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2006年2月議会一般質問

[2006/3/6]
1.新しい島根をリードする指導者像について
2.教育問題について
  教育指導の方針である"Teach Less Learn More"について
  教育現場への競争原理導入と管理職の裁量権拡大について
  懲罰のあり方と規範意識涵養について
  コミュニケーション能力・表現力の育成について
  国際化に対応した英語教育について
  島根教育の目指すべき姿と厳しい財政状況下における教育のあり方ついて
  学校の耐震化について
3.ニート・フリーターへの対応について
4.乳幼児医療費の自己負担軽減に伴う県の対応について
質疑内容は下記の通りです。それぞれ文字色で私の質問、知事答弁関係部長・教育長答弁がわかるようになっています。
 先日、シンガポールに行ってきました。折角の機会であり、教育分野でも素晴らしい成果を修めている実情を見たいと、4つの学校を訪問し、多くの教育関係者にお会いしました。この間、得がたい体験をさせて頂き、多くのものを学ばせていただきました。
 今回のシンガポールでの調査活動で感じたことをもとに、いくつかの点について質問させて頂きます。
 質問の第一は、新しい島根をリードする指導者像についてであります。
 御承知のように、シンガポールは、独立後驚異的な経済発展を遂げ、かつて植民地支配をした英国を追い越す国民所得水準を達成しています。
 資源のない淡路島程度の国土で、マレーシアから追い出されるように独立した政治的、地勢的な危機感、そして中華系、マレーシア系、インド系という他民族国家として独立を維持し、発展していくための資源は人材しかないという切実な現状認識と、その中で何としても発展すると言う悲壮なまでの固い意志と実行力。
 1965年の独立以来、首相の地位を譲っても実質的トップとして国を牽引してきたリー・クアン・ユー氏。自由主義国の北朝鮮という表現をした方もあるくらい、大きな影の部分もありますが、現実の姿がその功績を如実に物語り、私の友人を含め、国民から大きな評価を得ていました。
 経済発展のために特化したとも受け取れる人づくり、埋め立てによる貪欲なまでの国土拡張策、トヨタカローラが700万円以上で登録に要する費用が70万円、一方、ただ同然の公共交通機関とタクシー、渋滞のない交通環境。町を汚すと言う理由でガムの販売禁止。一箱800円もするタバコ、これも税収よりタバコによる医療費のコストが高いとの理由で全面輸入禁止にするという話も聞きました。なりふり構わず進める優秀な人材の世界からのリクルート、公務員の汚職を絶対に許さない制度などなど。
 国づくりの創生期ということもあるかもしれませんが、ぶれのない国家像と国づくりへの指針、そしてその実現に突き進む強引なまでのトップリーダーの姿勢こそが、シンガポール繁栄の最大の要因と感じました。
 2030年、25年後のふるさとはどんなに甘く見ても人口が65万人になるとのこと。これは、島根県の本土から雲南市と中山間地といわれる町が全て消滅してしまう数字であります。25年後、今の島根といわれる地域が「自立的に発展できる快適で活力のあるふるさと」になっているとの展望を県民が持っているのでしょうか。
 この厳しい時代にあって、確たる島根づくりをリードする指導者像について、知事の所見をお尋ね致します。
 まず、島根づくりをリードする指導者像についてであります。
 地方分権の進展や国・地方を通じた行財政改革など、大きな変革期にあって、確たる島根づくりを進めていく上では、本県の進むべき方向をしっかりと見定め、いかに本県を最善の道へと導いていくか、ということが指導者の最大の役割であると考えています。
 そのため、指導者には、まず、時代の潮流と本県の課題を見据えた上で、地域が存在感を主張でき、県民が夢と希望を持ち、次世代に引き継いでいけるような島根の将来ビジョンを示すことが求められています。
 その上で、ビジョンの実現に向けては、先頭に立って自らが県民に語り、現場の生の声を良く聞き、しっかりと議論をした上で、強い決意を持って進めて行くことが必要であると考えます。
 私は、こういう想いを胸に、人口減少、少子高齢化が全国に先んじて進行している中、これまで本県が経験を積み重ねてきた優位性を生かし「島根から日本の未来を拓く」という気概をもって、自立する島根づくりに邁進しているところであります。
 質問の第2は、教育問題についてであります。
 委員会でも学力問題を中心に調査活動を進めているさなかでありますので、細かい点は置くとして、今回のシンガポールでの調査で特に強く感じた点について、それぞれ所感を求めたいと思います。
 最初に、教育指導の方針についてであります。
訪問の前に読んだシンガポール入門本の中に、「国際校に入る日本人子弟の内、男子の多くがお情けで卒業させてもらっている。その原因は、日本での『手取り足取り指導』のため、目標を与えそれに向かって自らの力で学ぶ指導法についていけないことにある。」という件がありました。
 会社の経営者と話をしていると、最近の若い人は周囲と協調して仕事ができない、指示がないと動かない、すぐ辞めるなど、深刻な話をよく耳にします。経済産業省では、このような産業界の悲鳴に応えて、困った若手社員の再教育プログラムの検討を始めるとのことですが、そうした人づくりの基本にかかわる部分に日本の義務教育における「手取り足取り指導」が要因としてあるのではないかと思い、シンガポールの国際校で教鞭をとるこの著者や多くの教育関係者と意見交換いたしました。
 シンガポール教育の基本スタンスは"Teach Less Learn More "であること、また、この国際校でも全く同様であるとのことでした。
 わが国にも「指導から支援へ」という考え方があると聞きますが、多くの学校で授業を見る限り、また、管理職と意見交換する限り『手取り足取り指導』を良しとし、学習意欲が低下している中ではこの指導方法がベストと言い切る校長もありました。「生きる力」を育む教育とはまさにこういうことではないかと思いますが、未消化なのでしょうか。
"Teach Less Learn More "について、所感をお尋ね致します。
 シンガポール教育の基本スタンスである"Teach Less Learn More"を私なりに訳しますと「教え込むより自ら学べ」となり、これは日本の学習指導要領における「生きる力」を知の側面からとらえた「確かな学力」と相通ずるものであります。
この「確かな学力」は、知識や技能はもちろん、これに加えて、学ぶ意欲や自分で課題を見付け、自ら学び、主体的に判断し、行動し、よりよく問題解決する資質や能力等まで含めたものであり、変化の激しい社会に主体的に対応していくために生涯にわたって必要とされる力であります。
 本県でも、『しまね教育ビジョン21』において、体験的・問題解決的な学習を積極的に取り入れ、児童生徒が自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、判断し、よりよく問題を解決する力を身に付けることの大切さを明示しており、教員には「確かな学力」の必要性について、学校訪問指導や研修を通じて指導しているところです。
 また、各学校では、児童生徒がテーマを決め、インターネットや図書館を活用したり、調査活動を行ってテーマに迫る調べ学習や、地域を学習活動の場としたふるさと学習など、主体的な学習が行われています。
 知徳体の調和的発達をもとに、社会や人との関わりの中で、自分の生き方を考え、決定し、行動していく力や問題解決能力を身に付けることが本県のめざす教育であります。
 次に、競争原理についてであります。
 あるホームページで、わが子を現地校に通わせている日本人が、日本の子ども達はある意味で幸せだが、将来が心配と書いていました。
 小学校4年生の段階で、事実上人生が決まってしまう熾烈な学力至上主義への反省から、制度の見直しが行われたとの事ですが、子ども達はやはり厳しい競争原理下に置かれ、落ちこぼれなどの問題や、高層住宅から飛び降りる子どももあるとの事でした。
 3つの現地校で見た児童、生徒達の授業風景は、クーラーのない教室でしたが真剣そのもので、気迫が違うという印象を受けましたし、訪問した学校で不登校などの問題を抱える子ども達の数は、わが国と比較して相当少ないものでした。
 子ども達の競争もそうですが、学校間の競争も大変激しいものでした。小学校では学校から1キロメートル以内に居住する子ども達に入学の優先権があるとの事ですが、原則自由で、人気のある学校には遠くマレーシアに居を構えながら片道2時間もかけて通う子どもや、目的の学校に入学するために転居する親もあるとの事。
 そのような競争原理に晒されている学校は、魅力作りや、生徒達のレベルアップに必死に取り組んでいます。お邪魔したある公立中学校では、教育ハブを目指すという政府方針の通り、寄宿舎を持ち、生徒の7.5%は海外の子どもたちだとの事。また、世界中から優秀な人材をリクルートする権限もあるようで、ニュージーランドから四年前にインターネットで応募した日本人の教師が語学科の主任をしていました。
 もう一つの公立中学校と小学校では交流事業の打診を受けました。この公立中学校では、毎年学級の模様替えを生徒達が行うとの事で、様々な色でペイントしたり、日本漫画のキャラクターが壁一面に書かれていたり、驚きました。
 小学校では算数の授業にチェスを取り入れ、1クラスで3人のボランティアがサポートする授業に案内し、正解にたどり着くまでには様々な戦略と方法があることを教えていること、国内のチェスの大会でも優勝していることを誇らしげに話していました。
 学校予算もとても潤沢なようで、学校の広報や学校づくりに様々な創意工夫がされていましたし、学校スタッフも2185人の生徒数に対して13人、セキュリティも万全で〜ある中学校では指紋認証システムが取り入れられ、生徒に人気と話していました〜、校長にはとても大きな経営権と裁量権が任されていました。
 教員について、わが国と同じように教員のステータスが落ちてきた時期があったようですが、15年位前に改革に取り組み、給与面での待遇を大幅に良くしたとのこと。また、教員任用へのハードルを上げたとの事で、2割強しか進学できない大学生のうち上位1/3以内の成績で、希望するものが師範学校に入学できる資格者との事ですが、それでも8倍の狭き門だとのこと。無試験の任用時にも心配な人は1年の試用期間が設けられているとの事でした。
 私のシンガポールの友人に聞くと、教師はprofessionとして認識され、尊敬されているとの事で、自分は子ども達の教育に満足していると答えてくれました。
 このような教員ですが、一方では教員への人事評価はとても厳しいようでした。私の控え室より狭い校長室に、ここで執務ができるのかと女性の校長に聞いたところ、自分の仕事場は現場だと笑顔で答え、92人の教員の人事評価をそれぞれ15ページくらいのレポートにして教育省に報告しているとの事で、教員のぴりぴりしている様子が伝わってきました。
 教員の人事評価制度試行によって現場の管理職から大きな負担感の声や、ここまで面倒なものでなくてもっと簡単なものでも、という声を聞きましたが、実際にシートを見せてもらい、シンガポールでの取り組みと比較した時、如何にぬるま湯の中に浸かっているのかという思いが致しました。
 問題を抱えていることは事実ですが、この教育システムによって、経済発展を支える人材を非常に効率よく育成していることは間違いありません。最初に紹介した親御さんの言葉のように、このまま行ったら日本は、私たちのふるさとはどうなるのか心配です。
 教育現場への競争原理導入について、同時に管理職の裁量権拡大について所感をお尋ね致します。
 県教育委員会としましては、教育ビジョン21の前文に、「切磋琢磨の気概と向上心のもと、内在する能力を伸ばします。」と掲げ、子どもたちが日常の集団生活の中で互いのよさを認め合いながら、時には競い合い、たくましく育つことを願って、指導方法の改善や学習環境の整備に努めてきました。
 とりわけ、授業においては、話し合い活動やお互いの発表を評価し合う活動、中学校においてはディベートによる討論を取り入れるなど、互いが学び合う学習に積極的に取り組んできました。
 また、職場体験学習を通して、地域の方々から実社会における競争の厳しさなどを指導していただいているところです。
 管理職の裁量権の拡大につきましては、中央教育審議会でも、学校が主体的に教育活動を行うためには、人事、学級編制、予算、教育内容等に関して、学校・校長の裁量権,を拡大することが不可欠であるとの答申が出されたところであり、学校の権限や責任を拡大する方向にあります。
 校長の裁量権の拡大に伴って、今管理職に求められていることは、急激な社会変化に対応して、どういう子どもたちを育てていきたいのか、そのために、学校をどう変えていこうとしているのか、というビジョンをしっかりと持ち、教職員の意識改革を進め、児童生徒、保護者、地域から信頼される学校にしていくことであります。
 そのため、積極的に学校評議員制度を導入したり、学校評価に外部評価を取り入れるなどの取組を進めているところであります。
 また、来年度から導入する教員の評価制度においては、特に管理職に対して、学校経営目標の具体的な成果をもとめ、教職員一人一人を生かした活力ある組織体としての取組を期待しているところであります。
 次に、規範意識の涵養についてであります。
 残念ながら、これと言って決定的とも思える規範意識涵養のための取り組みは聞かれませんでした。
 それどころか、最近著名大学の学科長を退官した方と意見交換し、特にこの点について尋ねたところ、最近、クリエイティブな人材育成という課題を持って教育改革に取り組もうとしているが、大きく軌道修正されることはないだろう。人間教育ということで考えるとシンガポールの教育は、全く駄目だという趣旨の話をしてくださいました。恐らく、こうした見方の端的な現れは、拝金主義の横行という現象であろうと思います。
 それはそれで置くとして、人づくりと言う点でとても感動したことがありました。
 それは、中学校の一つで、希望者を募って集まった1年生から4年生までの生徒12人と意見交換をさせて頂きました。インド系、マレー系、中華系それぞれの子ども達がいたのですが、シンガポール国民であることに誇りを感じているかと質問したところ、当たり前という表情で、間発を入れずに "Yes"という答えが一斉に返ってきました。
 小学校の校長は、様々な授業を通してシンガポール国民であることに誇りを持てるようなカリキュラム構成になっていると話していましたし、3校とも毎朝国旗を掲揚し、国歌を斉唱するとのことでした。
 また、訪問した国際校の校長に、規範意識涵養のためもっとも力を入れていることは何かと聞いたところ、60カ国の子ども達が集まる学校だから、それぞれのアイデンティティーを尊重するということを特に気をつけて教えることにしているとの事でした。国際人として活躍するためには、自らのアイデンティティーへのこだわりは必須の条件ではないかと思いますが、残念なことにアイデンティティーの意識が一番薄いのは日本人師弟だと言うことでした。
 わが県では、ふるさと教育への取り組みが本格的に始まりました。案内いただいた松江と益田のふるさと教育フェスティバルの発表を見て大変感動致しました。特に益田で神楽を披露してくれた中学生の達成感溢れる表情は目に焼きついています。密度の濃いふるさと教育に期待をするものですが、現実にどれくらいの子ども達が日本国民であるということに自信と誇りを持っているのか、はなはだ心もとないのであります。
 もう一つ、とても興味深く思った、というか驚いたことがあります。
 それは、児童生徒への懲罰として鞭打ちが許されているということです。
 シンガポールの鞭打ちは、刑罰として規定されているという背景もありますが、このことを特に調べた方からお聞きした話では、教育省が細かくガイドラインを決めているそうであります。その主なものは、@校長にのみ権限があるA入学時のオリエンテーションで説明するB担任や他の教師はしないC事後であるが親に必ず説明するD手加減が難しいらしいですが、手のひらかお尻を打ち生徒を傷つけないE6回までというようなものだとのことです。そして、親からの抗議は殆どない、本人に対しての効果は余りないが抑止効果がある、他の方の話では、全校生徒の前で打つこともあると聞きました。
 この件について、私の友人は、@学校はまず鞭打ちをする前に親に知らせなければいけないAこの件は大変sensitiveな問題で、中には法的手段を取る親もいるB全校生徒の前で行う学校もあるが、事前に親への連絡が必要であるC私はかなり悪いことをした場合(ナイフで脅したり、恐喝をしたり)という場合のみに限るべきだと思っているとコメントしてくれました。
 一切子どもを叱らない親がいます。現実に私のすぐ近くにもいます。教師も叱らなくなった、叱れなくなったと聞きます。
 私は、家庭で、学校で、たくさん怒られ、随分体罰も受けました。今そんな先生が真っ先に思い出されます。そうした経験が、私の規範意識を涵養する大きな要因の一つであったように思います。
 懲罰のあり方と規範意識涵養についての所感をお尋ね致します。
 私は、本年度、小中学校の校長研修会に際し、児童生徒の規範意識の向上に関連して、児童生徒に関心や愛情を持ち、その児童生徒の将来のために、今何が必要なのか、しっかりとした考えのもと、自信をもって叱ることが必要だということを指導してまいりました。
 規範意識の低下が懸念されている今日、児童生徒が間違ったことをした場合、その行為を戒め、児童生徒自身が自らの行為を反省することができるよう、その場で厳しく叱ったり、個人的にしっかり対面して、児童生徒の心情を理解しながら諭すなど、その児童生徒に応じた適切な叱り方が大切であります。
 また、規範意識の涵養のためには、教育活動全体を通じて、一人一人の児童生徒が、目分はかけがえのない存在であるという自尊感情や、「こんなことができた、こんなことで役立った」といった自己有用感を獲得すること、地域における体験活動等、人との関わりを通して地域の一員であることを自覚することが大切です。
 県教育委員会といたしましては、県内の全ての学校の生徒指導担当者が参加する「規範意識の向上」をテーマにした研修会において、生徒会の自主的な取組、教員自らが手本を示す取組、地域と連携した取組など効果のあった学校の実践を発表し、指導方法などについて協議を行っております。
 規範意識の育成には、家庭や地域社会の関わりが不可欠であります。学校・家庭・地域社会それぞれが児童生徒を温かく見守り、時には厳しく指導することも大切であります。地域の子供は地域で守り育てるという気運の高まりの中、地域の宝である子どもたちの健全育成に向け、家庭・地域との連携推進
に努めてまいります。
 次に、コミュニケーション能力の育成についてであります。
 教育方針をお尋ねする中で触れたような、困った若手社員に共通して欠ける資質の一つが、コミュニケーション能力や表現力であると思います。
小学校でも中学校でも、授業を見せていただいて共通して感じることは、とても声が小さい、堂々と自信を持って答えることができないということです。まさに、コミュニケーション能力や表現力が確実に低下しているのではないかと感じるのであります。
 シンガポールでも、子ども達はとてもシャイな印象を受けました。小学校の校長にこのことを尋ねると、同じ問題意識から、2年前からコミュニケーション能力を高める取り組みが幼児教育の中で始まり、最近入学する子ども達はとても元気になったと1年生のクラスを案内してくれました。ちょっとの時間でしたのでよくわかりませんが、記念写真を撮る時の様子などはそういう効果が表れているのかなと感じました。
 松江のふるさと教育フェスティバルで発表した八雲中学校の取り組みや、浜田の雲城小学校の英語表現科などでは、コミュニケーション能力、表現力を育てるという着眼が見事に開花しており、とても心強く感じました。こういう子ども達をどこの学校でも育成できていれば、経営者からの悲鳴は聞こえないでありましょう。
 コミュニケーション能力、表現力を育成することについて所感をお尋ね致します。
 いわゆるコミュニケーション能力とは、自分の思いを相手に伝え、相手の思いを正しく受け止めることができる能力であり、表現力とは、自分の思いを多様な方法で表す能力であります。
 これらの能力は、現在の変化の激しい社会に対応し、職業人として生きていく上で重要であります。
 また、国際化が進むなか、子どもたちが、異なる文化や言語を持つ世界の人たちと、共に生きることのできる国際人として成長する上でも強く求められております。
 各学校においては、総合的な学習の時間をはじめ、国語科でのディベート、読書活動といった、全教育活動を通じて、言葉によって多様な「人間関係を構築する力」や、目的と場に応じて「効果的に発表・提示する力」、「語学力の向上 」 などのコミュニケーション能力の育成に努めております。
 さらに、今後、ふるさと教育やキャリア教育を推進していく中においても、コミュニケーション能力や表現力を伸ばす取組を積極的に進めてまいります。
 次に、国際化への対応についてであります。
 私が、国際校を尋ねることを聞きつけたこの学校の教師から、話を聞いて欲しいということから貴重な意見交換の機会を得ました。
 この先生は、英語教育充実の切迫した必要性を切々と訴えられました。中国や韓国、その他の諸外国の英語教育への取り組みを日々肌で感じ、このままでは日本は沈没してしまうという危機感からでした。
 私の友人の子どもが中学二年生の三学期、島根県から日本人学校に転入したのですが、体育や美術、音楽等の授業に取り入れられている英語によるイマージョン教育が全く理解できず、不登校になったと話してくれました。我々の時代はともかく、今の時代はALTも配置され、生の英語に接する機会は格段に増え、会話重視の英語教育を受けているにもかかわらずです。
 浜田市の雲城小学校では素晴らしい成果の一端を見せて頂きました。取り組み次第でここまで変わるという生の姿を目の当たりに致しました。
 小学校への英語教育の導入は、現在国において検討中で、近いうちに結論が出されると聞いています。また、日本語がしっかり身についていないのにという声も聞きますが、シンガポールでは英語教育を母国語教育と平行して取り組み、国際社会の中で確たる地位を築きあげています。
 ほとんど話せるようにならないなど、義務教育課程での英語教育にはALTの活用のあり方も含め、課題が多いように思います。
 国際化に対応した英語教育について所感をお尋ね致します。
 今日、経済・社会・文化・政治など、あらゆる分野における国際化の進展に伴い、英語力を高めることがますます必要となってきていると認識しております。
 現在、本県の中学校においては、週1時間程度、ALT(外国語指導助手)とのティームティーチングによる英語授業を実施しており、さらに、約3分の1の中学校で、一時間の授業の半分以上の時間を英語だけで進めるなどの工夫により、実際に英語を聞いたり話したりする力を伸ばす学習活動を展開しております。
 また、最近実施した小学校における英語活動の実施状況調査では、全小学校の96%、251校において、年間平均約15時間の英語活動が実施されているという結果が出ております。
 県教育委員会としては、小学校で、総合的な学習の時間を中心に、楽しみながら英語に慣れ親しんでいく活動の拡充を検討しております。
 そのねらいは、中学校で初めて教科としての英語が導入されることから生じる、とまどいや抵抗感を軽減して、中学校における英語学習に意欲的に取り組む素地をつくること、さらには、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度や、聞く・話すなどの基礎的な運用力を育成することであります。
 そのため、来年度から新たに、義務教育課に小学校英語教育担当指導主事を配置し、直接指導にあたる学級担任に対して、英語活動の進め方にかかわる研修を実施したり、学年段階に応じたカリキュラム案の提示、楽しんで取り組める教材の開発等を行い、小学校における英語活動の促進を図っていくこととしております。
 ここまでシンガポール教育で特に感じた点を述べてまいりました。
 最初にも述べたとおり、明確な国家像と国づくりの指針実現のために、教育理念も方針も位置づけられています。その実現のためには、思い切った集中投資も行われ、思い切った施策として実施されていることを強く感じました。
 現在、わが県の子ども達の成績は二極化の傾向にあります。そして、残念なことにわが県は人材供給県であります。地元に残ってくれる可能性の高い子ども達に、問題が集中する傾向があるのではないでしょうか。
 更に、厳しい財政状況下であり、教育の平等という美名の下に、広瀬小学校などでは顕著な実績を残している学校司書配置が風前の灯であったり、合併を機に、地域との強い絆を築いている給食の自校調理が危機に直面するなど、特色ある学校作りとは何なのかと思うような事例も起きようとしています。
 25年後、65万の人口になった時、どんなふるさと像が描けるのでしょうか。今、わが県の人づくりのターニングポイントであるような気がします。
 知事並びに教育委員長に、人口減少が急速に進む中でのわが県教育の目指すべき姿と、この厳しい財政状況下における教育についての所見をお尋ね致します。
 明日の島根を担う人づくりは、最優先で取り組むべき政策の柱の一つであり、中でも、子どもの教育は特に重要であります。
 島根のめざす教育は「しまね教育ビジョン21」 に示しておりますように、豊富なふるさと素材や地域の教育力の活用、少人数による個々に応じたきめ細かな指導という特色を生かし、生きる喜び、学ぶ楽しさを通して、一人一人の可能性を開花させ、社会の一員として自立して生きていくことができる知徳体の調和のとれた子どもを、学校・家庭・地域社会が連携して育むことであります。
 その具体的施策の一つとして本年度から全小中学校で開始した「ふるさと教育推進事業」 では、学校・家庭・地域社会が一体となった各地域独自の取組が行われ、心の教育として成果を上げつつありま。
 この事業を含め本県の教育理念を具現化するために必要な事業については、厳しい財政状況下にあっても重点的に予算措置を講じてきたところであり、引き続き選択と集中に努めながら、人口減少等の社会情勢の変化やその時々の教育課題に的確に対応する施策については、積極的に推進していく考えであります。
今後とも、本県の豊富な教育資源や価値ある素材を十分に生かし、子どもの教育を地域全体で支える気運の醸成と仕組みづくりを市町村と連携して推進するなど教育環境の充実を図りつつ、県民一体とな
て島根の教育を推進してまいりたいと考えております。
中村教育委員長答弁
 シンガポールは、私も何度も訪れましたが、笑顔の明るい多民族で形成された国家です。
島根県で例えれば、出雲市と斐川町を併せた面積とほぼ同じ、620平万キロメートル300万人の人口を有します。
 高層ビルがガーデンの中に林立する、ガーデンシティと呼ばれ、向学心の高い美しい国です。
しかし、そのシンガポールにどうしても手に入れることのできないものが、日本の桜、紅葉そして雪の美しさです。
 さて、人口減少下でのわが県教育の目指すべき姿ということでありますが、議員のおっしゃるとおり、日本全体が少子化問題を抱え、その影響は本県においても切実なものがございます。
 このような状況において大切なことは、島根の子どもたちが、いかにふるさとを愛し、ふるさとへの想いを深め、その発展を担ってくれるかということが重要になってくると思われます。
 私は、将来島根の子どもたちは、幅広い視野、旺盛な探求心、優しさと力強さを併せ持った、創造性あふれる人材に育つと信じていますし、学校教職員にも、自らが人材づくりの最大のキーパーソンとしての熱意と自覚を持って、子どもを育てる必要性があると考えております。
 そのためには、学校はもとより、家庭や地域社会が一体となって子どもたちを見守っていくことが必要であり、本県の豊かな自然や伝統文化、歴史的遺産、地域に根付いた産業などを教材とした「ふるさと教育推進事業」を始めとする諸施策を実施していくことで、その実現に努めてまいります。
 現在、厳しい財政状況にあり、目指すべき姿に向かって限られた予算を効率的に使うことはもちろんのことでありますが、家庭や地域社会の協力も得ながら、効果的な教育施策を実施していくことも必要であると考えます。
 教育問題の最後に、学校の耐震化についてお尋ね致します。
 学校の耐震化は長年の課題ですが、特に義務教育学校において遅々として進まぬ実態があります。
 文部科学省、国土交通省では、学校を含めた公共施設の耐震化を今後10年で終わらせる計画と聞きます。また、学校の耐震診断は、国土交通省の協力も得て来年度中に行う計画と聞いていますが、現下の厳しい財政状況の中であり、果たして県下の市町村の対応が可能か心配しています。
 現在までの義務教育学校と県立学校の耐震診断と耐震化率の状況、そして、来年度の取組方針についてお尋ね致します。
 まず、耐震診断実施率は、昨年四月一日現在で、公立小中学校が18.2%、県立学校が61.9%であり、耐震化率は、公立小中学校が49.7%、県立学校が62.0%であります。<BR>
 また、来年度の取り組み方針としては、市町村の財政状況が厳しい中でありますが、学校については、地震発生時の児童生徒の安全確保だけでなく、地域住民の応急避難場所の役割も担うことから耐震化を進めることが必要であると考えております。<BR>
このため、既存の建築物の耐震改修を緊急に促進する趣旨で、本年一月に改正施行された「建築物の耐震改修の促進に関する法律」 に基づき、速やかな耐震診断の実施など学校施設の耐震化が図られるよう、市町村へ働きかけてまいります。<BR>
 さらに、文部科学省で来年度から新たに設けられる「安全・安心な学校づくり交付金」を活用して、耐震化が図られるよう、今後とも市町村に対して、技術面や手続き面などの指導助言を積極的に行っていく考えであります。<BR>
 県立学校については、平成十四年度から今年度まで、三十一校で補強工事等を行ってきましたが、来年度から新たに四校で耐震診断を行った上で、必要な補強工事等を行うことにしております。<BR>
 なお、昭和四十六年以前に建築された、いわゆる老朽校舎については、計画的に改築を進めて行く考えであります。
 質問の第3は、ニート・フリーターへの対応についてであります。
 県内のニート・フリーターと呼ばれる人たちは、ある推計によるとそれぞれ、2000人、8000人とのことだそうです。一方では、知事が所信表明でも述べられたように、07年問題に伴う人材枯渇への懸念があります。
 今後、貴重な人材となりうるニート・フリーターでありますが、受け入れる企業にとっては、キャリア教育が必須の条件であろうと思います。今後のキャリア教育についての考え方をお尋ねいたします。そして、こうした皆さんでどの程度の人材育成が可能となるとお考えかお尋ねいたします。
 また、将来の島根の発展を考えた時、教育問題で触れたような企業人としての資質を備えた人づくり、ニートや自主的フリーターを出さない取り組みが不可欠だと思います。現場の事象に日々接する立場のトップとして、その原因と抜本的解決策をどのように考えていらっしゃるのか、商工労働部長にお尋ねいたします。
 まず、ニート・フリーターへのキャリア教育と人材育成の可能性についてでありますが、企業は職業人として必要な能力や資質として、「責任感や熱意、コミュニケーション能力、基礎的なビジネスマナー」などを挙げております。こうしたことに加え、フリーターと呼ばれる若者は、働くことへの意欲や関心が薄いという一面があることから、就業に対する意識や意欲を高めることにより、安定した就職につなげていく必要があると考えております。
 このため、「ジョブカフェしまね」において、コミュニケーション能力やマナーを身につけるための「就業支援セミナー」を行うことに加え、就職に関する不安や職業に関する相談、適職アドバイスをする「キャリアカウンセリング」など意識や意欲に対する働きかけを行っているところであります。
 こうした取り組みを通して、これまでに、485人が就職しており、そのうちフリーターを含む既卒者が約半数と、一定の成果があったものと認識しております。今後ともこうした取り組みを進め、一人でも多くのフリーターが就職できるよう努めてまいります。
 一方、働いておらず、教育も訓練も受けていない、いわゆるニートと呼ばれる若者に必要なことは、まず、働くことへの自信の付与と意欲の喚起であると考えております。
 このため、高等技術校において、今年度の新規事業として、座学と現場における実習型訓練を組み合わせ、訓練受講意欲を喚起しながら、実践的な職業能力を身につけるための「若年者デュアル訓練」を三コース設定いたしました。
 しかしながら、新聞や実際にニートを支援しておられるNPOなどを通じて募集したにもかかわらず、延べ三十人の定員に対し、十名程度しか応募がなく、実際に訓練を実施することができたのは、現在実施中の「ショップアシスタント科」の一コースのみとなっております。
 また、国が、今年度から全国二十箇所に、ニートを就労へ導くことを目的として設置した「若者自立塾」も、入所者は定員の半分程度にとどまっており、こうした若者に事業の情報を伝え、その上で参加していただくことは、極めて困難なことであると実感しているところであります。
 次に、ニートやフリーターを出さない原因と抜本的解決策についてお答えいたします。
 若者がニートになったり、自らフリーターの道を選ぶ理由としては、若者自身の就業意識の変化や、就職活動における挫折、就職後の自信喪失など様々なことが考えられます。さらにニートについては、ひきこもりなどにより社会とのつながりを失っていることも指摘されております。こうした若者を安定した就職につなげていくためには、幼少時から、家庭、学校、職場、地域において、職業観を形成するとともに、自立力を高めていくような取り組みが何より大切であります。
 このため、県といたしましては、来年度新たに、庁内関係各課からなる検討会を組織し、対応策を幅広く検討してまいりたいと考えております。
 質問の最後は、乳幼児医療費の自己負担軽減に伴う県の対応についてであります。
 少し先の話ですが、乳幼児医療費の自己負担の軽減措置が現在の3歳未満から6歳未満に拡充されることになっています。
 わが県の乳幼児医療費の公費負担は、平成14年10月、3歳未満児の乳幼児医療費の自己負担軽減措置が導入された際に拡充され、福祉医療の見直しに合わせて昨年10月より再拡充されました。
 今後行われる予定の乳幼児医療費自己負担の軽減措置によって、県と市町村で行う乳幼児医療費の公費負担にかかる負担が軽減されることになると思いますが、本県の軽減額はどの程度になりますか。
 少子化対策を県の主要施策に掲げていますが、少子化への歯止めがかからない現状において、この軽減された財源は、少子化対策の拡充に充当する方向で検討されることが求められると思います。基本的な考え方についてお尋ね致します。
 国においては、三歳から小学校就学前までの医療費の自己負担を引き下げる等、健康保険法の改正案が今国会に提案されているところです。
 それによりますと、従来の三割負担が、二割に引き下げられる内容で、平成二十年四月から実施が予定されております。これに伴う本県の乳幼児等医療費助成制度への影響額につきましては、平成十八年度当初予算をベースとして試算してみますと、県の助成額は年間およそ一億円程度の軽減が見込まれます。
 一方で、今回の医療制度改革の影響により、県単独の福祉医療費助成制度など、逆に県負担が増加するものもあります。
 したがって、今後さらにその影響について精査する必要がありますし、また仮に減額されたとしてもその活用については、その時の財政状況や、どのような政策課題があるのかなどを慎重に見極め、判断する必要があります。
 私は、少子化の進行は、県民一人ひとりの生活に深刻な影響を及ぼすとともに、地域の存立をも脅かす極めて重大かつ深刻な問題と考えており、今後もその対策の一層の充実強化が必要と考えています。
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