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鶴岡市立朝暘第一小学校では

フィンランドと同じ

 朝暘第一小学校の取材を続けていたテレビ山形が、フィンランド教育の取材に行ったと。
 そのディレクターが帰ってきてから言った言葉をお聞きしました。「朝暘第一小学校の取り組みは、フィンランドと一緒だった」と。
 34人学級(だったと思う)を実施している山形県。朝暘一小は一学年4クラスですから、結構大きな規模の学校です。20人以下の少人数授業に取り組むフィンランドですから、こういう取り組みではなく、学校図書館活用を中心にした教育形態のことであろうと思います。
 世界から注目されているフィンランドと同質な教育を行う、私の目から見た朝暘一小の取り組みのほんの一端をご紹介致します。

鳥海山

この日の鶴岡市、素晴らしい秋晴れでした

広い校長室


 築48年、来年から新校舎建設が始まるとのことでしたが、昔タイプでかどうか、随分広い校長室。
 しかし、この校長室が満員に。それもそのはず。私の他に、品川区議会の文教委員会の議員及び随行3名、大東文化大学の学生2名、何処かの市町教委の教育長、教育委員長数名、併せて20名の受け入れ。
 この校長室で一番目を引いたのが、朝暘第一小学校出身の絵本作家、土田義晴さんの写真や色紙、子ども達と一緒に作った絵皿などなど、主賓の面持ちで飾られていました。
 写真を写した時には気づきませんでしたが、その脇に割りとひっそり、学校図書館大賞のトロフィーが飾られていました。写真の左隅に写っています。

至道図書館

読書支援サークル「本のたからばこ」の方のイラスト

朝から子どもたちで満員


 開門と同時に、という言葉通り、7:45になったとたんに子どもたちが次から次と図書館に駆け込んできます。 いろいろな学校図書館を訪問していますが、こんな様子は初めて。視察に訪れた20人は、居場所がなくて隅のほうに張り付いていました。
 学校のHPでは、150人と書いてありますが、200人、いやそれ以上かもしれません。

7:55、机の上に本入れを置き、返却に、目当ての本を探しに

工夫がいっぱい

 この図書館、工夫に満ち溢れています。
 今春まで学校司書をされ、現在、市教委の臨時として学校図書館支援員をされている五十嵐絹子氏は、学校図書館は、マンパワーが必要ですと話していらっしゃいましたが、その努力の跡に驚嘆でした。
 それと、大切なことがありました。ここ、朝暘一小致道図書館は、鍵をかけない図書館です。

おすすめの本

 図書館に入る前、まず目に飛び込んできたのがこのボード。
 多忙な先生に、これを書いていただく工夫がありました(笑)
 図書委員の生徒が、締め切りを決めて先生方に依頼するんですね。これなら先生もずるできません。
 もう一つ、おっと!と思ったのは、おすすめの紙の最後に、図書委員からの感想やおすすめの言葉も書き添えてあること。芸が細かい。
 子ども達も、同じ子ども目線からだと反応が違うようです。

卒業生のおすすめの本

 更に、凄いなあと思ったのは、このボードに張られたおすすめの本はファイルされ、いつでも手にとって読めるようになっていること。全部利用し尽くす、その執念のようなものを感じます。
 更に更に、卒業生のおすすめの本、これが凄い!
 五十嵐さんのお話では、5年生の時からお勧めの本はこれだと決めている子まであり、常に意識しながら読書をしているとのこと。
 その思い入れの深さが、1ページ1ページにこもっており、暖かい心のあふれる、素晴らしい資料です。ですから、子ども達にこの資料は大人気だとか。
 このファイルも、既に書架二段分が満杯。

学習支援用の資料

 蔵書は12,300冊、小学校としては結構多い蔵書。年間図書費81万円。これにはちょっと秘密があるとのことでしたが、詳しくは聞いていません。併せて、市立図書館から各クラスに年間50冊の団体貸し出し。これは、図書資料ボランティアの仕事。それに授業に併せて、様々な手法で学習支援図書を準備。
 ここまでは普通ですが、インフォメーションファイル、この量とジャンルは凄い。写真はその1/3程度か。学校司書、司書教諭が中心ですが、併せて図書資料ボランティアの皆さんが新聞の切抜きなどの支援を行い、調べ学習等に頻繁に活用されていると。
 もう一つ、学習に役立つ本のファイル。科目ごと、テーマごとに本の題名がまとめられています。これなら、図書館を使っての調べ学習で、参考となる本を探して1時限が終わる!なんてことはありません。

認定証

 ブログに紹介したゴールドカードや金シールもありますが、この認定証も子どもたちのやる気を引き出すツールです。
 この認定証は、学校の選んだ必読書(例えば3,4年生であれば60冊)を、全部読んだ子を顕彰するものです。

バルコニー

 そよそよと頬をなでる風と、暖かな陽光の中で、爽やかな空気を吸いながら本を読む。
 まさに贅沢、と言える時間ですが、そんな空間も子ども達に提供されています。決して立派な構造ではありませんが、暖かさが伝わる、工夫された空間です。

 もう一つ、窓にかかるフリルのついたレースカーテンは、古い図書館を素敵に演出していました。

アナログでもシステマチック

 子どもたちの様子を見ていると、貸し出しカードと返却カードを持っています。
 貸し出しカードは、常にカウンターに常備。返却カードは栞のように本に挿むのでしょうか。
 借りる時には、カウンターの篭から自分の貸し出しカードを探し出し、自分でカードに本の名前と、貸出日と返却日を書き、返却カードとともにカウンターに。図書委員は、両方のカードをチェックして貸し出しカードを預る。
 返却は、子どもが本を書棚の所定の場所に返し、返却カードを持ってカウンターに。カウンターでは本の確認は一切なし。全て信頼関係の上に成り立っています。
 カウンターでは、図書委員がそのカードに検印し、何十冊かごとにゴールドシールを貼ります。
 この作業がとても早い。一人1秒程度?ITの時代に敢えて(?)アナログ。温かみがあっていいですね。

 ITとアナログ、後でこのことにも触れたいと思います。

これはのみのぴこ

 この日は、1年生への読み聞かせの日。今日は2クラスで読み聞かせグループ「本のたからばこ」の新人デビュー。緊張しては可哀想と、我々はベテラン組みのクラスに。
 圧巻は、ブログにも書いた谷川俊太郎(知り合いに宮川俊太郎さんという方がいらっしゃって、思わず間違えていました)作「のみのぴこ」。さすが言葉の達人。子ども達が揃って読んでいます。その楽しそうな様子と言ったら、今にも飛び跳ねそうな様子です。
 もう一冊、かぼちゃの種を扱った本でしたが、子ども達から合いの手や感嘆、疑問、様々な言葉が飛び交います。かぼちゃの種になりきっているんでしょうね。

一人平均149.5冊

 10年前の84冊から右肩上がりで上昇を続ける平均貸し出し冊数、軽く、もっと多い学校もありますと仰ったのは五十嵐さん。それは、子どもたちの読む本の内容にも自信ありということでしょうか。
 この図書館には漫画の本がありません。様々な質ということもありますが、ともかく、図書館へ誘うために漫画を置く学校図書館がほとんどです。
 しかし、五十嵐さんは、漫画を読む子はそんな傾向の本しか読みませんとキッパリ。
 そして今、一人一人の読書の質の向上に取り組みはじめ、貸出冊数が下がるだろうと思ったのに、逆に上がりましたと校長。
 今までのたゆまぬ努力が、この結果に繋がっているのだろうと思います。その努力の一端を紹介します。

読書の習慣化

 1年生の入学式は、校長の話もそこそこに、高学年児童からの読み聞かせを行うとのこと。入学式が終わり、各クラスに入ると親御さんも一緒に担任からの読み聞かせ。
 そして、毎日のように図書館につれて行って本を借りさせるのだとか。読書が生活の一部になるよう、徹底した取り組みが行われていました。

ラブレター

 本が苦手な子にも様々なサポート。担任を通してのミニ手紙や、休み時間には教室までお出迎え等々。ラブレターやラブコールは予想以上に効果的だとか。
 圧巻は、全校生徒625人の読書傾向調書を学校司書が作り、一人一人に合った読書指導を担任と連携しながら行っているとのこと。しかもアナログで。
 その結果、10年前には児童の半数近くいた不読傾向の子どもが10人代に。その不読傾向の基準もこの学校独自で、年間数十冊!!。

図書館活用授業

 全教師が、図書館を活用した授業に取り組み始めたのは、現校長になってから。全学年、全クラスが週1回は必ず図書館を活用した授業に、意識的に取り組んでいます。
 しかし、ここには、学校司書と司書教諭のなみなみならぬ努力の跡が。
 図書館活用授業というノウハウを持たない(大学の授業にもこのようなカリキュラムはないとのこと)教師に、図書館を使った授業は楽だと認識してもらうため、授業サポートの準備にも大変なエネルギーを注いできた五十嵐さん、土日も、そして、夜遅くまでの仕事も当たり前だったと。
 今もですかと聞くと、今はそんなことはないですよと。それは、資料の充実を見ても頷けます。

 もうひとつ重要な要素。それは、司書教諭の加配措置。昨年度からの加配、今までだと、他の教員の授業やり繰りの中で司書教諭の仕事もできたのが、図書館活用授業は殆んどこの司書教諭と組んでTTで授業が進むわけですから。

図書館クイズ

 情報リテラシーを育てるため、図書館機能をしっかり学ぶ。そんな意図があるのだと思いますが、この日のもう一つの授業参観は、図書館クイズに取り組む4年生の授業。
 実は、次の五十嵐さんとの懇談の時間が気になり、余り熱心に見ておりません(^.^;;
 写真で見返すと、子どもたちの表情、真剣そのものです。一冊の本になっているくらいですから、ここの図書館クイズ、相当な質がありそうです。
「図書館活用教育」が学校経営の中核 

 朝暘第一小の前には市教委の課長をされていた現校長、受賞後に配属。それまで見ていた朝暘一小の取り組みを更に進めようと、「図書館活用教育」を学校経営の中核に。
 その後押しをしたエピソードが。
 体育館の演壇に立ち、話を始めようとしたとき、子どもたちの目が一斉に校長に集まった!と。
 読書教育の大きな成果ですね。

学校図書館支援員 五十嵐絹子さん

 後ろ髪惹かれるような思いを残し、学校を後に市立図書館へ。ここで館長、そして、3月まで朝暘一小の学校司書だった五十嵐さんから、私の問いに五十嵐さんが答えるという形で話を聞きました。
 ほぼ2時間、あっという間の時間でしたし、珠玉のお話の数々でした。

アナログとIT

 気になっていたアナログとIT、校長にも聞き、新しい校舎になると情報化の予定との話だったものの、ないないづくしから、今のシステマチックな体制を築かれた五十嵐さんにぜひと思い聞きました。
 バーコードになったら、朝の子ども達の列は時間内にはけないだろうとの予測。
 アナログなればこそ、図書委員の活躍の場も沢山。だって、毎日の統計は、全部子どもたちの仕事だとのことですから。

 学校図書館はマンパワーが必要と。人に支えられてはじめて、暖かな居心地のいい空間も維持できるのでは、との思いを強く持った朝暘一小。情報化するにもどこまでやるのか、良く検討したほうがいいだろうと思いました。

学校司書

 五十嵐さんは市職員でした。気になって身分のことを訪ねました。旧鶴岡市、中学校6校、小学校21校。12学級以上の学校には市職員、又は臨時職員、12学級以下には、一日4時間のパートの学校司書(若しくは補助員)が配置されているとのこと。
 五十嵐さんも元はPTAが独自に雇ったパートさん。学校図書館法施行の追い風の中で、PTAも厳しい財布の中から雇用。
 昭和30年代後半、処遇改善の声に、市職が支援し市の予算措置。そして採用試験を経て正職員になったとのこと。
 経緯はどうあれ、何らかの形で専任(一部給食職員との兼務なども)の学校司書が置かれている事実は、大変なことであります。
 島根でも、せめてパートでもいい、司書の資格がなくても手伝いでもいい、マンパワーを学校図書館に配置したいものです。マンパワーがなければ、動き出せない現実があるわけですから。

読書と教育力

 ブログでも触れましたが、一昨日、報道された全国一斉学力調査の結果は、大変センセーショナルなものでした。小6の算数、平行四辺形の面積を求める応用問題の正答率が18%というもので、今の日本の教育の一番の問題点を改めてクローズアップさせるものでした。
 東京学芸大学教授で図書館情報学が専門の高鷲忠美氏は、朝暘一小の取り組みにとても注目され、フィールドワークを重ねていらっしゃいますが、ブログに下記のように書かれています。

 学校生活が「楽しい」と応えている子どもは、90%を超えていますし、授業が「理解できる」と応えているこどもも80%を超えているのです。授業が理解でき、学校が楽しければ、不登校になりようがなく(人間関係と言うこともありますが)、現在朝暘第一小学校には不登校の子どもはいません。
 また、全国で実施されている標準テストでも、全国平均を国語、算数とも10ポイント上回っています。(もちろん、結果としてです。ねらったわけではありません。)

 
 私も大変興味ある点で、特に生きる力のベースとなる活用力という点で、朝暘一小の結果は如何でしたかと尋ねましたが、パスワードが同封されていなくてまだ見ていませんとの回答でした。
 
 私もしつこく、五十嵐さんに同趣旨の質問をしたところ、成績の話はされませんでしたが、読書力が高いと教育力が高いと断言されました。経験則からの話であり、非常に説得力がありました。

五十嵐語録
  • マンパワーにつけて、人の教育だから人の手で
  • 日本語で考えるのだから、日本語をいっぱい入れる、体の中に染み込ませることが大切
  • 豊かな子ども、この中身の一つはことば
  • その子のできることを探す
  • 本を読まない子は、人のことを考えないし衝動的
  • 教員養成のカリキュラムから変えないと変わらない。教わっていないから、図書館活用教育ができない
  • 本を読んでから学習に取りかかると理解力は2倍になる(鈴木健二氏「今、読書が日本人を救う」より)〜この読書効果は、川島隆太の脳科学で解明済み

致道館教育

 庄内藩の藩校、「致道館」、ここに開校したのが朝暘一小。100年前です。現在の場所は、少し離れたところですが。
 この「致道館」には、フィンランド教育にも通じる伝統が。
 その一つは、小学校から大学院まで存在したこの藩校であるが、中央の校舎で教授陣が教えるのは中学生。左側の校舎では自学自習の高校生が小学生に教え、左奥の校舎は全て個室で、大学生、大学院生が自学自習したと。
 そして、小学生の校舎は、句読所と呼ばれ、徹底的に読む、書くを訓練したと。それにしても、小学生で写真のような漢文!
 更に、徹底した個を重視した教育。適材適所。

情報
  1. 朝暘一小の「図書館活用教育」のエキスが詰まった資料集、部数限定で手元に届く予定です。欲しい方は連絡を。1部200円。
  2. 五十嵐絹子氏編著による、仮題「本好きの子どもを育てる」が国土社より来年刊行予定。体験に基いた凄い話、満載のようです。
  3. 11/4、山形放送で朝暘一小、フィンランド、韓国を取材した1時間番組、放映予定
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