そ れ ぞ れ の 聖 戦 〜 軍 師 編 〜
(注釈パート3)これはギャ…(以下自粛)
「セリス様、これが次に攻略するミレトス地方の簡略図です。これまでよりも平坦な地域でございます。簡単で結構でございますので、お目通しを願います。」
オイフェは3人娘と別れた後、すぐにセリスの部屋へとその足を向けていた。オイフェはノックをした後、そのまま入室し、奥にいるセリスの下へ行った。そして先程完成したばかりの簡略図と進行予定図をセリスの元に提出した。軍師であるオイフェはこういった作業の担当で、いわば戦前戦後の司令塔である。セリスはこの図を以って戦場での指令を下すのである。しかし、今日ばかりは少しセリスの反応が違っていた。いつもはすぐに目を通すはずなのだが、今日は手渡されてすぐにテーブルに置いてしまったのだ。いつもと違う事にオイフェはやや困惑した様に、
「セリス様?」
そんなオイフェに構う事無く、セリスは部屋の窓に向かって歩き立ち止まった。そしてこれまで戦場でも見せた事がない…失礼、いたく真面目な面持ちで無言のままオイフェを手招きする。訝しがりながらも、オイフェはセリスの招くままに窓へ向かった。そのままセリスが指を指し示した方向に目を向ける。そこには先程パティの思いも掛けない告白(ウソ)に動きが止まってしまった、フィーとティニーの姿があった。
「あれはフィーにティニー?…どうしたのでしょうか?」
事情を全く知らないオイフェは首を捻るばかりだ。気が付くと、セリスは椅子に座り込み、オイフェをニヤニヤしながら見ていた。
「…セリス…様?」
オイフェはセリスの意味不明な行動の意味を理解できずにいた。すると、
「ねぇ、オイフェ。ちょっと聞きたい事があるんだけど。」
ここで初めてセリスが口を開いた。
「は?…なんでございましょうか?」
「あのさ…活発な天馬騎士やおしとやかなサンダーマージって可愛いよね?」
「は?」
目が点になるオイフェ。セリスの言っている言葉の真意がわからない。
「だから、フィーとティニーのどっちの方が可愛いとオイフェは思うの?」
じれったく名前を挙げてしまうセリス。どうやら真意も何もそのままの意味らしいという事に気付くオイフェ。しかし、何と言えばいいのか全く見当が付かない。
「いえ、どちらも可愛らしい方だと思いますが…?」
オイフェのそのままの答えに頭を抱えるセリス。
「あのねぇ〜僕が言いたいのはそういう事じゃなくて。」
「どういう事でしょう?」
即答鈍答。ここまで鈍いとは…いくらフィンと解放軍で一、二を争う鈍感さがあるとしてもこれにはセリスは頭を抱えたまま、頭をブンブンと振った。もうこれ以上遊んでもオイフェは気付かないと踏んだのか、
「だから、僕はオイフェはどちらが好みなの?って聞いてるんだけど。」
直球棒球を投じた。その言葉を聞いてオイフェはすっ転んでしまった。まるでドズル新喜劇の、
『ごめんください!どなたですか?父上や長兄に全く似ていない、いかした顔をしたドズル家のヨハルヴァでございます!お入りください!…ありがとう。』
というお約束ネタですっ転ぶ芸人の如く。
「な、な、何をおっしゃっているんですか!」
『それだよ、それを待っていたんだよ。とことんオイフェは芸人には向かないな。』
というかそういう発想をするセリスの方が芸人向きだと思えるのは何故だろうか?それから前以って言っておきたいが、芸人以前に軍師という仕事がオイフェにはあるという事は付け加えておきたい。
<加えなくてよろしい。>(好評につきまたも登場のブラギ神)
それはさておき、<無視するな、バカモノ!!>セリスはそのままとんでもない方向へ話を向けようとしていた。実はこのセリス非常に世話好きで、他人の恋愛事にとにかく顔を突っ込もうとするのだ。先日もセリスの巧みな(?)フォローで一組のカップルが誕生していたのだ。何でも齢17にして早くも仲人人生に開眼したらしく、
『目指せ仲人1000組斬り!』
という目標を立て、既に113組(素数)程斬られてしまっていたのだ。
<何時の間に仲人やってんですか、あんた!>
確かにこの段階で113組(素数)とは驚異的な成功歴だが、問題もあった。それは必ずそのカップルに嵐を呼び込んでしまう事(良い意味でも悪い意味でも)なのである。そんなセリスがオイフェの今の状況を傍観するわけがなかった。哀れオイフェ、ターゲットロックオンされてしまったのだ。
「あのさ、この聖戦もどうせ僕達が勝つから言っちゃうけど、オイフェも早く身を固めた方がいいと思うよ。傾向からといってもそろそろ恋人同士の会話も発生するだろうし。」
「セ、セリス様!会話がどうかは知りませんが、敵を甘く見てはいけません!油断は禁物ですぞ!」
「いや、何故か僕は先が見える能力があるみたいなんだ。この後僕の妹も最後のツメが甘いお爺ちゃんに誘拐されるのも知ってるし…」
「は?妹…?」
目が点なオイフェ。すると…
「きゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
という叫び声が聞こえた。どうやらM爺ちゃんの誘拐作戦が成功したらしい。
「ほらね♪」
<わかってんのなら誘拐阻止せぇよ!>
「今の声はユリア殿ではないですか!助けに行かなくてもよろしいのですか!!」
「あ、うん…僕には何故か知らないけどユリアは助けられると思うよ。そうだね〜ヴェルトマーとバーハラの間辺りで。」
<具体的なネタバレですな。>
「まあ、そういうわけなんだけど、オイフェに関してはわからないんだよね〜。だから今の僕にとってはユリアの安否よりもオイフェの身の固め方の方が気になるわけなんだ。だから話を元に戻すけど、フィーとティニーのどちらが好みなの?」
あっけらかんとしている君主に今更ながら頭を心の中で抱えるオイフェであった。
ようやく身固めの話を中断させ、息も絶え絶えにオイフェはセリスの部屋からの脱出に成功した。すると、まだ固まっているフィーとティニーが廊下の真ん中に立っていた。
<まだ固まっとんかい!>
「はぁ〜…」
セリスの助言(?)でオイフェはこの2人のストーンの原因が自分にある事がようやく理解できた。自分に原因があるのなら、責任取らねばなるまい…そう思い、ため息をつきながら2人の下へ歩いた。
「…フィー…ティニー…」
小さな声だったが、フィーとティニーにとっては充分すぎる程の声量だったらしい。すぐにストーンがレストされると2人はオイフェの服を掴んだ。
『オイフェさん(様)!!パティに指輪上げたって本当ですか!!』
と、一気にまくしたてた。その変わり様に目を白黒させるオイフェ。2人に体を揺すられて頭がグルグル回る!
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待ちなさい!」
混乱しながらもオイフェは少したしなめる様に2人に言った。ようやく落ち着いた2人にオイフェは息切れしながら答える。
「はぁ、はぁ、はぁ…2人ともよく聞きなさい。確かに私はパティに指輪を渡した。でも、それは…ひぃ!!」
全てを言う前にオイフェは2人を見て絶句してしまった。何故なら『パティに指輪を渡した』宣言を聞いた途端、2人はまるで真珠のネックレスがそこにあるかの様に涙を流してしまったいたからだ。
<や〜い、や〜い、オイフェが女の子を、しかも2人も泣かした〜い〜けないん〜い〜けないんだ〜♪>(子供)
女性2人に泣かれている状況にオイフェはかなり狼狽えた。もし誰かにこの場面を見られてしまったら間違い無く次の日からあだ名は『女泣かせ軍師』になってしまう事であろう。特にセリスは爽やかな笑顔でこのあだ名で呼び続ける事が大いに考えられる。そんな様子を想像してしまったオイフェは慌てて、
「だから聞きなさい!パティに渡したのはレッグリングにナイトリングなんだよ!」
『…え?』
涙がピタリと止まる2人。
「元々はリーンの持ち物なのだが、最近無意味に聖剣ミストルプロテインやバルムンクの叫び(この時、軍師殿は武器名を喋っていたのですが、今後のオイフェ殿の軍師人生に支障が出ると思われますのでギャグを使って仮称とさせて頂きます。)
が消費されるから軍の財政が厳しくなっていたんだ。だからパティに頼んで敵の物を身ぐるみ…いや一部はいでもらおうしたんだ。」
一部危ない事を口走ってしまう辺りにオイフェの狼狽ぶりがうかがえる。しかし、フィーとティニーには暗闇から一筋の光が見えたかの如く、顔を輝かせていた。
『そうだったんですか!それならそうと言ってくださったらよかったのに…』
<いや、言うチャンスを奪ってたのはお嬢様方だよ。>
急に2人の顔が明るくなってオイフェはようやく胸をほっと撫で下ろした。しかし、ここでオイフェの頭の中で1つの疑問が湧いた。それは、
『この2人、どうしてここまで自分の事で取り乱すのだろう?』
であった。その答えは既に出ている様に思えるのだが、何しろ鈍感さは軍でも抜群であったから気付かなかったのだ。そこで思い切って喜んでいるフィーとティニーに聞いてみる事にした。
「…ところで2人共、どうしてそこまで私に気に掛けてくれるのか?」
その問いに2人は、
『…鈍感。』
と思いながらも顔は赤くなって下に俯いてしまった。その様子にオイフェは眉間に皺を寄せ訝しがる。
「フィー?ティニー?」
それに構わず、フィーとティニーは意を決したかの様に顔を上げると!
『オイフェさん(様)!聞いてください!私はオイフェさん(様)の事が…」
いよいよ告白タ〜イム!が!!!!最後まで言おうとしたその時、何故か自室で灰になっていたはずの兄達が熱き涙を溢れさせてやってきた!
<こ、こいつら全然出番のタイミングを考えてねぇ…>
『妹よ〜早まった事をするんじゃない〜!!』
告白場面台無し。場の雰囲気が、特に妹達から発っせられるオーラがあっという間に黒い物に変わっていく事に気付かない兄達は、
『妹よ、よく聞け!兄様はな…って!』
兄達は妹達の説得を試みようとした。が、妹達は静かに背中からそれぞれ細身の槍とトローン(言うまでもなく、どちらとも☆99の武器でございます♪)を取り出したのを見て後ずさりする。
<何で背中からトローンどころか、細身の槍まで出てくるんじゃ!>
兄達はその様子に思わず逃げ腰になる。しかし全ては遅かった。
『お兄様のバカ〜〜〜〜〜〜!!』
そのまま兄達に攻撃!
『ドカ〜ン!!』
『あ〜れ〜』
攻撃を受け吹っ飛んでいく兄達。こうして兄達はお空のお星様となったそうな。めでたし、めでたし・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
………え?オイフェと妹達の話はどうなったかって?だってどちらかとくっついちゃったらもう片方が可哀相でしょう?作者はどちらのカップリングも好きだから選べないですよ。だからこれで一見落着と言う事で…って、あ、あれ?皆さんお揃いでどうしたんですか?大変です!作者の後ろに今までの出演者が黒い炎をまとって迫ってきます!た、助けて〜!!
今までの出演者全員&リターンで戻ってきた兄達『結局それがオチかい!!』
『ドッコ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!』
「あ〜れ〜〜〜〜〜〜〜〜」
全員に攻撃され、飛んでいく作者。その様子をシレジアの親子連れが目撃した。
「あ、お母さん、流れ星だよ!きれ〜」
「あら?上っていくわね。珍しい流れ星だこと。」
<天にも上ってくるな、バカモノ!!>
ブラギ神の声の後、その後の作者の姿を見た者はいない。
〜END…というか終われ!!〜
最終話までお付き合いくださいましてありがとうございます。笑って頂けた方もそうでなかった方にも同等のお礼を申し上げます。しかし冷静になって見てみると、
ブラギ神はヒットだったな。
と、思っています(笑)今度はもっと切れ味を鋭く…ってまだやる気かい。
2001/8/14 執筆開始
2001/9/18 執筆終了
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