五代 井上九郎右衛門允克


 正順には嗣子がなかったので門弟中の傑物、落合平右衛門の二男允克を養子に
した。即ち井上九郎右衛門允克と名乗って正順隠居後の師役を仰せつかり、二十年
間勤務して寛政十年二月十七日松江に病歿した。允克は元来無言の教訓者であっ
て弟子達の業を見て直すということは一切しなかった。門弟がわざをお願すると「熱
心に努力さえすれば能くその目的を達することができる。しかしそれだけではいけな
い。頭を使うことも必要である」というだけで極めて諷刺的に指導されたということで
ある。

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