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上野千鶴子氏の講演会レポート

報告者:島根大学法文学部法経学科3回生 瀧野信一
2012年5月23日
はじめに
 僕は5月20日、社会学者でジェンダー研究の第一人者である上野千鶴子氏の講演会を聞いた。また講演会前の朝食などにも上野氏とご一緒させていただき、貴重なお話をすることができた。今回は、そんな講演会で聞いたこと、学んだことなどを書いてみたい。
上野氏との朝食会
 朝8時から、皆生温泉の旅館で朝食会が開かれ、上野氏、三島氏、柴田氏と共に食事をする機会を戴いた。僕はまさか上野氏ともご一緒させていただけるとは夢にも思っていなかったので、終始緊張気味であった。話は介護の話など専門的な話になり、全くついていけない自身の知識の無さに反省しきりであった。上野氏はさすが社会学者であり、返答も明瞭で凄いなと感じた。そして家族については厳しい見方をされていたのが印象的だった。心の支えについても、信心や思想・宗教などは持っておらず、日々生かされているだけだという返答を聞いて、こんな心の強い方もおられるのだと感心した。
上野千鶴子氏の講演会
 午前10時半から米子市文化ホールに於いて、上野千鶴子氏の講演会『「おひとりさま」のこれから』が開かれた。その話はとても示唆に富んだ新鮮なものだった。
 講演の主人公とでもいえる「おひとりさま」の定義であるが、一人暮らしの高齢者、障碍者、病人、子ども、女性などをさす。この「おひとりさま」は、急速な少子高齢化社会に突入している日本では、今後増えていくことが予想されている。その理由としては、人口が減少傾向にもかかわらず、世帯数は増えて続けているからである。そのため独居世帯が増加している。子どもが成人になると、独立して実家に戻らない傾向があるのも、一つの要因と思われる。また、生涯未婚率が上昇している(男性は40代が4人に1人、30代が3人に1人が生涯結婚しないと予想されている)こともそれに拍車をかけている。今後も増えていくと予想されている「おひとりさま」であるが、女性が貧困、男性が孤立でそれぞれ苦しんでいるなど、社会的には厳しい状況に立たされている。東日本大震災の時には、ケアする人がおらず孤立して問題となった。
 そんな「おひとりさま」が増える中、だれにも看取られず亡くなられる孤独死が全国で頻発し、社会に衝撃を与えている。かつてはあった地域のつながり・コミュニティが希薄化・断絶し、隣近所の付き合いも無くなったのである。そんな社会を「無縁社会」として、嘆くメディアの論評に対して上野氏は、果たして無縁社会は人間砂漠なのかと問いかけ反論する。
 まず東日本大震災後、日本では人々が助けあう姿に感動し、「絆」という言葉がとても流行り、流行語大賞にもなったことは記憶に新しい。因みにそんな中で、絆を深めようと結婚の機運が高まったものの、実際は特に結婚が増えたという事実はないというのが上野氏の指摘だ。そんな日本中で流行した「絆」であるが、「絆」の本来の意味とは、絶とうとしても絶つことのできないしがらみ、のことをさす。この意味は「無縁」の「縁」の意味ともほぼ同義である。絶つに絶つことができないしがらみとは、かつての前近代時代の日本社会に存在した地縁、血縁の強固な結びつきを表すが、この意味は現在語られている「絆」の概念とは意味を異にする。自分も或る大学教授から同じような話を聞いて、今の「絆」の深い意味を理解せず容易に使っている状況に違和感を覚えた。
 そして上野氏は、無縁社会というのは人間砂漠のようなものではないとして、「選択縁」という概念を提示された。「選択縁」は従来の様なしがらみにとらわれることなく、加入・脱退が自由であり、強制力がない脱血縁、脱地縁、脱社縁の人間関係のことを言う。この「選択縁」は男性よりも女性の方が先行していることから、「女縁」とも上野氏は呼んでいる。上野氏によると、特に女性の転勤族の方は「選択縁」が多数あるという。一方の男性は会社という組織に組み込まれていることから、「選択縁」が広がらない要因となっている。「選択縁」は緩やかなつながりで、これが多いほどリスク管理が上手にできるという特徴がある。確かに多くの「選択縁」をもつことで、心に安定が生まれるのは確かだし、様々な場所にアイデンティティを認めることができるというのは良いことだと思う。自分もそんな「選択縁」を少しずつでも増やしていければなと思う。それと同時に、血縁や地縁、社縁を無闇に犠牲にするのではなく、それらに依存しすぎないよう気をつけながら大切していくべきだと思う。
 話は介護に移り、「生涯現役」という言葉を話題にされた上野氏。「生涯現役」という言葉は、何かと皆の理想である歳の老い方のように巷で言われているものの、上野氏は「単に自分の老いた姿を見たくないだけのこと」と退け、この言葉により人の老い方まで勝ち組・負け組と規定されると指摘されて、自分も共感を覚えた。巷で何気なく使われている言葉も、よくよく考えてみたら面白かったりするのだ。
 次に上野氏は、誰もが安心して社会的弱者になれる社会をつくろうと呼びかけられる。この言葉の裏には、社会の厳しい視線により厳しい状況に置かれている社会的弱者が多くいるということが示されているのだと思う。
 そして終末期医療などで、自宅療養を希望している患者が多いにもかかわらず、病院死が多い現状の原因は、家族であると上野氏は指摘する。上野氏によると、家族が関わることになると、病院や老人ホームに入所させるケースが多いという。家族の意思が尊重されて、本人に代わって意思決定することが認められていることも拍車をかけている。また、本人がためたお金を家族は、本人のために使われずむしろ自分達の貯金にする傾向が強いのだという。自宅療養を希望する本人を差し置いて施設に預けてしまい、本人のお金は本人に使わない―――こんな現状から上野氏は家族を、自宅療養するうえでの「抵抗勢力」とされた。
 そんな家族に干渉されずに自宅療養することは果たして可能なのであろうか。そこで上野氏が提唱されているのは、「トータル・ライフ・マネージメント」だ。これは当事者をケアマネージャーやヘルパー、医師、トータル・ヘルス・プランナーなどが支えて、医師などが定期的に家庭訪問する仕組みだ。定期的に家に来てくれるので、本人も安心であるし自宅療養を思い通りにすることができる。ただ、これを実践しようとするなら、地域のつながりや機関ごとの連携などが必要になるだろう。本格的にこの方式が普及していくように、願ってやまない。
 上野氏の講演は書ききれないのでここで割愛させていただく。講演会終了後、なごみの里で看取り士をされている柴田氏にお話を伺った。マクドナルド時代の苦悩や、知夫村での夜這い事件など色々と苦労されている柴田氏のお話には感銘を受けた。そして、今では先進的な介護を目指して奔走されている姿は素晴らしいと思った。両氏にはまた可能であればお話をさせていただきたいと思った。
終わりに
 上野氏の講演会のレポートを書いてきたが、殴り書きをしたので、話題が次々と飛んでしまうなど文脈がおかしくなってしまったのは反省点である。もっと推敲を重ねるべきであった。
 しかし、今回の講演会を通して「おひとりさま」のことを考えるきっかけを与えてもらい、自分にとっては大きな刺激になり、少なからず既存の価値観や考え方に大きな影響を受けたと思う。多角的な視点で考えることの重要性を認識することができた。
 このような貴重な経験をさせていただけるようになったのも、三島議員のおかげである。この場をお借りしてお礼をさせていただきたい。そしてこの体験を、今後の自分の人生に活かせるように頑張っていきたい。
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