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滋賀県図書館ツアー

[2010.5/23]
 5/22のブログ「滋賀県図書館ツアー、さわりです」の続きを書こうと思いますが、その前に、ブログに書いたことには、キモ部分もあるし読みやすさも考えて再掲します。

 お邪魔した蒲生図書館にしても愛知川図書館にしてもこの資料費の額は一体どうなっているんだ?というほどの額。
 東近江市、合併して人口11万8千弱。その中に八日市図書館をはじめ7館。全館で蔵書数100万冊弱。年間の資料購入費は6,000万円。島根県立図書館の倍。松江市立は確か1,800万円。開館2年目の蒲生図書館で800万円。住民一人当たりの貸し出し冊数は10冊。
 人口2万人余の愛荘町は平成18年に2町が合併してできた町。ここに愛知川図書館と秦荘図書館の2館。愛知川図書館は開館10年目。図書購入費は1,850万円。新聞雑誌等で506万円。

 予算の多さに当然(@@です。それは、武村元知事以来の伝統と実践の凄さに由来していると思います。詳しいことは、改めてホームページにでもUPしたいと思いますが、いずれも地域づくりの核にしようと、職員の視点ではなく、ユーザーの視点に立って図書館づくりや運営がされていて、行政サイドも議会も予算を付けざるを得ないと思わせる最先端を行く図書館の姿でした。

 もうひとつ、いずれも競って図書館長に本物の人を招聘しているという点が特筆です。

■□ 東近江市立蒲生図書館 ■□■□■□■□
武村知事の功績 まず、滋賀県公共図書館充実の淵源となった武村元知事、二人の館長の言い方が違いました。
 一つは、県民の文化水準が低いことから、全国でも最低レベルの公共図書館を充実して県民の文化水準の向上に取り組もうというもの。知事の出身が八日市だったことから最初の取り組みはそこから始まった。そして、公共図書館充実のために県が独自の補助制度を設けた。それが周辺に広がり、合併した東近江市もそのよき伝統を受け継いでいる。
 ここで凄いと思うのは、市町村立図書館の立ち上げに優秀な館長を招聘していること。裏返せば、30年前、疲弊してしまった公共図書館界に人材がいなかったということなのか?その成功体験が今も生きている。蒲生図書館の巽館長もその一人。

 二つは、最初の知事選挙の際に無投票当選、不要になった選挙予算1億7千万円を公共図書館の図書購入費に充当せよというところから始まった。

 まあ、どっちでもいいのですが、派手な実績に目がいきそうになる中、票になりにくいといわれる図書館をここまでのレベルに導いた武村元知事の功績は大きいと思います。


 さて、合併前に図書館用地として確保されている土地もあったのですが、曲折の中、旧蒲生町の庁舎を活用した図書館設置に落ち着いたとのこと。当初2階にという意見の中1階で通した巽さんの思いが勝ったということ。
 とは言え、新しいとはいえ行政庁舎ですから、天井が低く図書館には不向き。ですから、照明など良く考えられていますし、細かいところに気を配った設計です。閉架庫がほとんどないことなどの難点はあるものの、開館時資料費5,000万円を含め、1億9,000万円余でこの施設ができたということは、市にとっても市民にとってもよかったのではないかと思います。

低いカウンター 蒲生図書館で凄いなあと思ったところ。
 最初に、どこまでもユーザー視点に立っている点。そのひとつが、カウンターの高さです。写真のように子どもさん向けの高さ。職員にとっては腰を曲げる度合いが大きく、負担になると仰っていましたが、どこに視点を置くかで図書館の放つ光が違ってくると思います。高齢者のための椅子、ほんのちょっとの配慮ですが、住民を見ていますね。

 地元の暮らしや子どもたちの育ちを支え、寄り添う図書館とのコンセプト。また、大切なのは人、その人と人をつなげていく役割を果たしたい。また、おもてなしの図書館、心地よいほっこりした居場所、人間が人間らしさを取り戻せる、そんな場所にしたいと。そんな気持ちがカウンターや一番奥に設置されたYAコーナー、そしてこだわり特注の机や椅子にも見えます。
 また、禁帯出の本はない。全部貸し出します。集会室も空いていたら申し込まなくたって使っていただきます。どこかのお役所意識に固まった職員に聞かせたい言葉です。

十進分類法は金科玉条? さてさて、とても気になることがありました。それは、配架方法についてです。
 蒲生図書館の後に行った愛知川もそうでしたが、十進分類法に基づく配架をせず、テーマごとにまとめて配架してあります。
 配架方法、学校図書館問題に取り組みだした頃、全国で魅力ある図書館に作り変えている方を呼んで図書館改造を行ったが、間もなく十進分類法で配架しなおした松江市内の先進的な小学校がありました。
 指導された方は、独自の考え方でテーマごとに配架することで子どもたちの来たくなる学校図書館作りを進めており、理屈は良いのにと思い、多くの図書館関係者と意見交換したことがあります。
 この時には学校が主役でしたから、利用する子どもたちが公共図書館に行った時、戸惑わないためとの説明に、う〜んそうかと支持する気持ちをあきらめたことがあります。

 ところが、巽館長は、十進分類法は閉架に資料を押し込め並べるためと。利用者に使いやすくする、利用しやすくすることが大切だと。あくまでユーザー本位の考え方。
 確かに、学術的なことを調べたりしない一般のユーザーにとっては、大くくりと右の写真のような身近なくくりのほうが更に広い世界へいざなう、次に繋がりやすいなあと思います。大きな文字の本などというコーナーがあったり。これ、ほっこり優しいですよね。
 特定の本を探しに来た方には?と聞くと、PCで場所も表示されるようになっていると。大学や県立図書館はやはり十進分類法?

比べてしまう 愛知川も一緒なんですが、愛知川は更に徹底しており、館長を除く司書7人のうち4人が学芸員有資格者。如何に見せるかに徹底して取り組んでいました。だから、キャプション一つへのこだわりも凄い。

 どっちがいいのか、そう思って、近年できた県内のあるステキな図書館に行ってみました。以前に感じたとおり空間の演出はとてもステキなんですが、主役である本たちが語りかけてこない、硬いなあと感じてしまいました。比べてしまうと歴然なんですね。

地域力の源泉に 地域の力を作っていくのが図書館の役割。だから、行政職員や議員をはじめ、いろいろな人と繋がる。地域の皆さんとの協働は当然(右の写真の小物は地域の皆さんによるもの)だし、財政課や議会に資料提供するのは当たり前。
 議会や財政課から予算圧縮の話しが出ないのかなあと思っていたのですが、これでは出ようがない。実際に自分たちに役立つと認識できるのですから。鳥取県立図書館もそうでした。

 登録者数半分を目指す。今は30%。それは、学校がクラスごと登録してくれたりもするからと。
 それ、ちょっと!と思い、学校図書館活用教育で学ぶ楽しさ、発見する楽しさを教えないと生きる力にはならないし、結果ユーザーの裾野を広げる、地域の力を作る図書館にならないと思う。学校図書館への人配置はどうかと聞きました。
 人では、島根のほうがはるかに進んでいます。でも、資料もないと人が生きない。
 やはり認識は深く、東近江では人配置に数値目標を決めて取り組んでいる。島根も近々に追い越される?負けないよう取り組みたいものです。


■□ 愛荘町立愛知川図書館 ■□■□■□■□
よれよれ館長 昨年来たという愛知川図書館の3代目館長。退職前のポストや天下りポストではなく、ちゃんとした人を東京から招聘する。この西河内館長も荒川図書館からのコンバート。
 誰かが、司馬遼太郎の言葉を引きながら、よれよれの格好でも意に介さない。だから一流の人と巽館長とともに評価していましたが、才津原さんと言いその通りです。

@@!!@@!! 驚きの詰まった愛知川図書館です。
 まずは、建物。どこが入り口か全くわからない。回廊やシロツメクサを敷き詰めた丘を持つ図書館、細かなところまで計算されつくしたステキな不思議空間作りがされていました。

 皆が首が痛くなるほど上を見上げてため息をついたのが、読み語りの部屋。子どもたちは読み手を見下ろしながら話を聞く構造。そして、初代渡部館長のこだわったのが教会のような吹き抜け。音響効果もよく、読み手の肉声がよく子どもたちに届くのだそうです。

 絵本コーナーも広く、よ〜く考えられた機能的な本棚を何回も何回も眺め、チェックしました。へえ、こんな機能的な本棚もあるんだ!です。

 圧巻の一つは、郷土資料コーナー。地域指向型図書館と言うだけはあります。新聞の折り込みチラシまで揃えられています。
 そして、町のこしカード。様々なジャンルを設定し、今あるものや昔のものなど、写真も含めて利用者がカードに記入し、写真などとともにファイルケースに入れる。20年、30年経つと、超お宝になる。情報拠点を地で行く最先端図書館ですね。
 この町のこしカード、Webからも登録閲覧ができます。  http://www.town.aisho.shiga.jp/machinokoshi/
 これも、館長の他、正職員4人、嘱託職員2人、臨時職員1人、その他に緊急雇用対策で3人の職員が配置されているからこそ。

垂涎のレファレンス それは、レファレンスの姿勢にも現れていました。一人の老婦人がファイル棚の前で職員と長い時間話をしていましたが、その後、カウンターに移動して椅子に座り込んで同じ職員から説明を受けていました。これが驚愕の町立図書館の姿です。
 普通だと迷惑なお客様ですよね。時間を取られるわけですから。
 職員のプロ根性にも脱帽ですが、例えば起業家や、起業しようとしている人などにとっては秘書をただで使えるようなもの。議員にとっても政策秘書がただで使える。垂涎ですね。

 そんな贅沢環境を提供する町立図書館を持つ町民、贅沢ですし、文化水準が高まらないはずがない。

 愛知川の居心地のよさは特筆ものだと思います。設計事務所は、公共図書館を多く手がけてきた山手総合計画研究所。それでも、館長が様々な意見を出してそれが取り入れられていると。そうそう、本棚もそうでした。こんな専門性を持っている司書職って、もっとステータスがあがらないといけませんね。

 キャプション、蒲生のところで書いたとおりですが、一番目を引いたのが「人間関係で悩んだら」というコーナー。一見普通かもしれませんが、こんな特集コーナーとネーミング、なかなか思いつかないよなあと。

ことなコーナー えっ?きっとヤングアダルトコーナーだろうなと思ったらやはり。でも、「ことなコーナー」、よく公共図書館にこんな表示で文句が出なかったものだと。自分こそ正しいとうるさく理解のない大人がどこにでもいるものですが。
 それにしても、設置してある場所は絶妙のところ。目立つことなく、それでいて隅っこではない!そして壁一面に張られた映画ポスター。ヤングアダルトの気持ちがわかっているような気がしました。ついでに・・・RAIL WAYSのポスターも貼られていました(^^

黄金率 へえ、図書館にもあるんだ!
 小売にも黄金率があり、売れ筋は3割まで、後の7割は様々な商品を揃えてお客の興味を引くのだそうです。これは商売の鉄則だと。この鉄則は図書館にも当てはまるのだと。一番読まれる文芸文学、4割、5割の図書館が多い。これは放っておいても読む。
 でも、愛知川は3:7にこだわっている。如何に文芸文学以外の、例えば実用的な分野の本を読んでもらうか、それによって、図書館の効用の理解が広がり、利用者が増えていくと。
 愛知川は開館10年、最初は焦るくらい来館者が少なかったが、毎年着実に増え続けていると。最初はたくさん来るが尻すぼみになる図書館が多いとも。
 放っておいても手に取る、読まれる文芸文学のコーナーは一番奥。へ〜〜〜でした。


 最後に、「本が埋まらないように、あふれて見えるように」、本が積極的に語りかけてくる印象です。全部本棚の奥に隠れていると、ひっそりと静まり返り、とてもおとなしく硬い印象です。滋賀の図書館と比べてみようと先日寄った島根の図書館がそうでした。不思議ですね。

認知された図書館  破格の予算を付け続ける町に対して、議会や財政は何も言わないのか?議会は何冊本を買ったか、それだけを聞くと。
 地域指向型図書館が完全に認知されている姿だと思います。図書館に集まってくる皆さんの様子を見ているとそれが伝わってくるようでした。

役割分担 県立図書館と市町村立図書館の役割分担について質問したら、県立図書館は、市町村図書館の支援とレファレンスに特化すればいい。極端に言えば貸し出しをする必要はない。極端ですが、その通りだと思いました。
 市町村立図書館の水準の遅れた島根では、今すぐそういうわけにはいきませんが、そういう形を見据えて努力する必要があるかもしれません。論議してみたいテーマです。


奥出雲町立図書館は? 館長は、都市と地方の情報格差の是正を住民に保障するためには、本屋もないような地域にとっては、それを保障する図書館にこの程度の予算を付けることは当然と仰っていました。
 確かに、その通りです。でも、住民の行政へのニーズは多岐にわたりますし、既得権の強固な枠組みがあり、特に緊急度の低いと思われる文化や芸術、スポーツなど、人の生活の豊かさを支える分野には予算がつきにくい。

 そんな中で、連れて行ってくださった奥出雲町のポケットの皆さんは、地域に日本一の図書館を作りたいと活動していらっしゃいます。
 恐らくどう頑張っても、町財政的にはソフト面で愛知川のような図書館を作る余裕はないだろうと思います。でも、日本一の図書館作りの夢は堅持して欲しい。
 今、地域主権の時代。主権確立には、自己決定、自己責任、自己負担が必要といわれています。
 奥出雲の図書館、夢を実現するためには自己負担の論議まで踏み込んだ論議が不可欠ではないかと思いました。そこまでの論議の末に図書館ができることになれば、地方自治体から地方政府に脱皮していると言えるように思います。頑張って欲しいものです。


■□ 愛知川図書館写真集 ■□■□■□■□



回廊の外に図書館や壜手毬館などが配置され


入り口はどこ?初めてはわかりにくい


呆然と見上げる参加者


機能的な本棚
地域指向型図書館の圧巻、町のこしカードのファイルケースと図書館利用者がツバメの巣をマップに落とし込んだもの


新聞の折り込み広告までファイルしてある


気に入った中山道関連資料


徹底したレファレンスの姿勢、プロ集団を目指す姿勢が見て取れました


こんなところで本が読める!


掘り込みのある和室、そういえば多岐にも
どこにも人がゆったりと、思い思いのスタイルで休日を楽しんでいる。時間があったら図書館に行こうという雰囲気
こだわりのキャプション〜「人間関係で悩んだら」こんなコーナーを作る、時代も踏まえよく考えています
ことなコーナー


本が埋まらないよう、あふれて見える〜本が語りかけてくる、迫ってくる印象ですね


黄金率を意識した配置。分類もわかりやすい表示
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