らの支援を、国と自治体に初めて義務付けたもので、都道府県に発達障害者支援センターの設置や適切な教育的支援を行うことと定めています。法成立に伴う県の取り組みについて健康福祉部長にお尋ね致します。
 発達障害者の自立及び社会参加に資するよう、その生活全般にわたる支援を図ることを目的として成立した「発達障害者支援法」におきましては、県は発達障害児の早期の発達支援のために必要な体制の整備を行うことや、就労を支援するために必要な体制の整備に努めること、また、「発達障害者支援センター」の設置ができることなどが規定されております。
 この発達障害者への支援は、本県では、これまで知的障害者の療育指導や相談支援事業などの中で対応してきたところでありますが、発達障害には特有のニーズがあることから、新たな支援の枠組みが必要であると認識し、今年度から内部検討を進めているところであります。
 こうした検討をもとに、来年度には「発達障害者支援センター」の設置をはじめとする支援体制の整備に向けて、教育委員会とも連携しながら、有識者による検討委員会を立ち上げるなど、本格的な検討を進めていきたいと考えております。
 この度の法成立に見られるように、ますます取り組みを強化する必要があるのではと思われる通級指導教室など特別支援教育について、知事の思いがあればお聞かせ願います。
 国においては、平成十四年十二月に「障害者基本計画」が閣議決定され、平成十五年三月に「今後の特別支援教育の在り方について」の最終報告がまとめられるなど、障害のある子どもたちへの教育の在り方に新たな方向性が示されております。
 本県においても、この最終報告で示されたように、自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援する視点に立ち、学習障害等も含めた障害のある子ども一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善したり克服したりするために、きめ細かな指導や支援を進めていくことが重要であると考えております。
 このためには、医療・福祉・労働・教育等の関係機関の連携をより一層強め、乳幼児.期から学校卒業後までを見通した指導・支援を行うことが必要であり、今後、これら関係機関による協議会を設置するなど支援体制を強化し、すべての子どもたちが安心して学校生活が過ごせるよう努めていきたいと考えております。
 第2に、小規模高校と問題のある生徒達への対応についてであります。
 先日、新しく船出をした新雲南市の関係者との話の中で、三刀屋高校掛合分校について、地域と密着した学校であると共に、さまざまな問題を持った子供達のよき受け皿となっているなど、特色のある今後の時代にはなくてはならない学校である。県立が無理であれば、市立として残したい、是非協力をとの話がありました。掛合分校については、委員会でも話題になっておりましたが、現場を見ておりませんでしたので、一度見に行こうと思って出かけてきました。
 行ってみると素晴らしい環境の中で、活き活きと学校生活を送る、元気よく挨拶をする生徒達が印象的でした。
 教頭先生からお話を伺いましたが、特に問題のある生徒を受け入れ、特別の指導をしているわけではないが、地元の子供達がそうした生徒を温かく受け入れている、そうした雰囲気がいいのではないかとの話でした。
 私は、問題を抱える生徒達が普通の高校の中で、同じように受け入れられるような学校づくりを進めなければならないと思ってきましたが、一方では、前議会の委員長報告でも触れられた広島の高校、鳥取のようにそうした高校を二つ開校させるなど、多様なニーズを吸収できる学校をきちっと作ろうという流れもあります。また、事実として掛合分校には大規模校にない素晴らしい雰囲気もありました。
 わが県でも定時制と通信制を統合した新設校の構想があり、関係の皆さまからの期待は高いのでありますが、財政問題もあって頓挫したままです。
 さまざまな問題を抱えた高校生の教育の場のあり方について、県としての基本的な考え方をお尋ね致します。
 まず第一には、いずれの高校においても、そうした生徒たちに対し、一層きめ細かな対応を図っていくことが重要であると考えております。
 現在、学習面での対応として、多様な選択科目の設定、少人数指導・習熟度別クラスの編成など、また、カウンセリング面での対応として、スクールカウンセラーの配置の拡充や、教育相談に関する研修を通した教員のカウンセリング能力の向上などを図っているところです。個々の生徒に適した指導ができるよう、さらにこれらを推進・充実させていきたいと考えています。
 第二には、定時制・通信制教育の改革を図ることが重要と考えています。
 近年の定時制・通信制に学ぶ生徒は、勤労青少年のみならず、不登校傾向や全目制を中途退学した生徒、自分のペースや興味・関心にあわせて学びたい生徒など非常に多様化しています。このように多様化する生徒の学習ニーズに対応するためには、必要とする一定の教員数をもって、多彩な科目設定と自由な科目選択を可能としたり、学ぶ時間帯を自分で選べるようにするなど、柔軟な教育システムを持つ、新しい高校をできるだけ早く作る必要があると考えています。このような教育環境の中で、不登校生徒などもいきいきと学校生活を送ることができると考えています。