願 い
・・・お父様、お父様・・・
あなたをこう呼び続けていた小さかったあの頃。
あなたはいつも笑顔だった。
でも・・・
その顔に翳りがある事に気付いた時、全てを悟った。
あなたは私のお父様ではない事を。
それからは私はあなたをお父様とは呼ばなくなった。
いや、呼べなくなっていた。
時々、ふと考える事がある。
私の本当のお父様の事を。
そして今は顔さえ覚えていないお母様の事を。
いくら考えても私にはわからない事。
それをあの人は知っている。
でも聞けなかった。
聞いた時、何かが壊れる様な気がしたから・・・
何時の頃からだろう?
私に芽生えていた想い。
気が付くと視線の先はいつも忙しく動き続けているあなた。
でもあなたは私に視線を送らない。
・・・少なくとも私が見ている時は。
それに気付かない振りをし続けて数か月。
戦いは始まった・・・
私の前に立ち塞がって戦い続けるあなた。
最初は私はその背中しか見れなかった。
・・・でも・・・
そんな自分が許せなかった。
力が無い自分が許せなかった。
守られるだけの存在にはなりたくはなかった。
一歩でも前に。
あなたと同じ所に立ちたかった。
だから私は戦う事に決めた。
ひとつの願いを胸に抱いて。
戦いは終結し、自由への扉が開かれた。
でも私の心は自由にはなれない。
自由になる為の方法、それは私が一番良く知っていた。
今までの私では到底できなかった事。
それはあなたに真実を告げる事。
戦ったからこそ得た権利。
私はその権利を逃したくはなかった。
今、使わなければ永遠に失われてしまう権利を。
そして全てを告げた時、あなたは初めて私に視線をくれた。
その時、私は自由になった。
・・・それはたったひとつの願い。
〜fin〜
管理人にもこんな文章書く時が来たのか…と思った作品です。
本当にシリアスは難しいですね。この作品についてはとやかく言
いません。感想などございましたらよろしくお願いします。(礼)
2001/8/7 執筆開始2001/8/9 執筆終了