そ れ ぞ れ の 聖 戦 〜 兄 編 〜
(注釈)これは本当にギャグです。笑って許してください(笑)
ペルルーク城の廊下をトボトボと東から1人、西から1人の男が歩いていた。東から歩いている男は見事なまでの銀髪をし、西から歩いている男はこれまた見事な深緑の髪を携えていた。お互いに下を向いている為、向かい合う相手の存在に気が付かない。そしてそのまま肩がぶつかってしまった。ようやく2人は顔を上げる。肩がぶつかった相手が誰かわかったと同時に2人の男はダレていた顔がいきなり真剣になり、相手の肩をガシッと両手で持った。そして、
『お前の妹さん、どうにかならんか?』
(解説:お前・タメ口、妹さん・丁寧語、どうにかならんか?・懇願)
と同時に叫んだ。その言葉にお互い目をパチクリする。さて、もうこの時点でお分りだと思うが、2人の男とはアーサーとセティである。この2人、実は双子か?と思う程に共通点があるのである。魔道士の父を持ち、自らも魔道士であるという事はもちろんなのだが、互いに妹を持ち、さらに互いの妹に恋心を抱き、加えて、互いに恋路が上手くいっていないという情けない共通点もあった。上手くいっていれば義兄弟…この場合どちらが義兄になるのかが不明なのだが…さらに問題なのが互いの妹が想っている相手もまた同じという偶然にしては出来すぎな共通点があったのだ。もっともこの事実はこの後、身を以て兄達に味わって頂く事になっているのでお楽しみに…
事の始まりはアーサー、セティそれぞれペルルークでフィー、ティニーに愛の告白した事から始まる。お互いに結構気が合っていて、ある意味100%の確信を持った告白だった。が、しかし…
『ごめんなさい。』
敢えなく玉砕。
『ど、どうして?』
兄達は尋ねる。妹達は答える。
『だって、私…好きな人がいるから…』
ありがちな断り方。しかし、兄達のダメージは80を余裕で越えていた。正に一撃必殺怒り☆99攻撃。
『ガ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!!!!』
頭を垂れてハートブレイク。しかもとどめとばかりに、
『私じゃなくてもきっとあなたならきっといい人が見つかるわよ。』
慰められた言葉まで同じであった。ちなみにこの場面は全くの別の場所で行なわれているものの、同時刻で繰り広げられたのである。まるで鏡の世界。
『好きな人って、だ、だ、誰?』
ありがちな質問。途端に頬を赤らめる妹達。
『とても頼りになる人…』
もじもじしながら、この言葉しか答えなかった。その様子に、
『うおおおおおおおおおおおお!!!!』
涙を流し、頭を抱え、絶叫しながら兄達はその場を走り去った。その様子は良く晴れた日の赤い夕焼けがとても良く似合っていたと後の聖戦の弾き語り詩人のロイエンタールは語る。そんなこんなで、心の敗者2人の肩がぶつかったというわけなのである。
『そうか…お前もそうだったのか…』
涙を流しながらガッチリと抱き合う2人。男達は分かり合ったのだ。しかし、進んでこの輪の中に入ろうとする者はいないだろう。いや、入りたくない。そしてようやく2人から異なった言葉が紡ぎだされた…つまり普通の会話をし始めたという事なのだが。
「セティ、ところでフィーが好きになりそうな男って誰かいるか?」
「それは俺も聞きたい。ティニーが好きになりそうな男は誰かわかるか?」
互いに自分の恋に夢中になっていて、周りが見ていなかったツケが今頃になってやってきた事を実感する2人。いくら考えても答えは出てこない。彼らと同じ年頃の男にはその様な様子は見られないし、見られたとしてもそれは他の女性との関係だ。彼らからして見れば全くの『out
of 眼中
』なのである。色々考えた挙げ句、1つの案が2人の間で固まりつつあった。魔道士2人が考えるアイデアなのだから良く練られた案が出てきたと思うが…
「お互いに聞いてみてわからないんだったら、俺はティニーに聞いてみるから、セティはフィーに聞いてみるってのはどうだろう?兄妹の関係だったら大概の事は聞き出せると思うんだが…」
「ああ、そうだな。あくまでさりげなく聞くのが一番だろうな。」
「よし!そうと決まれば、即行動だ。今日聞くのは何だから、3日後くらいをメドにしよう。」
「わかった。じゃあ、3日後にまたここで落ち合おう。」
残念ながら、無茶苦茶単純な案であった。こうして『妹に好きなヤツを聞き出そう』という魔道士2人が考えた割りには斧戦士でも考え付く様な情けなさが炸裂する作戦(彼らにとっては史上最大の作戦)は幕を開けた。初日、2日目はあくまで自然に、しかしやや不自然に兄妹の会話が為された。そして決行当日。朝、廊下ですれ違う瞬間、2人は右手を高く揚げ、パンッ!と手を合わせミッションは開始された。さて、ここから2つの場面が繰り広げられるのだが、別々に書くのが非常に面倒なのでまた鏡の国にご案内する事としよう。
『す〜…は〜…落ち着け。…きっと大丈夫だ。』
妹の部屋の前で心を落ち着ける為に深呼吸をする兄達。そして一大決意で、
『コンコン』
妹達の部屋をノックした。
『は〜〜い。』
という妹達の声が聞こえ、すぐにドアが開けられる。
『あら、兄様どうしたの?』
突然の兄達の訪問に少し首を傾げる妹達。
『ちょっと聞きたい事があるんだ。部屋…入っていいか?』
『え?あ…いいよ。入って。』
兄達を部屋に向かい入れる妹達。
『邪魔するぞ。』
兄達は部屋にある椅子に腰を掛けた。それに合わせて妹達も向かい合う様に椅子に座る。少し空気が重い。それに耐えかねた妹達が尋ねる。
『聞きたい事って?』
『ああ…実はな…』
少し言葉に精彩を欠く兄達。しかしここで怯んではいけない。
『お前…好きな人とかいるのか?』
誤魔化し不要、問答無用の直球ど真ん中ストライクのホームランクエスチョン。
『はい?』
目を見開き、驚く妹達。
『あ、いや、その…何だ。結構行軍も上手く行っている。このまま気を緩めなければ、きっとこの戦争に勝つ事ができるだろう。で、問題はその後だ。俺は父上の故郷に行く事になるだろう。で、だ。お前はどうするのか?と思ってな…』
しどろもどろになりながらも兄達は今回の作戦の要に入った。その決意を知ってか知らずか、妹達は困惑しながらも答える。
『好きな人は…いるよ。』
『ガタン!』
知っているとは言え、やはり椅子から転げ落ちそうになるくらいにショックを受ける兄達。しかし、これは作戦の趣旨からは外れている。何故ならこの作戦名は、『妹に好きなヤツを聞き出そう作戦』なのだから。いなかったら作戦名変更を余儀なくされるだろうし、兄達にとってはハッピーエンドで終わった事だろう。しかし幸いにもハッピーエンドとは成らず、作戦も変更はせずにすんだが、いかんせんダメージは莫大だった。
『兄様、大丈夫?』
『ああ、大丈夫だ…大丈夫だから…』
絶対に大丈夫じゃない事は見え見えなのだが、本人がそう言うのなら言わない方がいいのだろうと妹達は気遣った。
『で…その好きなヤツって誰なんだ?』
兄達は体勢を立て直しながら、遂に質問は核心を突いた。
『え?…えと、あの、その…』
顔を伏せ、口篭もる妹達。
『…あ、いや、やっぱり、いい…後で…分かる事だろ?』
その様子に嫌な予感を感じ、急に怖気付いた兄達。先程までの決意は一体何処へやら、少し足はドアに向かって伸びている。しかし、妹達は兄達が思うよりも強く、そして兄達は弱かった!妹達は顔を急に上げ、
『ううん!兄様、聞いて!私が好きなのは!』
『ひっ!』
兄達はその言葉に恐怖し部屋から一目散に逃げ出そうとする。しかしその背中を妹達の想い人の名前がエルウィンド(☆87)の如く追い掛けてきた。
『○○○○○○なの!!!!』
○○○○○○が兄達の体を貫いた。数秒後、いや兄達にとってはそれは永遠とも思える時間の静寂の後、
『ぎゃああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!』
兄達の断末魔がペルルークの城、城下を越えてミレトスどころか、シアルフィ城にまで響いていった。同時に妹達の告白はエルウィンド(☆89)となった。その時の事を断末魔を聞いた途端、座っていた玉座から転げ落ち腰を強打した元皇帝のリストラ男性(45)は後日、ユングヴィ銘菓のウル饅頭をお茶受けに、エッダ産の緑茶を啜りながら我が社の取材にこう証言した。
「あれは人間の発する声じゃないね〜まったく、我が息子といい、本当に世の中は思った通りにならないもんだ…」
以上、シアルフィより全体から哀愁のオーラが漂うメッセージでした。後にロイエンタールは語る。
「その者達灰色のオーラを纏いて、黒色の地に降り立つ。」
…おお、古の言い伝えは真じゃった!
すいませんm(_
_)mすいませんm(_ _)mすいませんm(_ _)mすいませんm(_
_)m
我の暴走ここにあり作品のスタートです。すっかりアーサーとセティがお笑い芸人になってしまいました。本当はもっとクールな方々ですよ〜(一応フォロー・笑)冒頭にもある通り、本当にギャグなんで許してくださいませ。ちなみにあと2話ありますのでこの作品を読んで耐えられた方は続きを、耐えられなかった方は頭から消去してくださいませ。ちなみに隙間産業は密かに某リストラ男性を応援してます!(爆)
2001/8/14 執筆開始
2001/8/21 執筆終了
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